Jシャルの愉快な珍道中4

従者の日記【@J_diary_】さんを読み直し用に(勝手に)まとめてみたその4 ※また編集します
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従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】今度のブロックはさまざまな種族が入り乱れているけれど、多くのひとが白衣――といっても淡い桃色や水色が大半だが――を纏っている。色付きを着ているのは若者で、どうやら医学の勉強をしている学生たちが集まっているようだ。白を着ているのは、一人前の医師か教師といったところか。

2014-03-24 23:01:27
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】旅人だと気づいた学生たちが、顔色が悪いだの傷があるんじゃないかだの、何かと理由をつけて診ようとしてくる。元々病院は好きではないのに、実験台にされたくはない。僕がシャルル様に拾われたときは医療の進んだブロックの技術で命を繋いだらしいけれど、まさか、なんて考えが過った。

2014-03-25 22:25:13
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】病院と学校が組合わさったような施設が中心にあり、その周辺は栄えているが、遠ざかるほどに閑散とした印象を受ける。医療に携わっているか否かで貧富の差が大きいのかもしれない。このブロックの山ではさまざまな薬草が採れるらしく、採集でなんとか日銭を稼いでいる者もいるのだとか。

2014-03-26 22:06:48
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】僕らに興味津々な生徒たちに囲まれて困っていたら、教師と思われる男(30代半ばくらいだろうか)がさりげなく助けてくれた。旅人に対する質問攻めと勧誘は、もはやこのブロックの名物と化しているらしい。穏和でありながら、目の光の強さは医者というより戦闘職のそれに近い気がした。

2014-03-27 22:36:17
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】施設を案内してくれるとのことなのでついていったが、途中でこちらを窺っている少女がいることに気がついた。彼に用があるのだろうと一旦離れ、遠くから様子を見ていると、薬草か何かを直に売っているようだった。貧困層の者なのだろうが、今にも倒れそうなくらいガリガリに痩せていた。

2014-03-28 22:02:04
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】彼は解毒の研究をしているらしく、買っていたのも特定の毒に効く薬草だと言う。非常に珍しい薬草なのに、あの少女だけがある程度定期的に彼のもとへ持ってくるのだとか。それなりに高価で買い取っているのに、何に使っているのか、少女の身なりはずっとあのままだというから不思議だ。

2014-03-29 22:30:57
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】彼も医者として少女のことを気にかけてはいるものの、あれだけ生活に困窮している様子でありながら、彼女は一切の施しを受けずに突っぱねるんだとか。薬草の入手場所が他に知られたり少女が危険な目に遭わないように、彼は少女と取引していることを秘密にしてほしいと言ってきたが……

2014-03-30 22:06:17
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】14、5歳くらいの、あんな痩せっぽちの少女が山じゅうを探し回ったところで、貴重といわれる薬草を毎度一定の量集められるものだろうか。金の使い道は彼女の自由だと思うけれど、どうも何かが引っ掛かる。秘密と言いながら教えてくれた彼も、本当に大事なことは隠している気がする。

2014-03-31 22:37:04
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】夜中にあの少女を見た。山のほうからふらふらとひとりで歩いてきた彼女が握りしめていたのは、僅かな薬草らしきものと――あれはおそらくナイフだったように思う。明かりの少ない道を通って貧民街へと向かう彼女の後をつけると、石畳の上にほんの数滴、血が滴っているのに気がついた。

2014-04-01 22:03:09
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】さすがにこれは、と、気づかれぬように背後に回り、少女のナイフを持つ手をつかんだ。サイズの合っていない服の袖から覗いたのは、ずたずたと言ってもいいくらいに無数の生傷で埋め尽くされた腕だ。骨のような細さも相まって、こうしたものは見慣れているなずなのに、思わず息を呑んだ。

2014-04-02 22:22:24
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】大人しい性格かと思っていたが、ナイフも血も自分のものだ、お前には関係ない、と薬草を固く握りしめながら主張する少女は威勢が良かった。自らを傷つける理由に関してはだんまりを決め込むつもりのようだ。手を離した瞬間転がるように逃げ出したけれど、追いかけることはしなかった。

2014-04-03 22:11:43
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】彼に夜の出来事について(半ば強引に)尋ねたところ、やはりすべてを知っているようだった。とある種類の血液を吸うことで例の薬草が異常な成長を見せること、彼女の血がそれに該当すること、それから彼が独自に調べたという金の使い道。淡々と話す口調には、しかし、慈愛が滲んでいた。

2014-04-04 22:35:34
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】少女は、亡くなった父親の治療費を未だに払い続けているという。完済まで他人の手を借りずに稼ぐ、というのはもはや彼女の生きる目的であり誇りになっていて、相手の医者から無茶な脅しを受けているわけではないのだとか。残りは僅からしいけれど、それまで本当に身が持つのだろうか。

2014-04-05 22:47:59
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】少女のやり方は血を売る行為と変わらないのでは、という問いに、彼はシビアな答えを返した。「彼女の栄養状態ではそれさえもできないだろう、となるとほかに売れるものは――」本人が気づいていない、彼が気づかせないようにしているだけで、少女は随分と彼に支えられているように思う。

2014-04-06 22:09:46
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】彼女が返済を終えたら、家族として迎えるのではなく助手として雇うつもりだと彼は言う。それなら納得してくれるかな、などと話す表情は、どう見ても父親が娘に向けるそれだった。彼はきっと、あの誇りと無謀を履き違えているような少女のことを、ずっと微笑ましく見つめてきたのだろう。

2014-04-07 22:08:54
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】彼はここに腰を落ち着ける前は医学の勉強がてら冒険者をしていたらしく、そう聞いて納得した。穏やかな中に垣間見える鋭さを、僕はなんとなく察して警戒していたからだ。おそらくそれなりに腕が立つ、と思う。彼が少女に目をかけているのは、昔の自分に重ねている部分もあるのだろう。

2014-04-08 23:41:07
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】そろそろブロックを離れると告げたところ、最後の思い出に、と彼が夕食を振る舞ってくれた。いつかは例の少女にこうしたいのだろうなと思う。シャルル様から旅の話を聞いて、死ぬ前にもう一度冒険するのも悪くないなどと笑っていた。遠く離れた場所に、会いたい友達がいるのだそうだ。

2014-04-09 22:02:36
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】学生たちを避けながら町を抜けるために裏道を通っていたら、少女と似たような子供を沢山見た。彼も医者だ、特定のひとりを救うことに対して葛藤はあるはずだと思う。誰が救われて誰が救われないかの差は些細なもので、かくいう僕も、そうした些細なきっかけによって生かされたひとりだ。

2014-04-10 22:01:27

ブロック19

従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】「壁」を目指して進んでいたら、ずんぐりとした獣人に呼び止められた。猫のような狸のような姿で、髭がやたら長いのは種族の特徴だろうか、それとも単に年寄りなのか。彼の話によると街道が一部通行止めになっていて、回り道する必要があるそうだ。原因によってはなんとかできそうだが。

2014-04-11 22:02:53
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】「ワタリ」が行われる期間だから駄目だ、と言われたけれど、何のことか分からなかった。説明を求めると、自分で見たほうが早いとのこと。案内されて現場に着き、一目で納得した。白くて小さな生き物が、群れをなして横切っていく。問題はその数だ。これではいつ途切れるのか分からない。

2014-04-12 23:02:17
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】足を突っ込もうものならあっという間に群がられて食われてしまう、らしい。一匹一匹なら簡単に片付けられそうだが、こうなると数の暴力だ。元々は大人しい性格らしいが「ワタリ」のときは気が立つのだとか。普段はあいつらご馳走なんだけどな、という彼の言葉は冗談ではなさそうだった。

2014-04-13 22:11:02
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】どれほど凶暴なのかは分からないけれど、ひとりならともかく、今は避けられる危険は避けるべきだろう。仕方ないので彼の言葉に従って回り道をすることにした……ら、何故か例の生き物が一匹ついてきてしまった。害はなさない。彼に渡したらおいしく料理されてしまうし、どうしたものか。

2014-04-14 23:12:54
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】弱い個体が淘汰されるのはどこの世界でも同じようだ。他よりかなり体が小さいし、追い出されるか逃げ出すかしてきたのだろう。何故だか一瞬でシャルル様に懐いてしまって、シャルル様も嬉しそうにしているし、もしこのまま離れないようなら隣のブロックまで連れていってしまおうと思う。

2014-04-15 22:34:56
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】思った以上に道が悪く、このあたりの岩はやたらと尖っていて、早く抜けてしまわなければおちおち座って休むこともできない。おかしな同行者がずっとシャルル様の肩を陣取っているのがちょっと腹立たしいが、見た目としては悪くない、気がする。僕と同じような立場だ、穏健にいこう。

2014-04-16 22:17:56