Jシャルの愉快な珍道中4

従者の日記【@J_diary_】さんを読み直し用に(勝手に)まとめてみたその4 ※また編集します
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従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】あの木は長い間町の人びとに実りを与えてくれる守り神として親しまれていて、こんなことは今回が初めてだそうだ。一部では切り倒してしまったほうが、という意見も出始めているようだが、具体的な損害以上に祟りや罰などを懸念する声が大きい。平和的に解決できるなら、一番良いのだが。

2014-03-01 01:10:48
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】守り神の怒りだとか、町の者を見限って滅ぼそうとしているだとか、例の木を悪者扱いする意見もあるが、僕からしてみれば何か引っ掛かる。そうなるように仕向けているような、人間の思惑を感じるのだ。もし、守り神というのが本当で、あの木がなくなって得をする者がいるのだとしたら?

2014-03-01 22:22:26
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】一際懸命に木を切ってはならないと人びとを説得しているのは、少年と青年の間くらいの若者だった。警備員のような立場なんだろうが、例の赤い制服もまだなんだか着られているという印象だ。信心深いというよりは現実的な考えの持ち主のようだから、彼に詳しい話を聞いてみようかと思う。

2014-03-02 22:45:25
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】他に比べて若すぎるとは思っていたが、彼の部屋に通されて息を呑んだ。例の木に関するものと思われる膨大なデータが部屋中にうずたかく積まれていて、本当にここで生活できているのか不安になるくらいだった。旅人相手だというのに、ひとりでも木に登って調査したいと熱心に語られた。

2014-03-03 23:03:44
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】彼は木がおかしくなった原因を外的なものと考えているようで、個人で根元の土を調査したりもしていたらしい。そこに問題が見られない以上は登るしかない、なんて、すごい自信だなとは思うが僕も気になるところではある。シャルル様を連れてはいけないし、禁じられているのだろうけれど。

2014-03-04 22:54:52
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】しまった。余計なことを言った。彼はずっと、自分の考えを認めてくれるひとを求めていたのだ。姿が見えないのに早く気づくべきだった。中途半端に背中を押すような真似をして、何かあったらどうする。シャルル様に話したら絶対についてきてしまうだろう。急いでカタをつけるしかない。

2014-03-05 22:17:20
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】真夜中に宿を抜け出して、面を拝借し、立ち入り禁止を無視して巨木のもとへ向かった。こういうことをしたのは久しぶりだ。案の定根元には彼がいて、僕に気づくなり驚いたようなほっとしたような顔をした。一応一度止めてはみたけれど、ここに来た以上聞かないことは僕にも分かっていた。

2014-03-06 22:34:54
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】満足したら、あるいは危険と判断したら、何も見つからなくても連れ帰るという約束で共に登った。巨木すぎて足の引っ掛かる場所などないが、普段なら彼らが管理のために使っているのであろう足場が取り付けられていて、上まで行くのは容易い。禁止さえされていなければ誰でも登れそうだ。

2014-03-07 22:30:06
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】シャルル様はときどき異様に鋭くて驚くことがある。どうして目が覚めたのか、追いかけてきてしまった。僕が開けた倉庫から面を持ってくるあたり流石だけれど、大きさが合っていないせいだろう、僕らの元に辿り着く直前で外れて遥か下に落ちた――刹那、自分の面を外して口に押し当てた。

2014-03-08 22:47:06
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】彼のことが気がかりではあったが、状況が状況なので仕方がない。シャルル様を抱えて面を手で押さえながら降りた。地上に帰ってきたときにはなんだか頭痛がするようなふわふわした感覚だったが、意識を失わなくてよかった。彼を犯罪者にしなくて済んだ、はずだ。無事に戻ればいいけれど。

2014-03-09 22:14:59
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】彼の姿が見えて安心したけれど、どうも様子がおかしい。何か発見できたか尋ねてみても、曖昧な答えしか返ってこなかった。彼の性格を考えれば、熱く語ってくるか極端に落ち込んでいるかのどちらかだと思っていたのだが。しかしああやって濁すということはきっと――彼は、一体何を見た?

2014-03-10 22:12:07
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】物陰から広場で人びとが意見を交わしているのを見ていたら、背後から声をかけられた。町の他の者とは少し違った風貌をした少年だ。旅人が珍しいのだろうと思ってしばらく他愛ない会話をし、彼も無邪気な反応を示していたが、突然ぐいと腕を引かれて「木に登っただろう」と囁かれた。

2014-03-11 22:22:33
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】シャルル様が離れた一瞬のことで、すぐに態度は少年らしいものに戻ったが、聞き間違いではないだろう。あのとき見られている感じはしなかったし、そもそも子供があんな時間に出歩いているというのもおかしな話だ。僕が返す言葉に詰まっている間に、彼は軽やかに去っていってしまった。

2014-03-12 23:21:19
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】この間ひとりで出歩いてシャルル様に叱られたばかりだというのに、少年の言葉が気になって夜中に抜け出した。ひとりで行かなくては会えないのだろうという確信があったためだ。来るのが分かっていたように彼は同じ場所で待っていて、口を開くなり例の赤い制服の少年について尋ねてきた。

2014-03-13 22:37:22
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】いまいち考えが読めない厄介な少年だ。僕や彼を咎める気はないようで、淡々と質問を投げてくる。彼との関係は不明だが、どちらかといえば好意的な感情を抱いているのかもしれない、とは感じた。鏃部分の黒い一本の矢を、少年の名前を添えて彼に渡すように頼まれてしまったが、さて……

2014-03-14 22:23:55
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】シャルル様に少年から矢を受け取ったことを正直に話して、例の若者に渡しに行った。矢を目にした瞬間明らかに動揺したのが分かったが、頼まれた通りに少年の名(実名かは不明) を告げると、顔面蒼白で固まってしまった。聞き取れはしなかったけれど、やっぱり、と唇が動いた気がする。

2014-03-15 22:30:13
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】昔、少年を庇ったことがあるのだと彼は言う。確かに変わった風貌だとは思ったが、僕らとはやや異なる種族のようだ。呪術に長け、「蛇の民」と呼ばれて忌み嫌われているのだと知ったのは後になってからだったとか。自分と町、どちらを取るか試しているのだろう、と彼は虚ろな目で呟いた。

2014-03-16 22:20:37
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】木の上で、彼はこの矢と同じものが刺さっているのを見たのだ。少年は「蛇の民」の中でも飛び抜けて力が強い存在のようで、無邪気な残酷さをもって、守り神たる巨木をたったひとりで呪ったのだろう。今も彼が変わっていないかを確かめるためだけに? ――それにしてはあの態度は、

2014-03-17 23:00:35
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】開花が早まったのも花粉が有毒性を持ったのも、守り神の怒りなどではない。矢に毒された木がなんとか排出して、立ち直ろうとしているためではないのか。少年に繋がる証拠である矢を抜いて来られなかった時点で、彼の善意が本物であったことは分かるだろう。推測を、伝えるべきだろうか。

2014-03-18 23:45:06
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】少年は、彼なら原因を突き止められると信じてやったのではないかと思う。木の警備に携わっている、しかも最年少である彼が真相を暴けば、それは大きな手柄になる。少年にとって大事なのは彼だけであって、たとえ彼が住んでいる町がどうなろうと自分の種がどう思われようと構わないのだ。

2014-03-19 22:12:05
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】僕の考えを話している間、彼はずっと黙って聞いていた。矢は抜くがひとりで処分する、原因や犯人については公表しない、だそうだ。今まで必死で努力してきたのは真相に辿り着いて解決するためだったからそれでいい、と。――彼が、少年を助けたことを後悔していなければいいなと思う。

2014-03-20 21:58:58
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】朝外に出てみると、吹雪のように花びらが降り注いでいた。町じゅうが散った花で溢れて、一瞬違う場所かと思いそうになるくらいだ。何も言ってこなかったけれど、この夜の間に、彼は少年の毒矢を引き抜いたのだなと悟った。町のざわめきの中、面がなくても大丈夫だという知らせがあった。

2014-03-21 23:40:40
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】花が散った原因は不明のままで、何事もなかったかのように人びとは元の暮らしに戻っていくのだろう。町を出ようとしたら、門のところに例の少年が立っていた。相変わらず考えの読めない笑顔で手を振ってきたが、彼とは話をしたのだろうか。種族について興味はあったけれどお別れだ。

2014-03-23 01:16:35
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】「壁」を越える前に振り返ったら、木はすっかり花を落としているようだった。やはり遠くからでもよく見える。守り神云々の話を鵜呑みにするわけではないけれど、意志を持って自分を、そして未来の町を守ろうとしたのではないか――だなんて思わなくもない。無事解決したならなによりだ。

2014-03-23 23:49:47

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