どっちの料理SHOW -ぬいカレーvsはまカレー-
などと思案しているうちに20分が過ぎていた。IH調理器を止めて鍋を下ろし、代わりにフライパンを置く。肉だけは生のまま煮るのははばかられた。 #落ちぬい二次
2014-10-25 21:36:08鶏もも肉を取り出すと皮をはぎ取って、一口大に切って強火で炒める。中まで火を通すのではなく、外側を焼き固めて旨味が逃げたり生肉の生臭さが他の食材に移らないようにするためだ。 #落ちぬい二次
2014-10-25 21:37:19残った皮は使い道がないのでどうしようかと悩んだが、捨てるのはもったいないのでラップをかけて冷蔵庫に保存しておくことにした。 肉が焼けるころにちょうど圧力鍋の圧力が下がっていたので鍋とフライパンを再度入れ替えて、鍋に鶏肉とルーを入れる。 #落ちぬい二次
2014-10-25 21:38:27ひと煮立ちしてルーが溶けたら一応の完成だ。スプーンで少しすくって味見をするとなんとなく味が弱い気がしたので、塩を一つまみ。カレーは完成したてよりも味が馴染んだ方がおいしいので、少し置いておくことにした。 #落ちぬい二次
2014-10-25 21:40:17「提督の口に合うといいな」 カレーのいい匂いの中で昨晩の残りで軽い食事を済ませると、炊飯器のタイマーをセットしてから自主トレーニングに出たのだった。 #落ちぬい二次
2014-10-25 21:41:41ランニングから戻ると浴場が開いていたので、夕食の前に入浴することにした。この日はまだ時間が早かったからか浴場の利用者はまばらで、不知火の姿もなかった。 #落ちぬい二次
2014-10-25 21:43:19「よう」 珍しく長湯をして寮に戻ってみると、部屋の前には予想外の人物がいた。 「あ……提督、お疲れ様です」 「お疲れ。で、この匂い、お前だろ?」 油断した。浜風の部屋の前にはかすかにカレーの匂いが漂っていた。 #落ちぬい二次
2014-10-25 21:44:43「雪風がわざわざ報告しに来てな。しれえ、かれえのにおいがします!っつって」 「換気扇を回しておけばよかったです」 「そうじゃねっての。金曜のカレーくらい食堂で食えっての」 まあカレーは昼だけどな、と付け足す。 #落ちぬい二次
2014-10-25 21:48:09「それは、またいずれということで」 「いずれじゃなくて、これから晩飯食ってきなさい」 とりあえず食堂で食うだけでいいから、と。 「それでは私のカレーが駄目になってしまいます」 「あー、それもそうか。んじゃ浜風、カレー俺の分もあったりする?」 「えっ!?」 #落ちぬい二次
2014-10-25 21:49:14浜風は一瞬で真っ赤に。たびたび提督に手料理を振る舞ってはいるものの、こうも不意打ちを食らえば取り乱してしまう。 「あ、あります、けど」 #落ちぬい二次
2014-10-25 21:50:44何を隠そうこの提督、何か深い考えがあるわけではない。単に自分が昼に食べ損ねたカレーを食べたいのと、ついでに浜風の人付き合いの練習になればというだけだった。 「試作品ですよ?」 「いいよ、俺の分も頼む」 「は、はい!どうぞ!……やっぱりちょっと待っててください!」 #落ちぬい二次
2014-10-25 21:52:31部屋のドアを開けて招き入れようとして、慌てて自分だけ入って閉める。風呂上りで髪が濡れたままで、しかも着替えを持ったままという事に気付いたからだ。 さっきまで着ていた服をロッカーに隠し、髪をドライヤーで一気に乾かす。ベッドを整えてテーブルを拭くのも忘れずに。 #落ちぬい二次
2014-10-25 21:53:54待つこと10分、身嗜みを整えた浜風が提督を招き入れた。若干キラキラしているように見える。 「どうぞ」 「おう」 カレーの鍋はIH調理器の上でことことと再加熱されていて、いい匂いが一層強くなっていた。 #落ちぬい二次
2014-10-25 21:57:00提督は流しに立つ浜風を横目に所定の位置にどっかと腰を下ろす。勝手知ったる人の部屋というか、昭和の駄目亭主の様である。 #落ちぬい二次
2014-10-25 21:58:21間もなくカレーが配膳される。提督のカレー皿には大盛りで、浜風の分は普通盛り。提督は既に慣れてしまっているが、浜風は食器を自分と提督の分で2つずつ揃えているのだ。 #落ちぬい二次
2014-10-25 21:59:31「ちょい赤いな。激辛系?」 「いいえ、中辛です。赤い理由は食べてのお楽しみです」 水のグラスが置かれてから提督が手を合わせる。 「そりゃ楽しみだ。いただきます」 「いただきます」 提督が遠慮なくカレーを口に運ぶ。浜風はそれを待ってから食べ始める。 #落ちぬい二次
2014-10-25 22:03:10「お、うまい」 もぐもぐ。 「お口に合いましたか。よかったです」 浜風も食べてみて成功だと心の中でガッツポーズ。辛さも隠し味もちょうどよくて、少し固めに炊いたご飯はルーと絡んでもべちょべちょになっていない。 #落ちぬい二次
2014-10-25 22:04:57「マジうまい。この、なんか微妙な酸味みたいなの何?」 「当ててみてください」 もぐもぐ。 「んー? フルーツ系のような、もうちょっと違うような……だめだ、降参」 浜風は降参宣言に満足したのか、ふふん、と鼻を鳴らして得意げに胸を逸らす。 #落ちぬい二次
2014-10-25 22:05:50「トマトです。カットトマトの缶詰」 「へー、赤いのはトマトか。合うもんだなあ」 もぐもぐ。 カレーだけを見て一心に食べる提督と、提督を見ながらゆっくり食べる浜風。 #落ちぬい二次
2014-10-25 22:08:37「以前トマト仕立てでラムを使ったカレーを食べたことがありまして、それを参考にしました。ラムは気軽に買えないのでチキンですが」 「鶏肉もいいぞ」 もぐもぐ。 #落ちぬい二次
2014-10-25 22:10:02みるみるうちにカレーが提督の胃袋に収まっていく。ご飯の最後の一粒まで綺麗に食べきって、グラスの水をぐいっと飲み干す。ほぼ同時に浜風も食べ終わっていた。 「うまかった。ごっそさん」 「おそまつさまです」 #落ちぬい二次
2014-10-25 22:11:11食べ終わった食器が手早く下げられる。提督は洗い物を始める浜風を見ながら寝転がる。黒ストッキングの向こうから透けて見える純白。立っている浜風のスカートの中を覗きたかったのではない、食って寝転がるという幸福を貪ろうとしたら視覚的にも思いがけず幸福だっただけである。 #落ちぬい二次
2014-10-25 22:13:07「あーなんかビール飲みてえ」 浜風のスカートの中を見ながら提督。 「勤務中じゃないんですか?」 洗い物をしながら背中越しに浜風。 「今日は珍しく勤務時間内にぜーんぶ終わってな。花の金曜ってやつですよ」 #落ちぬい二次
2014-10-25 22:14:42「それは本当に珍しいですね。あ、鳥の皮ならありますよ、カレーの具の残り」 「マジか」 「焼きますか、塩胡椒で?」 「頼む。ちょっとビール買ってくるわ」 勢いよく起きるとポケットの小銭を確認し、浜風の部屋を出ていく。 #落ちぬい二次
2014-10-25 22:16:57未成年の部下につまみを作らせて、未成年の部下の部屋で飲酒しようという駄目な大人の見本である。ちなみに基地内には民間のコンビニが入っているので、酒類も普通に買えるのだ。 #落ちぬい二次
2014-10-25 22:18:33