同居する森と月と一番長いデート

森「そういえば二人でどこかに遊びに行ったの、これが最初なんだよな」 伊「カメラ、持っていけばよかったですね。写真に残したかった」 森「そうだねー……(じーん)」
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同居する森と月bot @doukyomi5

「伊月、聴いた?今週の土曜」 「聴きました。っていうか監督が話してる時オレ森山さんと一緒にいたじゃないですか」 「そうだっけ?体育館何かの説明会で使うから部活が一日休みって話な。土曜日なにか予定ある?」 「いいえ。今日聞いた話ですし、そんなに急に予定も立ちませんけど……」

2014-09-17 19:20:30
同居する森と月bot @doukyomi5

オレは野菜炒めに塩胡椒を振りつつ、清水の舞台から飛び降りる心意気で口にした。 「じゃあどっか出かけないか?今年まだどこもいってないだろ」 「合宿で海行ったじゃないですか」 「合宿の分はカウントされないの。どこでもいいけど、せっかくの夏休みに何の思い出もないのは淋しすぎる」

2014-09-17 19:30:30
同居する森と月bot @doukyomi5

「そうですか?オレは森山さんと近所散歩するだけでも楽しかったし、いい思い出ですけど」 「や、それは、オレだってそう思ってるよ」 「どこも行かなくても十分です」 向かい合ってご飯を食べている伊月が笑う。ほのぼのした空気に心が蕩けそうになって、危うく主題を見失うところだった。

2014-09-17 19:40:29
同居する森と月bot @doukyomi5

「いや!もちろんそれも楽しかったけど!せっかくの休みだろ!遊園地とか映画とか水族館とかさ!」 我ながらド定番のデートコースだ。仕方ないだろ、長いことそういう雑誌を買い込んで付箋をつけて、まだ見ぬ運命の人との理想のデートコースを妄想することが趣味みたいなもんだったんだから。

2014-09-17 19:50:30
同居する森と月bot @doukyomi5

「んー……。あ、じゃあオレちょっと欲しいものがあるんですが、もしよければ一緒に買い物しませんか?」 「いいよ。じゃあ買い物な。寝坊するなよ」 軽~く受け流しながら、心の中でガッツポーズを作る。

2014-09-17 20:05:31
同居する森と月bot @doukyomi5

「どの口がそういうこと言うんですかね。森山さんのほうがお寝坊さんなのに……ハッ、坊さんはお寝坊さんキタコレ!」 食事中にキタコレ禁止、とオレは軽く伊月の頭にチョップを入れる。 なにはともあれ、うまくいったぞ! 土曜日は伊月とデートだ!

2014-09-17 20:15:30

森「準備してる間も楽しいんだよ。あ、ちなみにピンクは、止められたのでやめたよ」

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森(土曜日なに着て行こうかな……。ピンク……)

2014-09-18 22:21:52

森「当日!」

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「そろそろ出かけます?」 部活前に自主練もしているオレと伊月の朝は大体早い。今日も、練習はなかったけれど体力が落ちるといけないので走りこみはしてきた。(基本的にオレも伊月も真面目なのだ) それでもいつもの朝よりはゆっくりな今日。オレは昨夜楽しみすぎて眠れなかったんだけど。

2014-09-20 08:40:29
同居する森と月bot @doukyomi5

ナンパの段階でフラれるからデートまでこぎつけたことなかったな。集団で遊んだことくらいはあったけど。 ということで、記念すべき初デート。 全身の映る鏡で三回くらいチェックしたあと、最後にバッグを持つ。 「おっけ。伊月は?」 「桶持ってオーケーです」 「桶は持って行くなよ」

2014-09-20 08:50:28
同居する森と月bot @doukyomi5

伊月はシャツとパーカーと細身のパンツ。素材の良さが最大限発揮されるようなシンプルファッションだ。 「森山さん、眼鏡だ」 「うん。映画見るならいるかなって」 「……」 伊月はじいっとオレの顔を見た後、我に返ったように慌ててふいっと顔を逸らした。

2014-09-20 09:05:31
同居する森と月bot @doukyomi5

眼鏡、いつだったかかけた時にえらく評判が良かったから、ちょっとかけてみたんだけど、…ノーリアクションですかそうですか。変Tはあんなに褒めちぎってくれたのに。 狙ってやったこと外すとすごくカッコ悪いな。いや大丈夫!オレくじけてない! 「さあ、行こうか」 「あ、…は、はい」

2014-09-20 09:20:30
同居する森と月bot @doukyomi5

「雨ふらなくてよかったな」 「そうですね。すっかり涼しくなりましたよね」 心なしかぽおっと頬の上気した伊月が、オレに促されて外へ出る。 やや肌寒いくらいの今日も、オレには絶好のデート日和だ。

2014-09-20 09:35:29
同居する森と月bot @doukyomi5

「あー面白かった!」 伊月はパンフレットを抱いて興奮気味に言う。ちなみに見た映画は明治の剣客漫画を実写化したあれだ。(掲載誌的にね!)恋愛ものを見ると、伊月が寝オチるか、途中で退屈になってダジャレを考え始める、というのは、家で二人で何度かDVDを見た経験から学んだのだ。

2014-09-20 12:40:32
同居する森と月bot @doukyomi5

「オレも子供の頃好きで読んでたな。逆刃刀欲しかったもん」 「森山さん漫画読むの意外です。ファッション誌しか見ないのかと思った」 「オレだって漫画くらい普通に読むよ」 「あ、じゃあ続きも見に来ましょうね!」 「お、おお」 そういえばこの映画、続編があるんだった。

2014-09-20 12:50:30
同居する森と月bot @doukyomi5

棚ボタ的なラッキーだ。 映画がよほどヒットだったのか、伊月はすっかりはしゃいでいる。いつもはしっかりしていて、笑うのも怒るのも節度を保っている感じがあるので、羽根を伸ばして楽しんでる感じが見れたのはよかった。 「あ、お昼。食べますよね。どこで食べます?」

2014-09-20 13:05:30
同居する森と月bot @doukyomi5

伊月がフロアの案内板の前で立ち止まってる。 「あ、そうだな、じゃあ、」 「「こことか」」 といって同時に指さしたのは、伊月がイタリアンの店、オレが和風の定食屋だ。 「……森山さん、オレに気を遣いました?」 「伊月こそ。オレが洋食派だからって」

2014-09-20 13:15:30
同居する森と月bot @doukyomi5

「違います!オレはプロの味を学んでですね、もうちょっと洋食も上手く作れるようになろうと…」 「向上心が高いのは結構だけど、気ぃ遣わなくていーよ。オレは伊月の作る料理、今でも十分好きだよ」 最近の伊月の料理にかける情熱はすごい。まあ、上達しかけの今が一番楽しいんだろうけど。

2014-09-20 13:25:31
同居する森と月bot @doukyomi5

和食党の伊月が洋食を学びたがるのは、結局は洋食派のオレのためなんだろうと思うので、オレは笑って諫める。外で楽しんでる時くらい、伊月は自分が好きなものを選んでいいのに。 「森山さんのたらし…」 「ん?」 俯いて、拗ねたように言った言葉はよく聞き取れなかった。

2014-09-20 13:35:28
同居する森と月bot @doukyomi5

結局、昼食はインド料理。二人で、熱い辛い赤い美味しいって言いながら、映画の感想やいろんな話をしながら食べた。 「これ、ナンですか?」って、絶対言うと思ったけど、伊月はナンを手にして目をキラキラさせてた。ああ可愛い。

2014-09-20 14:50:28
同居する森と月bot @doukyomi5

食べたあとは洋服を見て回る。あ、今更だけどオレらは今日アウトレットモールみたいなとこに来てる。 「伊月はどっちが似合うと思う?」 形の気に入ったジャケット、落ち着いたブルーと渋いグリーンを手に取ってあわせてみた。 「んー…森山さんはやっぱりブルーって気がしますけど」

2014-09-20 15:05:28
同居する森と月bot @doukyomi5

「あ、でも、だから手持ちの服青系がすごく多いですよね。ここは雰囲気を変えてグリーンでもいいのかな…」 前から見たり横から見たり後ろに回ってみたり、伊月はオレより真剣だ。オレも伊月の服を選びたかったけど、伊月は全然こだわりがないみたいで、熱心に見てたのはオレの服ばっかりである。

2014-09-20 15:15:30
同居する森と月bot @doukyomi5

嬉しいけど、オレも、マイ・フェア・レディ気分を味わいたかったというか…。(レディじゃないけど) ジャケットは緑系を購入。あとシャツを何枚か。 洋服の後は、伊月が家具の滑り止めとか、フックとか細々とした日用品を買っていた。オレもバンドが緩んでいた時計を修理してもらった。

2014-09-20 15:25:30
同居する森と月bot @doukyomi5

スポーツショップも、いつも行ってる店より広くてゆったりしてたから、二人でバッシュの試着もしてみる。あとは本屋とCDショップ。 さて、懸命なフォロワー諸兄はお気づきであろうが、今日の目的は買い物と、もうひとつある。 あと一ヶ月後くらいに迫った伊月の誕生日だ。

2014-09-20 16:20:32