Jシャルの愉快な珍道中4

従者の日記【@J_diary_】さんを読み直し用に(勝手に)まとめてみたその4 ※また編集します
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従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】青く透き通る氷の彫刻のような種族が住む町に辿り着いた。困ったことに何もかもが雪や氷で、まるで温まれそうにない。高温になると住民が溶けてしまったりするのだろうか。あまり長くはいられないなと思ったが、相変わらず行商人は平然としている。彼も寒さを感じないのかもしれない。

2014-02-05 22:06:18
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】他にやり方が見つからないので、青い石を渡そうと決めた……のだが、行商人は光に透かしたり引っくり返したりして眺めたあと、そっと僕の手に戻してきた。気に食わなかったのかと思ったが、そうではないらしい。彫られた文字を見ていたけれど、ひょっとして読めたのか。何者なんだろう。

2014-02-06 22:31:40
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】何が書いてあったのか聞いても反応がないが、戻されてしまった以上この石の代わりになるものを探さなくてはならない。かといって他には何もないし、と思っていたら、彼はこのあたりに棲むという獣(魔物?)の角を求めてこの町に来たらしい。討伐でいいならなんとかできそうな気がする。

2014-02-07 22:02:08
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】頼まれたとはいえ彼女のカンテラを取り戻す義理などないはずだが、シャルル様はやる気満々だ。死にかけの他人を拾うような主人である。そのやり方に口を出すつもりはない。獣の情報を集めようと氷像のような住民に聞いてみたが、どうやら神の使い扱いらしく殺しに行くとは言えなかった。

2014-02-08 22:08:02
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】例の獣だか魔物が棲むという洞穴に向かった。あの町では様付けで呼ばれ崇められているようだったが、外見に関する情報は得られなかった。本当に見たことがある者は少ないのかもしれない。角がある、という手がかりしかないが、神の使いと呼ばれるのだから神々しかったりするのだろうか。

2014-02-09 22:14:24
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】結論から言うと神々しくない。獣でさえない。洞穴はずっと一本道が続いており、迷う心配はなかったが、いつ出くわしてもいいように気を張って進んでいた。――が、彼女は自ら大はしゃぎで現れた。ヒトの形をとった彼女の額に角があると気づいたときには、物凄い勢いで逃げられていたが。

2014-02-10 22:24:59
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】一本道の突き当たりで震えていた彼女は、逃げ場がないと悟ったのか、僕らを睨み付けるなり金色の毛をした獣に姿を変えた。変化のできる種族だったらしい。なるほど、これなら神の使いという呼び名に相応しい獣だ。もし最初にこの姿で現れていたら、迷わずナイフを抜いていたくらいには。

2014-02-11 22:05:51
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】この洞穴に足を踏み入れる者は例の住民くらいで、しかも限られた数人だけなのだという。彼女と同じく、この場所自体も神聖視されているためだろう。僕らのことをその数人と勘違いした彼女は、普段通り貢ぎ物を期待して駆け寄ってきたというわけか。ちょっと間が抜けてるんじゃないのか。

2014-02-12 22:12:57
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】彼女があの町の住民に利益をもたらしているようには思えないのだが、見た目だけで勝手に神聖視されてしまうなんていうのはよくあることだ。行商人が角を欲しがる理由も不明だが、条件に指定するくらいだ。彼女には、あるいは彼女の角には、何か特別な力が秘められているのかもしれない。

2014-02-13 22:17:25
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】角の話をそれとなく出してみたところ、どうやらずっと伸び続けるものではなく、一定期間で生え替わるものらしい。脅したくはないのだけれど、もし以前の角が残っているならなんとかして持ち帰りたいところだ。このところ何かを得ようとすると障害があって、折り合いをつけるのが難しい。

2014-02-14 22:10:34
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】彼女も彼女で住民の勝手な信仰を利用していて、貢ぎ物で暮らしていける今の境遇を悪く思ってはいないのだろう。危害を加えないこと、もう干渉しないことを条件として、昔抜けたという角を貰えることになった。これまで角目当てに襲われたことはないらしいから、やはり価値は分からない。

2014-02-15 22:10:14
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】殺さずに済んでよかったというのは正直な気持ちだ。しかし、獣と魔物、そしてヒトとの境界線は一体どこにあるのだろうか。現れたときの見た目こそ僕らに近かったものの、果たして彼女はヒトであるといえるのか。ヒトの姿と獣の姿、どちらかが本来の姿だということもないのかもしれない。

2014-02-16 22:07:04
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】町に帰ってきて行商人の姿を探したが見当たらない。住民も行き先などは特に聞いていないようだ。動向がまるで読めない彼のことだから少し焦ったが、きっと欲しいものをみすみす逃すような真似はしないんじゃないかとは思う。条件として提示するところからだが、上手く交渉してみよう。

2014-02-17 22:29:25
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】朝食の時間にぬっと現れた行商人は相変わらずの無表情(というか真っ黒すぎて目くらいしか見えない)だった。どこに行っていたのか尋ねると分厚い本を掲げて見せてきたので、引き込もって読書でもしていたのだろう。なんとか貰ってきた角を取り出したら、食い入るように見つめていた。

2014-02-18 22:56:52
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】かなりの時間と手間を要したが、ようやくカンテラを手に入れることができた。そういえば、行商人は何の説明も無しに小さな紙片を添えて渡してきたけれど……。「請い願う 紫の羽根降り注げ 誓いのもとに 翼はひらく」? 読める文字だが意味が取れない。一体何の言葉だろう。

2014-02-19 22:05:05
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】謎の詩の最後には、括弧に入れられて僕と有翼人種の彼女の名が並んでいた。「綴りはそれであってるかい」と行商人のリュックに訊かれる。石に刻まれていた文字を、彼はあのときに暗記したうえに、訳していたというのか。ならば抱えていた分厚い本は、文法書か何かだろうか……驚いた。

2014-02-20 22:28:30
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】目的を果たしたところで行商人たちと別れた。彼らは自分の知識欲を満たすため、これからも旅を続けるだろう。石の価値も、いずれ分かるときがくるのかもしれない。カンテラを手に入れるのはシャルル様の希望だったとはいえ、無茶をさせてしまったし、早く暖かい場所へ連れていきたい。

2014-02-21 22:14:16
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】歩くのが困難なほどではないけれど、地面は雪に覆われたままだ。どこまでも続くような白い世界の中にずっといると不思議な気持ちになる。うっすらと残る足跡も、降りやまないこの雪で消えてしまうのだろう。「壁」に辿り着くころには、どちらから来たのかさえ分からなくなっていそうだ。

2014-02-22 22:24:24

ブロック17

従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】「壁」を越えると視界から雪はなくなって、代わりに巨木が目に飛び込んできた。相当距離があるというのにここからでも見えるということは、尋常じゃない大きさだろう。黄色っぽいのは葉の色か、それとも花が咲いているのか。とりあえず目印として、あの木のところまで行ってみよう。

2014-02-23 22:06:10
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】巨木の根元には町が広がっているようだ。結構栄えている様子だが、他の町に比べて緑が多いように思える。あの木を町のシンボルとして、植物を愛する者が集まっているのかもしれない。氷の土地よりはだいぶ過ごしやすそうだし、明日着いたら少しゆっくり休んでいけたらいいなと思う。

2014-02-24 22:46:14
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】町の近くで赤い制服を着た男たちに止められた。皆なにやら金属でできた面のようなもので口と鼻を覆い、ゴーグルまで装着していて、奇妙な威圧感がある。なんでも、現在例の巨木の近くを通るにはこの装備が必要なんだとか。町までこれを、と言って貸してくれたが、一体何事なのだろうか。

2014-02-25 22:10:35
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】僕らも同じ装備で仲間入りを果たしたが、シャルル様はなんだか楽しそうだから良しとしようか。ひとりが付き添いで町まで送るとのことだ。話を聞くと、あの巨木の花粉が突然有毒性を持ってしまったのだとか。しかも花が咲くにはまだ早いのだという。なかなか近づけず、原因は不明らしい。

2014-02-26 22:03:42
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】町の人びとも、赤い制服の男たちほどしっかりした装備ではないが各々で口元を覆っている。長時間外で花粉を吸い続けると意識が朦朧とし始め、やがて昏倒するそうだ。当然屋内にいるべきだと諭されてしまった。行動の制限を花が散るまで強いられるとしたら、町にとって相当深刻な問題だ。

2014-02-27 22:59:49
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