「ユーレイ・ダンシング・オン・コンクリート・ハカバ」 #2

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「ユーレイ・ダンシング・オン・コンクリート・ハカバ」 セクション2
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ジンジャ・クラブ「ヤバイ・オオキイ」のホールは血生臭い修羅場と化した。非人間的なユーレイテクノのビートに乗って、厳ついメキシコ人のセキュティたちが5人がかりで1人の泥酔サラリマンを止めようと襲い掛かる。顔色の悪いユーレイ・ゴスたちが、それをカブキショウのように取り囲んで見守る。
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この程度の乱闘は、月に1~2度ある。一種の見世物のようなものだ。だが、いつもと違う点がひとつだけ。この泥酔サラリマンは、ネズミ色の背広の上から、くたびれたブラックベルトを巻いているのだった。
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「イヤーッ!」「グワーッ!」サラリマンがくり出すチョップによって、意気揚々と向かってきた1人目のメキシコ人のサイバー調サングラスが割られる。「イヤーッ!」サラリマンは間髪いれず、相手のみぞおちに、内臓がハレツするほどのトーキックを決めた。「グワーッ!」
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「イヤーッ!」「グワーッ!」サラリマンがくり出すチョップによって、意気揚々と向かってきた2人目のメキシコ人の首の骨が折られる。「イヤーッ!」サラリマンは間髪いれず、相手の股間に、股間がハレツするほどのトーキックを決めた。「グワーッ!」
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「イヤーッ!」「グワーッ!」サラリマンがくり出すチョップによって、意気揚々と向かってきた3人目のメキシコ人が死ぬ。「イヤーッ!」サラリマンは間髪いれず、4人目のメキシコ人を殺すほどのトーキックを決めた。「グワーッ!」
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「なんだありゃあ、ロドリゴの野郎、意気地のねえ」セキュリティ控え室では、オムラ・インダストリ製のプラズマ液晶モニタを眺めながら、バンザイ・テキーラとナチョ・スシを交互に口に運び、巨漢のメキシコ人がイガラ声で呟いていた。「生きて帰ってきたら、股間にマリアの刺青を入れてやるぜ」
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「あなたの出番ってことですよ。スコルピオン=サン。何で出動してないんですか」ショウジ戸を開けて、光沢のあるスーツに身を包んだカチグミ・サラリマンが冷や汗をかいて入ってきた。「カラテですよカラテ。あんな奴が殴りこんでくるなんて前代未聞だ。万が一、金持ちの客に被害が出たら賠償問題だ」
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「カラテが何だ」スコルピオンと呼ばれた巨漢は、ナイフでナチョ・スシの海苔巻きを刺し、タールのようにどす黒いショーユに浸してから傷だらけの唇の中へと押し込んだ。「メキシコ重犯罪刑務所で、両手に戦闘用の鎌を持った4人のカラテ野郎に囲まれた時のことだ。オレはまだ当時14歳だったが……」
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「シャーラップ! タイムイズマネー!」カチグミ・サラリマンが切れた。「あなたとあなたのメキシコ人傭兵団を雇うのに、ソウカイヤにいくら払ってると思ってるんですか? 時給にして、ゴメスのそれのゆうに数千倍ですよ?」
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「わかったよ、行きゃあいいんだろ、モモタ=サン」スコルピオンは、2メートル超の筋骨隆々の巨体を揺らして、だるそうに立ち上がった。黒Tシャツからはみ出した両の上腕に、凶悪そうな蠍の刺青が見える。思い出したようにコスタリカ産の葉巻を取り出して、無骨な指で挟んだ。「その前に、火貸せや」
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「それをひと吸いしたら行くんですよ」モモタ=サンと呼ばれた出っ歯のサラリマンは、苛立たしげに金無垢のジッポライターを取り出し、火をつけた。しかし巨漢のメキシコ人は、葉巻を差し出す代わりにバンザイ・テキーラを一気飲みし、口元からスプリンクラーのような勢いで飛沫を噴き出したのだ!
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「アイエエエエエエ!!!」テキーラの飛沫はジッポライターの炎で猛烈な火炎放射に変わり、モモタ=サンを火ダルマに変えた。ナムアミダブツ! これぞ平安時代より伝わる殺人ジュージツのひとつ、カトン・ジツに相違ない! ではこのメキシコ人はもしや……!
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「オレはな、武勇伝を遮られんのが、一番嫌いなんだよ」スコルピオンはTシャツを脱ぎながら、吐き捨てるように言った。「アイエエエエエ!」モモタ=サンは火を消そうと畳の上を激しく転がったが、10秒も経たぬうちに、炙られて大根オロシを添えられたマグロの切身のようにおとなしくなった。
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「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」ホールでは、泥酔サラリマンの大立ち回りが今なお続いていた。だが、彼も無傷ではない。時折メキシコ人のパンチが炸裂し、サラリマンの顔を豆ダイフクのように変形させていた。鼻血の量もおびただしい。おそらく鼻骨が折れているだろう。
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サラリマンは目的地を知っていた。彼は迫り来るメキシコ人を次々となぎ払いながら、ユーレイ・ゴスの大波を掻き分け、北東のキモン・テーブルへと向かうのだった。キモンでは、腰を抜かしたカーディナル・ダークソードとマーシレス・エンジェルだけを残し、他の全員がすでにこの場を逃げ出していた。
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「見つけたぞぉ、イチタロウ」泥酔サラリマンは、肩で息をしながら、カーディナル・ダークソードへと歩み寄る。そして血まみれの手で、震える放蕩息子の左手を取った。「父さんの会社が買収された。父さんはクビだ。退職金は出ないどころか、前のプロジェクトのハラキリをさせられて十億の借金だ」
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「君の本名はイチタロウ? まさかね!」マーシレス・エンジェルは、汚物でも見るような顔でカーディナル・ダークソードを見た。 「そんな名前は知らない! 僕はこんな薄汚れたネズミのことなんて知らない!」カーディナル・ダークソード、イコール、イチタロウは、この世の終わりのように絶叫した。
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「イチタロウ、一緒に帰るぞぉ。借金を返すために、父さんと一緒にサイバー・カラテドージョーを開こう。父さんの家は、三代前までは中国地方でエビを取りながらカラテドージョーをやっていたんだ。このブラックベルトは、江戸時代から父さんの家に伝わる、由緒正しいカラテの証なんだ」
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「お前なんか知るものか!」カーディナル・ダークソードは、紫色の唇をわなわなと震わせながら言い放った。 「イチタロウ! しらを切るのもいい加減にしろ! 父さんはお前のIRCアカウントにログインして履歴を調べて、この退廃的ジンジャ・クラブを突き止めたんだ!」
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「僕のIRCアカウントに、無断でログインした?!」イチタロウはもはや狂乱寸前の状態であった。逆上した彼は、浜辺に打ち上げられたホンマグロのように口をぱくぱくさせながら、胸元に忍ばせたゴシックナイフを震える右手で抜き、己の父親の心臓めがけて勢い良くそれを突き出した。
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「イヤーッ!」「グワーッ!」だが無条件反射的に、サラリマンのパンチが息子の顔面へとしたたかにめりこんでいた。「イヤーッ!」さらに無条件反射的に、内臓をハレツさせるほどのトーキックが、息子のみぞおちに突き刺さった。「グワーッ!」
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血を吐きながら倒れるイチタロウ。カランカランと虚しい音を立て、握っていたナイフが地面に落ちる。「イヤーッ!」サラリマンはネズミ色の背広を脱ぎ捨て、空中に三発ほどパンチを叩き込む型を見せた。それから怪鳥音とともに小さくジャンプし、革靴でナイフを踏みつけ粉砕した。インガオホー!
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「イヤーッ!」興奮したサラリマンは、そのままキモン・テーブルの上に駆け上り、ハカイシ状の椅子に座っていたマーシレス・エンジェルの顔を散々殴りつけた。「グワーッ!」
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2010年12月4日
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