GOD EATERのSS嘘予告

限りなく自分用
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灰鉄蝸(かいてっか) @Kaigoat

手を、天の輝きへ伸ばした。その煌きにすがりたかった。指に、皮膚に、絡みつく体液。突き破った眼球に詰まった房水のしずくが、真っ赤な血と混ざって地面へ垂れる。少年の父母は、もういない。 #GE_SS

2013-10-22 21:48:30
灰鉄蝸(かいてっか) @Kaigoat

祭りの山車が、四本足で歩いてきた。そう思えば随分、愉快な光景であった。全身に兵器と装甲を満載した、大きな死の塊。テスカポリトカ――古い神話から抜け出てきたような、異形の魔獣であった。両親と呼ぶには、あまりに無残な肉を食いちぎるもの。 #GE_SS

2013-10-22 21:55:27
灰鉄蝸(かいてっか) @Kaigoat

少年は生き延びようとした。母がこの世のものとは思えぬ唸り声を上げ、腸管をぶらさげた肉のバッグに代わるまでの五分間、息も気配も涙も殺して。愛妻の断末魔に取り乱し、自身が食われるまでの間、ただただ泣き叫んだ父を隠れ者にした。 #GE_SS

2013-10-22 21:58:31
灰鉄蝸(かいてっか) @Kaigoat

結論から言おう。ひどく耳障りだった。あんなにも尊敬していた人々が、不意に、ぞっとするほど無価値に思えてしまった。それが、自己の生存を追い求めた末、アラガミの注意を引かぬため、彼の心が導き出した護身の術であった。 #GE_SS

2013-10-22 22:00:39
灰鉄蝸(かいてっか) @Kaigoat

あとは、よくある話だ。唯一の生存者。間一髪で間に合った救いの手。ゴッドイーター、人類の希望。食いちぎられた眼窩からこぼれ落ち、息子の手の中で潰れた鳶色の眼球。暗く、血と臓物のにおいにまみれた赤い暗がり。――救われたかった。 #GE_SS

2013-10-22 22:03:12
灰鉄蝸(かいてっか) @Kaigoat

明るい場所に。太陽のような日々に。手を伸ばし、つかみとり、この汚れを拭いたかった。生存の対価のごとく、人の息遣いではなく死に安らぎを感じる心だとしても。生きていい理由だけを探して、彼は神を喰らう戦士となった。 #GE_SS

2013-10-22 22:06:27