同居する森と月と一番長いデート

森「そういえば二人でどこかに遊びに行ったの、これが最初なんだよな」 伊「カメラ、持っていけばよかったですね。写真に残したかった」 森「そうだねー……(じーん)」
2
同居する森と月bot @doukyomi5

できるだけさり気なく、気付かれないように伊月が欲しいものをリサーチしたい。そのために、二人であちこち店を回り、「あ、これ欲しいなー」って伊月が反応したものをリストに入れておきたいのだ! まあ、伊月は堅実派なので、欲しがるもの自体が少ないんだけど…;;。

2014-09-20 16:30:28
同居する森と月bot @doukyomi5

「森山さんって腕時計好きですか?」 「うん。夏につけてると日焼け跡がつくけど、本当は構わないからつけておきたいんだよね」 修理から帰ってきた腕時計のネジを調節して嵌める。高校の時から使っている愛用品だ。 「修理しても使い続けるのって、物を大事にしてる感じがしていいですよね」

2014-09-20 17:10:30
同居する森と月bot @doukyomi5

「いやあ、褒められると照れるな」 「森山さん、靴も大事に履いてますよね。きちんと定期的に手入れしてるし」 隣の伊月が、尊敬とも、親愛とも取れるような目でオレを見た。 真正面から褒められて、顔が赤くなったのが自分でもわかる。 「や、……それは、いや」

2014-09-20 17:25:30
同居する森と月bot @doukyomi5

単に、モテる男は小物の手入れを怠らない、というファッション雑誌の記事を真に受けて続けてきたことだ。見られてるのに気づかなかった。さすがイーグルアイ、といってもいいものか。 褒められるほどの事でもない地道な習慣を、それでも誰かが目にとめてくれてるのは、すごく嬉しい。

2014-09-20 17:35:28
同居する森と月bot @doukyomi5

ちょっと涙が出そうになって、オレは照れくさくて慌てて話題を変えた。 「あ、そうだ最近結構朝晩冷えるから大きめのマグカップとか欲しいよな!このくらいのとか」 目の前の棚にあった、作りのしっかりしたマグカップをごまかすように手に取る。 「あの、実は、……」 「ん?」

2014-09-20 17:45:29
同居する森と月bot @doukyomi5

「いつもオレ、森山さんとご飯食べてる時、使ってるコップのデザインが違うのが寂しいなって思ってて」 今度は伊月の顔が真っ赤だ。どんどん声が小さくなる。 「同じデザインのコップが欲しかったんです。でも、……図々しいって思って言い出せなくて」 「え?」 つまり?

2014-09-20 17:55:31
同居する森と月bot @doukyomi5

おそろいが欲しい、ということなんだろうか? 「図々しくない!なんで。嬉しい、すごく嬉しいよ!」 「でも森山さんが、いつか大事な人と揃えるのを楽しみにしてる、っていうんだったら、」 「いや、そういうことでもない。そう言ってくれるんなら一緒のやつ買おう!」

2014-09-20 18:05:28
同居する森と月bot @doukyomi5

そもそもオレの大事な人は目の前にいますんで! 伊月が同じデザインの物を欲しがるのは意外だ。物には執着のない子だと思ってたから。 もちろんいい方向に。だって普段はそういう素振りを見せないのに、オレとは同じの使いたいってことだろ? オレはテンションが上がった。

2014-09-20 18:15:32
同居する森と月bot @doukyomi5

伊月は逆に、恥ずかしそうに物を選んでいた。 カップは持ちやすくて丈夫なのを選んだ。絶対に壊れませんように、という願いを込めて。オレは群青に白の、伊月は白地に赤のロゴの入ったの。海常カラーと誠凛カラーだ。 オレが欲しいって言ったんでオレに買わせてください、と伊月は言った。

2014-09-20 18:30:34
同居する森と月bot @doukyomi5

日が暮れて、またバスに乗って家路をたどる。服と日用品と何冊かの本と映画のパンフレット。それにお揃いのマグカップを抱えて。 伊月がバスの座席でうとうとしてたから、頭をぶつけないように引き寄せて肩に載せた。 オレも楽しみで昨日寝れなかったけど、伊月もそうだったのかな。

2014-09-20 19:30:29
同居する森と月bot @doukyomi5

家に帰って荷物を直してしまうと、早速伊月が箱からカップを取り出す。 「なんの記念でもないんですけど、オレ、森山さんと暮らしてるのすごく楽しいです。ずっと続いて欲しいって、これからも毎日このカップでコーヒー飲めたらなって思って。その気持代わりに。受け取ってください」

2014-09-20 19:40:28
同居する森と月bot @doukyomi5

言いながら伊月がものすごく照れている。オレはつられて真っ赤にならないように、平常心、と唱えていた。 「……うん。ありがとう」 何かの儀式みたいに、両手で恭しくカップを受け取る。 「あの、オレも楽しい。オレも、伊月と暮らしてるの、すごく楽しいよ」

2014-09-20 19:55:28
同居する森と月bot @doukyomi5

「ありがとうございます!よかった。これからもよろしくお願いします」 感極まったのか、伊月はちょっと涙目だ。涙目で笑いながら、マグカップを包んだオレの両手ごと握っている。緊張してるっぽく、指先はすぅっと冷たかった。 内心の喜びや悶え苦しみを、オレは笑顔で覆い隠した。

2014-09-20 20:05:29
同居する森と月bot @doukyomi5

ここまで言ってくれて、これ、プロポーズのつもりじゃないんだぜ……。

2014-09-20 20:15:30
同居する森と月bot @doukyomi5

伊「眼鏡の森山さんの反則度って、3pシュート中のディフェンスファウルくらいの反則度だと思う。4点プレイ…。え?伝わらない?いや、見たらわかるよ。雰囲気変わるし、似合ってるし、すごい反則ってこと……」

2014-09-20 23:21:49