竹熊健太郎「ネットにおける【マイ業界】の可能性

昨晩の田中圭一氏のネット自作販売の話から、既成の業界に直接対抗する以外の、作家の生き残り方について考察してみました。
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竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

田中圭一先生の「うつヌケ」読了。田中先生とはお付き合いが長いのですが、実は鬱に苦しんでいたことは、ご本人からお聞きするまで気づきませんでした。だって漫画家とサラリーマンの二足の草鞋で30年ですよ。こちらは「まさか」でしたが、ご本人は相当に辛かったようです。

2014-12-05 22:22:24
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

「うつヌケ」を発表したnoteという「作品SNS」は、プロアマ問わず作家が自作をアップして、そこにクレジットカード番号を打ち込むだけで作品を購入することができる。ついでに「投げ銭」もできるという面白いサービスです。マヴォでも作品を寄せていただいる藤岡拓太郎さんも参加してますね。

2014-12-05 22:23:30
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

田中先生は私が昔書いた「町のパン屋さんのような出版社takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/p… に影響を受けられたとか。今は自作プレスリリースを「コミックナタリー」に行なったり、今回の自作販売など、漫画家の範疇を超えて「作家でマネタイズ」を完結させる試みに挑戦しています。

2014-12-05 22:28:22
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

田中圭一先生の「うつヌケ」はこちらから。できれば購入してあげてください(1話は無料で読めます)。note.mu/keiichisennsei 作家が出版社を介さずに収益に繋げることは、これまでは同人誌以外にはなかなか難しかったですが、インターネットによって可能になってきました。

2014-12-05 22:31:34
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

田中さんのような知名度のある作家さんが、積極的に同人誌を作ったり、ネットで自作販売を始めたことは、新しい時代の第一歩だと思います。今回noteから初めて購入してみましたが、簡単です。今後はカードを持たない学生さんでも気軽に購入できるようになると、大発展するかもしれませんね。

2014-12-05 22:34:47
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

田中さんの現在の作家活動は「作品企画、取材先へのアポ、場所のセッティング、文字起こし、ネーム、原稿作成、プレスリリースによる広報、Twitter&Facebookによる情報発信、Noteによるマネタイズ」を全部個人でやられているそうです。完全に編集者の仕事までカバーしています。

2014-12-05 22:46:34
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

以上はサラリーマンと漫画家の二足の草鞋を30年続けた田中先生だからこそ可能になっていると思います。普通の作家はこうした作業をフリー編集者に委託することが今後増えるのではないか、と私は予想しています。田中圭一「うつヌケ」はこちらから。>note.mu/keiichisennsei

2014-12-05 22:51:02
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

「業界」は、崩壊しないまでも変質するだろう。既にその萌芽はある。noteのような、インターネットにおける作品の流通販売サービスの普及である。早速田中圭一さんが自作の販売実験を始めている。この流れがどこに行き着くか、見届けたいと思う。

2014-12-06 00:26:20
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

プロになるとは、業界人になることと同義である。以前も書いたが、業界とは商品の製造から流通販売まで含めた「利益回収・配分システム」そのもので、これを独占する者が「プロ」を名乗ることができる。作家は原則フリーランスだが、「業界」に認められることで、利益の配分に預かることができるのだ。

2014-12-06 00:31:17
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

インターネットは、そうした玄人による利益回収・販売システムを素人に解放しはじめた。かつてこれに近いことを始めたのがコミックマーケットであるが、インターネットは、とうとう物理的な「本」の制作・流通・販売を離れて、データのみで決済まで賄えることになってきた。革命が静かに進行している。

2014-12-06 00:37:58
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

映画会社や出版社などのコンテンツ会社は、「コンテンツ’制作部門」と「営業・管理・販売部門」にわけることができます。プロ野球で言うなら「チーム」と「フロント」。いずれも裏方が「売りもの」を支える構図になっていますが、経営が不振になると、真っ先に切られるのは[売り物部門」です。

2014-12-06 12:30:42
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

野球会社はどうして「看板選手」を切り捨てるのでしょうか。それはつまり、いかなる人気選手にも好調不調の波が必ずあり、怪我で戦線離脱せざるを得ない局面があるからです。これは作家にも同じことが言えます。どんな人気作家であっても、スタンプはあり、結果(=人気)が出せない時期があります。

2014-12-06 12:39:12
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

スポーツ選手や小説家・漫画家・音楽家などの才能商売は、「才能と人気」という、あやふやなものに立脚してますので、それで商売するオーナー企業や出版社、音楽会社は、脱落した選手や作家を戦力外通告することで、自分たちのビジネスの安定化を図る構造があります。

2014-12-06 12:47:32
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

残酷なようですが、ビジネスですから仕方がない面があります。なのでプロ野球選手は契約更改時に必死になってフロントと交渉するわけです。スポーツ選手の現役寿命は短いですから、お金は取れるうちにとっておこうと考えるのは当然です。一方の作家・漫画家はもっとシビアな境遇に身を置いてます。

2014-12-06 12:55:46
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

シビアな境遇とは、作家には通年契約という概念がなく(少年ジャンプのみ1年契約)、契約金や原稿料・印税率の交渉も、ほぼ版元ペースで決められてしまうからです。小説家には文芸作家協会があり、保険や年金の積み立てがありますが、漫画家にはありません。そこには「大人の事情」があるのですが。

2014-12-06 13:03:07
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

「大人の事情」を事細かに書いて炎上するのは嫌なので、これはこのくらいに止めておきます。一言で言うなら、作家さんは全員、「自己責任」の度合いが半端なものではないのです。こういう世界で可能な限り長く作家活動を持続したいと考えるなら、作家さんも、もう少し賢くふるまう必要があるでしょう。

2014-12-06 13:10:41
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

現在の商業漫画は「長期連載」が主流である。人気連載を出来るだけながく連載してもらいたいのは、出版社のみならず作家にとってもその方が有り難い。40年前までは連載はだいたい1年で新連載に切り替わったが、新たな連載が前のようにヒットするかはわからないからである。

2014-12-06 13:33:34
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

現在、出版業界は大手4社(講談社・小学館・集英社・KADOKAWA)が全国4000社ある出版界の頂点に君臨している。さらに印刷・取次会社があり、これらがコングロマリットを形成して業界が成立しているのである。しかも「売り物」である作家は外注である。いkらでも取り替えが利くのだ。

2014-12-06 13:43:38
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

翳りが出てきているとはいえ、大手4社を頂点としたヒエラルヒー構造はまだ盤石である。一介のフリーが権利を主張しようにも、なかなかしきれるものではない。欧米のように、作家がユニオンを形成して版元と交渉する例もあるが、日本ではこれが難しい。エージェントが現れ始めたことが希望だが。

2014-12-06 13:49:36
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

組合にしろエージェントにしろ、既にある業界構造の中で、フリーランスがどのように権利を主張するかという話である。ところがここに誰も予期してなかった伏兵が現れた。インターネットだ。インターネットの恐ろしさは、長年業界が培ってきた出版・流通・販売の構造がすべて揃っているところである。

2014-12-06 13:56:58
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

加えて宣伝の力もネットには内在している。これはどういうことか。つまり誰でも「マイ業界」が作れてしまうということだ。かつて作家は、業界に自己を売り込んで「認めてもらう」ことで業界人になることができた。雑誌で連載し、単行本になることで、販売利益のお裾分けに預かる事ができたのである。

2014-12-06 14:00:24
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

@nori65t ですから、手塚治虫先生、’70年代初頭から1989年に亡くなるまで原稿料を据え置いたのです。70年代初頭の2万円と言えば今なら14万円くらい価値でしたが、最後は25000円くらいで、普通のベテランクラスの原稿料でした、手塚先生より高い作家はいくらもいました。

2014-12-07 08:44:04
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

作家が皆「マイ業界」を持つようになったらすごいだろう。売上げはわずかswも収益がほぼ独占できるから、作家個人が生活するぶんには十分な収益が確保できたら、面白いことになるね。既成の出版業界との付き合い方も変わってくる。マイ業界以下の収益しか予想できない仕事は断る事ができるし。

2014-12-07 09:30:54
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

訂正。「わずかswも」→「わずかでも」でした。

2014-12-07 09:37:27
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

ある意味、プロ兼業の同人誌作家の間では、20年も前から似た事例は起きていたと思う。その頃私が仕事をした某エロ本では、作家が皆コミケの仕事を優先することを止めることができなかった。依頼時のくどき文句が、「うちは曲がりなりにも全国誌ですから、貴方の同人誌の宣伝になりますよ」だった。

2014-12-07 09:35:22