アイドルの品格

泣ける艦これSS第二段 当初案では那珂ちゃんではなく電ちゃんが主人公なつもりでしたが、色々あってこの形に そういえば那珂ちゃんも電ちゃんもどちらも同じ四水戦でしたね
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深海さかな @dzurablk_kai

駆逐イ級はこう尋ねた 「ねえ、僕らはどこから来たの?」 それに雷巡チ級はこう答えた 「海の底からだよ」 するとイ級はまた尋ねた 「じゃあ、彼らはどこから来たの?」 チ級が目線を辿ると、その先には無数の光 #アイドルの品格

2014-11-19 02:04:36
深海さかな @dzurablk_kai

百万ドルの夜景、とでも形容したくなるような橙色の光はだが都会の電気とは異なり、思い思いに明滅しながら暗い水面にまた違った不夜城を演出している …紛う事なき、人間たちの艦隊の砲火… 今、あの下ではまるで線香花火のように、同胞の命が散っている #アイドルの品格

2014-11-19 02:08:08
深海さかな @dzurablk_kai

その考えはチ級の口元を少し悲しげに歪ませた 「…彼らは、陸の上から来たんだよ」 「なぜ?」 イ級の無邪気な問いに、教育係の雷巡は丁寧に答えていく 「そうしないと生きていけないからだよ」 …彼方から響く14センチ砲の甲高い音が爆発音でかき消された #アイドルの品格

2014-11-19 02:10:39
深海さかな @dzurablk_kai

「だから戦うの?」 チ級は少しの間言葉に詰まる 「…そうなのかも、しれないね…」 チ級が言葉を区切り顔を上げた時には既に、砲撃音も光の明滅も止んでいた #アイドルの品格

2014-11-19 02:13:34
深海さかな @dzurablk_kai

…所と時を別にして、真夜中の警備府敷地内 「はぁあ、めんどくさいなぁ…」 軽巡那珂は誰もいなくなった廊下を歩きながら、大きくため息をついていた 「当直なんかしたらお肌が荒れちゃうよ~…」 #アイドルの品格

2014-11-19 02:17:32
深海さかな @dzurablk_kai

そう言う右の袖には、週番を示す腕章が巻かれている …週替わりで点呼や見回りなどの、宿舎管理をする大隊週番 那珂は今まさにその貧乏くじ…もとい、大切な役目を担っている最中だった 懐中電灯であちこちを照らしつつ、誰もいない廊下をほっつき歩く #アイドルの品格

2014-11-19 02:20:23
深海さかな @dzurablk_kai

だがその眠気覚ましを兼ねた暇つぶしにも丑三つ時を周り、いい加減飽きてきた頃 「あーもう、退屈ー… …そうだ!」 那珂はあることを思い付くと、一目散に一階のロビーへと舞い戻っていった… #アイドルの品格

2014-11-19 02:22:32
深海さかな @dzurablk_kai

「あー、夜は気持ちいいなぁー!!」 数分後、那珂の姿は草原にあった 「こっそり抜け出しちゃうなんて、なかなかできないよ~ 週番特権だね~!」 …那珂はこう言うが、念の為言っておくと例え週番でも夜中に宿舎を抜け出すのは御法度である #アイドルの品格

2014-11-19 02:26:16
深海さかな @dzurablk_kai

たまたま那珂が玄関の鍵を持っていた、というだけでそれ即ち『週番は宿舎を抜け出してもよい』ということにはならないのだが、当の本人は涼しい夜風に夢中でそんなことはどこ吹く風 まあ、バレなければ問題は無いのだろうが #アイドルの品格

2014-11-19 02:28:28
深海さかな @dzurablk_kai

「夜はいいよね~ 好きだな~」 高台の草むらに座り丘の上から夜の海を眺めていると、つい楽しさのあまり川内の口癖が零れた 那珂も川内ほどではないにせよ、1人になれる夜は好きだった #アイドルの品格

2014-11-19 02:31:26
深海さかな @dzurablk_kai

誰にも邪魔されず星空と水面や大地に囲まれて、その日その季節の些細な温度や湿度の違いを肌で感じながら浸る考え事は、軍隊という集団生活にあっては至高の贅沢だ 「フフフ…♪ フンフンフンフン、フフーフーン…♪」 鼻歌ですらどこか楽しい #アイドルの品格

2014-11-19 02:34:36
深海さかな @dzurablk_kai

その時… 「…ッッ!! 誰か!?」 突然脇で聞こえたガサガサという音に反射的に懐中電灯を向けながら、誰何(すいか)をする だが答えはなく、ガサガサという音は次第に近付いてきた (まさか…敵襲…? 警備府の敷地内なのに…?) #アイドルの品格

2014-11-19 02:38:35
深海さかな @dzurablk_kai

しかし、近隣の海域には歩哨の駆逐艦も巡回しているし、敷地外には陸軍の衛兵もいる 騒ぎにもならずに武器を持った深海棲艦が侵入するなど、考えられない 「…誰か」 #アイドルの品格

2014-11-19 02:41:06
深海さかな @dzurablk_kai

意を決して草を掻き分けながら、音のした方へと近付く 果たして、そこにいたのは… 「ッッ!? 深海…棲艦?」 黒光りした甲殻に一瞬びくりとするものの、すぐに那珂は違和感に気付いた #アイドルの品格

2014-11-19 02:46:02
深海さかな @dzurablk_kai

人1人ほどはあるはずの駆逐イ級を、中型犬ほどにまで小さくしたような姿は、丸っこくしたカブトガニ、とでも言えばわかりやすいだろうか 金目鯛のように大きく目立つ瞳は無く、エビのような黒く小さい複眼がちょこんと甲殻についている どうやら、駆逐イ級の子供らしい #アイドルの品格

2014-11-19 02:50:59
深海さかな @dzurablk_kai

最初は遠巻きに見ていた那珂も、次第に好奇心に負けて木の棒でつついたり四方から眺めたり… そうしているうちにイ級が、片方の脚を引き摺っていることに気付いた 「ケガ、してるの…?」 イ級は答えず、ただ黒い瞳で見上げてくる #アイドルの品格

2014-11-19 02:53:44
深海さかな @dzurablk_kai

(いくら敵艦とはいえ、まだこんなにちっちゃいんだし…) 那珂の胸の中で、警戒心が霧消していく 「…食べる?」 宿舎を抜け出す時に当直室からこっそり持ち出した乾パンを差し出すと、イ級は匂いを嗅いでから舌のようなもので表面を舐めだした #アイドルの品格

2014-11-19 02:56:24
深海さかな @dzurablk_kai

(子犬みたい…) 那珂はその様子を見てクスリと笑うと 「…あ、ジャムもあるよ? 那珂ちゃん、ダイエット中だからあげる!」 乾パンの袋に入った小さなチューブのオレンジジャムも乾パンの上に乗せてやる #アイドルの品格

2014-11-19 02:58:10
深海さかな @dzurablk_kai

駆逐イ級がジャムを舐める横で、エリートである水雷旗艦が乾パンをかじるという、奇妙な光景 だが、不思議と那珂には違和感は感じなかった …その日から、那珂と駆逐イ級の奇妙な逢い引きの日々が始まったのであった #アイドルの品格

2014-11-19 03:00:17
深海さかな @dzurablk_kai

深海棲艦は夜行性なので、昼間は茂みに隠しておけばバレる心配は無い そうして怪我が治るまでの間だけイ級の世話をする ある時は週番当直として玄関から、またある時は川内や神通が寝静まってから部屋の窓から抜け出して、那珂は夜な夜な食べ物を運びに行った #アイドルの品格

2014-11-19 03:04:54
深海さかな @dzurablk_kai

「でねー、お姉ちゃんたら私のエビフライ一個取っちゃったんだよー!? 酷いよね!」 イ級と会話を交わしつつ、2人(?)で夜食を摘むうちに色々なことが分かった イ級は何かを食べる前に匂いを嗅ぐクセがあること、那珂が笑うとイ級も短い尻尾を犬のように振ること、 #アイドルの品格

2014-11-19 03:08:45
深海さかな @dzurablk_kai

そして甘ったるいオレンジジャムよりも金平糖の方が好きなことも… 那珂とイ級はさながら、こっそり捨て犬に餌をやる子供のごとく、絆を深めていった… #アイドルの品格

2014-11-19 03:14:47
深海さかな @dzurablk_kai

…だが、そんな日々も長くは続かなかった #アイドルの品格

2014-11-19 03:24:04
深海さかな @dzurablk_kai

「あ、那珂ーお風呂行こ…あーまた食堂からパン持って帰ってきて!」 「那珂ちゃん、最近間食しすぎなんじゃない?」 「だ、大丈夫だよ!」 #アイドルの品格

2014-11-19 03:25:49
深海さかな @dzurablk_kai

「…那珂さん、最近は積極的に週番してるわよね…」 「ていうか、しすぎじゃない?」 「確かに、あそこまで行くとちょっとね… 4水戦の旗艦業務も私ばっかり回してくるし…」 「それどころか5水戦も大迷惑よ」 #アイドルの品格

2014-11-19 03:27:59
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