泣いた赤鬼とごんぎつねとかちかち山と笠地蔵まぜたやつ。

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𝑛𝑎𝑏𝑎𝑘𝑜 @nabanaba47

長い長い行列を見送り、ごんは、かちかち山の狸が沈んだ川へ向かいました。 そこは変わらず、静寂です。ざあざあと川の流れる音だけが、響いていました。 曇った空に合わせて揺らぐ水面を、日が暮れるまで、じいっと見つめていました。

2014-10-12 21:06:29
𝑛𝑎𝑏𝑎𝑘𝑜 @nabanaba47

ごんは、せめてあの青年に、うなぎの罠を仕掛けた青年に何かできないかと考えました。 青年が住む村はすぐにわかりました。長い間、人間と仲良くしたいと思いながら、近づいては追い払われていた村だからです。

2014-10-12 21:09:42
𝑛𝑎𝑏𝑎𝑘𝑜 @nabanaba47

青年は、一人大きな家で、ひとりぼっちでした。暮らしも、貧しいように見えました。 食べ物を届けようと思いましたが、人間の仕掛けた罠に手を出そうとは、もう考えられませんでした。

2014-10-12 21:11:37
𝑛𝑎𝑏𝑎𝑘𝑜 @nabanaba47

そこで、山へ向かい、栗やきのこをとっては青年の家へ届けました。 「これは神様からの贈り物だ」と話す青年の声も聞こえましたが、なんとも思いませんでした。

2014-10-12 21:15:12
𝑛𝑎𝑏𝑎𝑘𝑜 @nabanaba47

何度目かもわからないある日、ごんは同じように、栗やきのこを木の葉にくるんで、青年の家へ届けます。 ダァンと大きな音が響いたと思った瞬間、ごんの意識はぷつりと途絶えました。

2014-10-12 21:17:24
𝑛𝑎𝑏𝑎𝑘𝑜 @nabanaba47

「ごん、お前だったのか。」そう呟いた青年の言葉は、ごんへは届きませんでした。

2014-10-12 21:18:13
𝑛𝑎𝑏𝑎𝑘𝑜 @nabanaba47

青年は、いつも追い払っていた狐が、自分に取り返しのつかない嫌がらせをしたと思ったいた狐が、人間と変わらない感情を持っていることに、そこで初めて気がつきました。

2014-10-12 21:20:41
𝑛𝑎𝑏𝑎𝑘𝑜 @nabanaba47

せめて、話をすれば良かった。青年はそう思いました。同じ頃、狸を川へ沈めた兎も、泥船を拒まなかった狸を、お婆さんのお葬式の日に見かけた、川を見つめ続ける狐のことを、ぼんやりと思っていました。

2014-10-12 21:24:44
𝑛𝑎𝑏𝑎𝑘𝑜 @nabanaba47

青年は、ごんのために、地蔵を立てることにしました。いつも通る道中に、地蔵が5つ立っていたので、その隣にしようと思いました。 地蔵を 立てると、そばに兎が一匹立って、地蔵を見つめています。

2014-10-12 21:27:19
𝑛𝑎𝑏𝑎𝑘𝑜 @nabanaba47

「地蔵が、どうかしたのですか。」青年は、思い切って、兎に話しかけました。すると兎は、「私も、何かしたいと思ったのです。」そう、人間と変わらない言葉で言いました。

2014-10-12 21:28:55
𝑛𝑎𝑏𝑎𝑘𝑜 @nabanaba47

青年は、兎の言葉の意味よりも、人間ではない動物と、言葉を交わせる事実に驚きました。兎はまた少し地蔵を見つめて、茂みの中へ去って行きました。

2014-10-12 21:30:23
𝑛𝑎𝑏𝑎𝑘𝑜 @nabanaba47

それから何年経ったでしょうか。これまでにないような大雪が降り、食べ物の不足に人々は苦しんでいました。 売れ残こりの笠を持って歩く、とあるお爺さんも、同じように飢饉に苦しんでいました。

2014-10-12 21:32:57
𝑛𝑎𝑏𝑎𝑘𝑜 @nabanaba47

道行く中、地蔵が、6つ立っていました。頭には雪が積もっています。 売れ残りの笠は5つだったので、自分が被っていた布を、地蔵に被せることにしました。

2014-10-12 21:35:10
𝑛𝑎𝑏𝑎𝑘𝑜 @nabanaba47

「こんな吹雪の中、寒いだろう。少しでも雪をしのいでくれ。ごん。」 そう言って、家へ帰りました。

2014-10-12 21:37:03
𝑛𝑎𝑏𝑎𝑘𝑜 @nabanaba47

お正月の朝がやってきて、吹雪が嘘のように晴れました。 表へ出ると、お正月を過ごすには十分すぎるほどの、食べ物や、着物など、荷たくさんの物が置いてありました。

2014-10-12 21:38:44
𝑛𝑎𝑏𝑎𝑘𝑜 @nabanaba47

「これは、いったい、誰が?」お婆さんは不思議そうに言いました。 そんなお婆さんの隣で、お爺さんは、今にも泣きそうな顔をしながら、昔の、栗やきのこの贈り物のことを思い出しました。

2014-10-12 21:41:15
𝑛𝑎𝑏𝑎𝑘𝑜 @nabanaba47

たくさん思うことはあったけれど、一言だけ、「神様からの、贈りものだろう。」そう呟きました。 終わり。

2014-10-12 21:42:12