FF6二次創作SS【鎮魂のアリア】その5

ピクシブ投稿分でいえば中盤の真ん中辺りまでようやく差し掛かりました。ここからの展開をどうしようか激しく悩みました。/前:http://togetter.com/li/725068/次:/第一回:http://togetter.com/li/707429
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みなみ @minarudhia

ランプの明かりに小さな羽虫が飛び付く。 ぱたぱたとかすかな音が二人の耳に届き、ひどく静かな夜に思えた。 しかし、ロックが不意に顔を上げた。 「どうした?」 「しっ」

2014-10-05 22:59:17
みなみ @minarudhia

ロックが音を立てずに立ち上がり、暗闇の向こうを見据える。 二人が今居る場所は玄関を歩いてすぐ右の階段の上のフロアであり、それ以外の部屋は左側の階段を上った先にある。 ベッドが置いてあるが、その傍に無理矢理小さなテーブルを置いて二人はカードに興じていたのだ。

2014-10-05 23:02:01
みなみ @minarudhia

その向こう側…左の階段のある向こうへ、すうっと消えていく人影をロックは見逃さなかった。 「今誰か入っていったぞ」 「何!?」 「しっ…後をつけるぞ」

2014-10-05 23:04:49
みなみ @minarudhia

二人が気づかれないよう後を尾けていく。 闇に溶け込んでいるためわからなかったが、相手は真っ黒なフードとローブに身を包んでいるようだった。 その格好と背の高さに、ロックとセッツァーは無言のまま互いに目配せを交わす。 謎の人物はどうやら他の者達が休んでいる部屋へと向かうようだった。

2014-10-05 23:07:29
みなみ @minarudhia

そして… (…おい) (ああ) 二人は人物が消えていく先の部屋を見て小声で話を交わした。 その部屋は。 (……一体何をする気なんだ?) (わからんが、何かおかしな事をする前に踏み込んだ方がいいな)

2014-10-05 23:10:36
みなみ @minarudhia

二人はドアの両脇に身を寄せ、各々にダガーとカードを手にする。 ほんの一分してすぐ、二人はドアを蹴破る勢いで部屋に踏み入った。 「おい、一体何してる!?」

2014-10-05 23:11:17
みなみ @minarudhia

二人が構える先にいたのは、熟睡中のマッシュと、その傍らに立ち覆いかぶさっているように見える黒いフードとローブの人物だった。 二人に気づくや謎の人物が顔をあげる。 相も変わらず顔は見えないが、即座にセッツァーが投げたカードがその脇をかすめ壁に刺さった。

2014-10-05 23:15:00
みなみ @minarudhia

そのフードの奥で青白く輝く双眸が、赤に染まる。 その双眸に見据えられた瞬間、ロックとセッツァーはその場で縛りつけられたように動けなくなった。 (なっ…) (くそ、身体が……!)

2014-10-05 23:18:00
みなみ @minarudhia

動けない二人をしばし見据え、そしてベッドの上のマッシュにちらりと視線を送る謎の人物。 マッシュはといえばまだ夢の中らしく、寝息を立てながら異変に気付かないままだ。 ようやく謎の人物が彼から目を離してもロックとセッツァーは未だ動けない。

2014-10-05 23:20:49
みなみ @minarudhia

その間をすり抜けるように、謎の人物はドアへと歩いて行った。 「お…い、待て…よっ…!」 ロックがかろうじて声を絞りあげるように出した時には遅く、ドアは閉まった。 それと同時に二人の身体は不可視の拘束から解かれた。

2014-10-05 23:24:26
みなみ @minarudhia

「くそっ」 「おい、マッシュ!」 「んが……ぁ?」 ロックがすぐドアの向こうへ消え、セッツァーがマッシュを揺さぶり起こす。 目をこすりながらマッシュが起き上がると、寝ぼけまなこでセッツァーの方を向いた。

2014-10-05 23:27:08
みなみ @minarudhia

「なんだよセッツァー、こんな時間に…」 「こんなも何もあるか。お前今何かされたぞ」 「何が?」 上体を起こし、目をこすった手に何かを感じてマッシュが慌てて手を顔から離した。 「どうした?」 「…なんか、濡れてる」 「濡れてる?」

2014-10-05 23:30:14
みなみ @minarudhia

よく見れば、マッシュの頬…謎の人物が立っていた側の顔半分に濡れた跡が見られる。 まもなく、ロックが戻って来た。 「ダメだ、見失った。…あれはどう見ても人間ってモノじゃないぞ」 「おい、俺にはよくわからん、誰か説明してくれよ」 そう尋ねるマッシュ。

2014-10-05 23:32:41
みなみ @minarudhia

よくベッドを見れば、顔の濡れた側と同じ方向の枕元に、雫をはらはら落としたように濡れた形跡があった。 その後…歌声はまた、午前4時にジドールの街で響き渡った。

2014-10-05 23:33:21
みなみ @minarudhia

「……その人物って、もしや」 「ああ、リルムとティナが見た人物と同じだと思う。話に聞いた特徴と一致してる、まず間違いないな」 翌朝、朝食の席で事情を話すと皆一様に怪訝な顔になった。

2014-10-05 23:35:55
みなみ @minarudhia

「トンボの手紙には人物の事に関して何も書いてなかったし…今回の事件と関わりはあるのかしら?」 セリスは言いながら便箋に目を移す。 マッシュはといえば気難しそうな表情で紅茶を啜っていた。

2014-10-05 23:38:36
みなみ @minarudhia

「……その人物が俺に覆いかぶさってたって、俺何されたんだろう…」 「ともかくマッシュ。本当にお前、何も覚えないのか?」 セッツァーが不審そうにちらりと目線を送った。

2014-10-05 23:41:32
みなみ @minarudhia

「いや、本当に覚えないんだってば」 「嘘つけ!もしくはお前が覚えてなくて向こうが覚えてる可能性があるんだぞ」 「向こうって…」 「女だよ、女」 セッツァーはマッシュの傍まで詰めよって来た。 呑気に紅茶飲んでる場合かと、彼の手からティーカップを奪い取る。

2014-10-05 23:44:37
みなみ @minarudhia

「やっぱりお前、何か隠してるな?」 「だから何だって言うんだよ?」 「女ってのは蛇みたいなもんだぞマッシュ。お前今まで修行ばかりかまけてるようだから、女の事なんぞ1ミリもわからないようだから言っておくが」

2014-10-05 23:47:31
みなみ @minarudhia

セッツァーがああだこうだとマッシュに小言を言っている。 それを尻目にロックは、リルムの方を向き直って聞いた。 「リルム、昨日お前が言ってた変な人物って、黒いフードとマントで全身隠してるって言ったよな」 「うん、そうだよ」

2014-10-05 23:50:41
みなみ @minarudhia

「もしかしたら、夕べマッシュに何かした奴と同一人物かもな」 「え」 リルムがマッシュの方をちらりと横目見る。 ロックもマッシュの方をもう一度盗み見てから言った。

2014-10-05 23:53:17
みなみ @minarudhia

「とにかく、絶対マッシュに何かあるはずなんだ。でなきゃ何だと思う?」 「うーん……でもさ、あのキンニク男が女と関わり持つと思えないんだよね」 リルムは木イチゴのジュースを一口飲みながら続けた。

2014-10-05 23:55:56
みなみ @minarudhia

「だってさ、あの色男だったらわかるけど、キンニク男が女の人に声かけてるとこ見たことないよ」 「まあな…」 ロックは腕組みしながら考え込んだ。

2014-10-05 23:56:05
みなみ @minarudhia

元々マッシュは女性に対して兄よりも一歩引いた所のある男だ。 普段にしても同性と絡んでいる方が多いから、時折“そちら”の性癖でもあるのかと疑われているくらいだ。

2014-10-05 23:59:13
みなみ @minarudhia

「…様子見た方がいいかもしれない。トンボともし会うことがあれば、彼女にお前が言ってた奴の事について聞いてみるか」 「うん」 「ひとまず、これからゾゾに行く」

2014-10-06 00:02:20