@miki0w0 「さん、なんて他人行儀な呼び方、やめてください。私達は、姉妹なんですから」照れ臭そうに、嬉しそうに榛名が言う。霧島はドロップされ、今日この鎮守府にやってきたばかりだが、何処と無く思い出すものはある。姉妹の思い出は、その一つだ。「わかったわ、…榛名」「はい」
2014-11-24 01:03:38@miki0w0 「それでは、これからまずは、霧島の部屋に案内したいと思うんですが…もし、霧島が嫌でなければ、私の部屋にどうですか?」「榛名の?」「二人部屋なんですが、今丁度空いているんです」「そりゃあ、貴方が構わないならお願いしたいけれど…」「じゃあ、私の部屋に」
2014-11-24 01:06:03@miki0w0 部屋に着くまで、他愛も無い話をした。と言っても。ドロップされたばかりの霧島にできるのは榛名の話に相槌を打つくらいのものだ。それまでの間に、ふと霧島は一つの疑問を口にした。「ここには、金剛お姉様や比叡お姉様は?」「金剛お姉様は、いらっしゃらないんです」
2014-11-24 01:08:35@miki0w0 「比叡お姉様は今、新海域を攻略に行っているので近く帰ってらっしゃいますよ」「そうなの」言っている間に、部屋の前までたどり着く。榛名は、胸元をぱたぱたと叩いて、驚いた顔をした。「すみません、霧島!部屋の鍵を忘れてきてしまいました!取ってくるので待っていて下さい」
2014-11-24 01:10:45@miki0w0 言ったそのままに、榛名は今来た廊下をぱたぱたと走って戻っていく。ぽつねんと残された霧島に、できることはない。ぼうっと窓から外を眺めていると、「新入りか?」と声がかかる。ツインテールの重巡洋艦が、廊下の先に立っていた。「本日ドロップされた金剛型四番艦、霧島です」
2014-11-24 01:13:50@miki0w0 答えると、相手は何かを見定めるような目付きで霧島えお見た。「ほう」かつ、かつ、と相手が一歩ずつ霧島に近付く。「ほう、ほう、ほう。あの金剛型の、四番艦とな」「何ですか、一体」値定めするような視線に霧島が憤慨する。眉を顰めたその顔に、相手はニィと笑う。
2014-11-24 01:16:23@miki0w0 「否、悪い悪い。そう怒るでないよ。儂は重巡洋艦、利根と申す。これから会う機会もあるじゃろうて」「はあ…」「して、そなたは今日からこの部屋に?」「はい、姉妹艦の榛名が今鍵を取りに…」「ふむ、そなたはまだ、まともなようじゃな」「は?」霧島が眉をしかめる。
2014-11-24 01:19:35@miki0w0 「老婆心ながら忠告しよう、霧島よ。そなたは、あやつに心を許してはならぬ」「は、はあ?あやつって…」「榛名よ」利根は、低く声を潜めた。「兎のような顔をして、あやつのまこと狼たるや。そなたも金剛型ならば、気を付けよ。少しでも長く、生き長らえたいなら」
2014-11-24 01:22:44「榛名は、大丈夫ですカ?」金剛お姉様はそう言って、よく私の顔を覗き込まれていました。でもそれは、決まって、私が「大丈夫です」と言った後なのです。金剛お姉様は、優しく笑って私に言います。「榛名がとても優しいのは、ワタシが知っていマス」
2014-11-25 01:05:29@miki0w0 「ですが、優しいことと、平気であることは違うのヨ、榛名」お姉様の仰ることは、時々私にはよく理解できないことが多かったように思います。しかし、それを思い出すごとに、私はなんだかとても、暖かい気持ちになるのです。
2014-11-25 01:06:02@miki0w0 本当のことはとても怖いので、私達はそれを口にすることをいつも恐れていました。ですが、お姉様の掌はとても暖かくて、触れられるだけでまるで心が春色に染まるようでした。「覚えておいテ、榛名。ワタシは、榛名のことが大好きですヨ」
2014-11-25 01:06:58@miki0w0 「覚えておいテ、榛名」お姉様が微笑む。硝煙の匂いがする。重油の、嗅ぎ慣れた、とても嗅ぎ慣れた匂い。「忘れないデ」お姉様。金剛お姉様。潮水とヘドロの腐った匂い。大丈夫ですヨ、とお姉様が言う。照準が合わない。提督が手を挙げた。
2014-11-25 01:08:10@miki0w0 「霧島、すみません!…あら、」廊下の向こうから、榛名が小走りにやってくる。それを見て、利根と名乗った重巡洋艦は踵を返し去って行った。「利根さんと、何かお話を?」「自己紹介をしていただけよ」「そう…」言って榛名は取って来たらしい鍵を扉に差し込み、開いた。
2014-11-25 02:14:54@miki0w0 比叡改二が戻ったのは夜も更けてのことだった。執務室から出る比叡を捕まえることができたのは、幸運だったと霧島は思う。比叡は、自分の前に立った霧島を胡乱げに見た。「比叡お姉様、霧島です」「霧島…?」言う比叡は酷く疲弊しているようだった。「本日ドロップし着任しました」
2014-11-25 02:18:18@miki0w0 「…そう」比叡が言ったのは、ただそれ一言のみだった。霧島の横を通り過ぎる姿はとても脆く、触れれば弾けそうな様相を呈していた。きは、それを見送るしかなかった。 比叡率いる第一艦隊はほぼ休みなく出撃しているらしい。しかし、この鎮守府に所属している艦はひどく少ない。
2014-11-25 02:21:17@miki0w0 それはどこか奇妙なように思えた。その中で、霧島に出撃の要請が出ないことも奇妙だった。しかし、霧島が着任したすぐ後に、変化が起きた。金剛が建造されたのだ。
2014-11-25 02:22:44@miki0w0 「Hi,ワタシの可愛いsisters,元気にしてマシタかー?」そう言う金剛は、まるで太陽のようにどこか奇妙な鎮守府に光を与えるように霧島は思った。榛名も大変喜び、何くれなく世話をした。その金剛が惨殺されたのは金剛が建造されて三日後のことだった。
2014-11-25 02:25:57@miki0w0 霧島がその日目覚めると、いつも先に起きているはずの榛名は既に部屋にいなかった。霧島が着任してからは毎朝必ず一緒に食堂に出ていたというのに。仕方なく霧島が身支度を整え食堂に向かうと、そこにも榛名はいなかった。他の艦に聞いて見ても見ていないと言う。
2014-11-25 23:54:00@miki0w0 もしかすると、榛名は金剛を迎えに行ったのかもしれない。霧島はそう思い立った。金剛はどうにも朝に弱いらしく、昨日も寝坊してしまい朝ごはんを食いっぱぐれていた。それを考慮し、榛名は金剛を起こしに行ったのかもしれなかった。しかし、まだ到着していないのは流石に遅い。
2014-11-25 23:56:00@miki0w0 仕方なく、霧島も踵を返した。金剛と榛名を迎えに行くためだ。 金剛の部屋は、一人部屋だ。榛名と霧島の部屋とは棟も違う。比叡もまた、そちらの棟にいるらしい。うろ覚えの階段を上り、金剛の部屋の前に立つ。どこか嗅ぎ慣れた匂いがした。部屋の扉を、ノックする。
2014-11-25 23:59:48@miki0w0 「金剛お姉様?起きていらっしゃいますか?」「霧島?」中から聞こえてきた声は、榛名のものだった。やはり起こしに来ていたのだ。「榛名、お姉様は起きていらっしゃるの?入るわよ」言って、霧島は扉を開けた。 そこに、姉らしきスクラップが落ちていた。
2014-11-26 00:02:13