茂木健一郎氏 @kenichiromogi 第1352回【馬から落ちて落馬して】連続ツイート

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート１３５１回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、ふと思い出したこと。

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風邪のようなものを引いて、でも忙しいから動き回っていて、基本元気なのだが（なにしろ毎日走っているわけだから）、なかなか治りきらない。それで、昨日、夕方、疲れたなあと思って、「ちょっと、頭痛が痛い。」とツイートした。もちろん、重言であることは意識してわざとである。

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ほとんどの方は、「ああ、これは、茂木が、ふざけてわざと重言を使っているんだな」と思ったと思うが、「頭痛が痛いというのはおかしい」ということを親切にツイートしてくる方は、（１）ふざけたのに同調しておつきあいいただいている（２）本当に私が勘違いしていると思っているのどちらなのだろう。

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それはそうと、重言と言えば、わが畏友、塩谷賢が、学生時代、「古の昔、武士の侍が、馬から落ちて落馬して、傷は浅いぞもうだめだ」みたいなことを飲みに行った時によく言っていたのを思い出した。それで、「馬から落ちて落馬して」というのはどこから来るのかと検索したら、なんと近松ではないか。

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近松門左衛門の、「浄瑠璃『鑓の権三重帷子（やりのごんざかさねかたびら）』（1717年初演）の中に、「竜の駒にもけつまづき、馬から落ちて落馬いたしたと、片言やら重言やら」というフレーズがあって、この作品には、「馬から落ちて落馬」のような重言がひんぱんに使われているのだという。

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重言は、普通に考えれば冗長だが、敢えて使うことで、おもしろい句読点になることがある。近松門左衛門は日本のシェークスピアだが、言葉遊びの感覚に長けていた人なのだろう。一般に、よくない表現だと言われているものは、抑制をかけて使うと、かえって効果的になることがある。

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文章を書いていて時々迷うのが、「・・・と言っても過言ではない」という表現で、「馬から落ちて落馬して」ほどの、確信犯的な押しの強さがないだけに、かえって素直に響いてしまって、だから気持ちが悪く、基本的に使わないことにしているけど、会話の中で言われると、自然に聞こえてしまう。

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以上、連続ツイート１３５２回「馬から落ちて落馬して」のテーマで、６つのツイートをお届けしました。