灯りの樹の夜 空想の街 春夏秋冬紅茶店

タイトル通りです。タグ、春夏秋冬紅茶店のまとめです。
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佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

#空想の街 #春夏秋冬紅茶店 ご紹介。 店主はアキト。歳は20代後半でブレンドの腕はピカイチだが、色々悩みやすい性格。妻帯者で妻はハルナ。 ハルナは明るく店のマスコット的存在。透明病という幽霊のように体が透けてしまう病にかかっている。

2014-12-12 08:47:14
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

#空想の街 #春夏秋冬紅茶店 春夏秋冬紅茶店では紅茶を四種用意しています。 100グラム、40クルーク。 またカップ一杯でテイクアウトも出来ます。こちらは一杯、5クルーク。 またオリジナル紅茶のブレンドもしています。その際はお声がけをお願いします。

2014-12-12 08:49:26
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

#空想の街 #春夏秋冬紅茶店 紅茶の種類① 春風……日向で干した春薔薇を入れている。甘く、華やかな香り。 夏日……海の街で植えられた薬草が混じっている。体がぽかぽかになり、元気が出てくる紅茶。生姜が入ったような刺激を覚える。

2014-12-12 08:51:33
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#空想の街 #春夏秋冬紅茶店 紅茶の種類② 秋野……秋の野草が入れ込まれた紅茶。心の鎮静作用があり、安眠剤として最適。 冬月……冬の凍てつく空気と月の光にさらした茶葉。飲むと集中力が増す。気を引き締めるときにおすすめの紅茶。

2014-12-12 08:52:36
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時計台のある街に引っ越して一月。以前の店のお客さんから住み心地がいいと聞いて、春夏(ハルナ)と一緒に引っ越してきたが、確かに住み心地がいい。秋冬(アキト)は朝食を食べながら、ハルナを見た。ハルナは蜃気楼のように揺れた。やかんの湯気を監視していた。#空想の街 #春夏秋冬紅茶店

2014-12-12 08:57:59
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ハルナは透明病という原因不詳の病に罹っただけのアキトの妻だ。病状は単純。身体が透けてしまう。同時に食べることも触ることも出来なくなった。泣けなくなった。元から彼女は泣くよりは笑う女ではあったが。「ねぇ。旦那さん。お湯が沸いたよ」#空想の街 #春夏秋冬紅茶店

2014-12-12 08:58:40
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ハルナはやかんの火を止めにいったアキトを横目ふわりとに浮く。そして天井を突き抜けて赤茶色の屋根に腰を落ち着ける。外の人々は寒そうにしている。厚着のコート、生成りのマフラー。アキトはちゃんとクローゼットから出していたっけと小首をかしげた。#空想の街 #春夏秋冬紅茶店

2014-12-12 08:59:37
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アキトは食器を片付けながら、今日の仕事について考える。灯りの樹という不可思議な現象。オーナメントを飾られた本物の灯りの樹やその子株は明後日の夜に光る。街は華やいでいる。夜は盛り上がりそうだ。しかし……。アキトは息をついた。#空想の街 #春夏秋冬紅茶店

2014-12-12 09:00:39
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

ハルナのことがある。離れれば霞のように風で流れて消えてしまうような気がする。夜の営業は取りやめよう。稼ぎ時を見逃すのは惜しいが、しょうがない。ふと、しょうがないという言葉で何度やりたいことから手を引いたのだろうと思った。ハルナの顔が頭に浮かんだ。#空想の街 #春夏秋冬紅茶店

2014-12-12 09:02:09
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#空想覚書 #春夏秋冬紅茶店 一番肝心なことを忘れてた。 春夏秋冬紅茶店は中央区、フォリス橋最寄りにあります。

2014-12-12 09:10:07
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二人で近所にある仕事場に出勤する。外を出歩く人々を見ながらハルナは「寒そうねぇ」とどこか他人事のように言った。彼女は寒さが分からない。何もかもの感覚を失っていた。#春夏秋冬紅茶店 #空想の街

2014-12-12 22:51:36
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アキトは生成のマフラーを見た。目の細かなマフラーはハルナが編んでくれたものだった。少し毛先が解れ始めていた。いずれバラバラになってしまうだろう。そのマフラーの処遇をハルナに聞けなかった。今の彼女にはマフラーは直せない。#春夏秋冬紅茶店 #空想の街

2014-12-12 22:53:04
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バラバラになったマフラーをどうすればいいか。アキトには分からない。捨てるべきなのだろうかと思うと胸が苦しくなる。捨てれば彼女の手に触れられる証が、一つ、なくなってしまうだろう。#春夏秋冬紅茶店 #空想の街

2014-12-12 22:54:21
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仕事場の紅茶店に着くと、売り物の紅茶の葉のチェックをアキトは始めた。ハルナはじっとその様子を見つめる。彼の真剣な姿は好きだった。アキトが頑張っているのを見ると応援したくなる。#春夏秋冬紅茶店 #空想の街

2014-12-12 22:55:37
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アキトがレジのチェック作業に移ると、ハルナはくるくると店内を踊りだした。踊るのが好きだった。感情表現が大きいハルナの最大限の気持ちの伝え方。退屈をつぶすための演舞。夫は気づかない。#春夏秋冬紅茶店 #空想の街

2014-12-12 22:56:17
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ハルナは踊りながら思考する。今日のお客さんはどんな人だろう。この不可思議なことが起こる街では、ハルナの存在もあっさり受け入れられた。不気味がる人はいない。#春夏秋冬紅茶店 #空想の街

2014-12-12 22:56:52
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そして以前と何より違うのは、夫がそばにいる。夫は紅茶について学ぶ研究者だった。忙しい毎日を送っていた。 夫が自分のそばにいるようになったのは。自分のせいだった。#春夏秋冬紅茶店 #空想の街

2014-12-12 22:57:32
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ハルナの血にはエルフと呼ばれるものの血が流れている。その血のせいでハルナの体は肉体がある世界より、魂や心といった手で触れられないものの世界に近かった。#春夏秋冬紅茶店 #空想の街

2014-12-12 22:58:09
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夫がいない日々は不安だった。心細かった。けれどアキトの頑張りを知っていたから応援した。自分の心を殺した。その結果。体はこの世界にいることを拒否した。彼女はいわば精神だけの存在になった。#春夏秋冬紅茶店 #空想の街

2014-12-12 22:58:41
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

大好きな人の夢は究極の紅茶ブレンドを生み出すこと。そのために研究を続けていた。しかし自分の病は彼の夢を殺した。何もできない自分が彼の隣にいる意味を、ハルナは考え込まずにいられなかった。#春夏秋冬紅茶店 #空想の街

2014-12-12 23:00:10
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

アキトが看板をCLOSEからOPENに変える。その途端老女が入ってきた。朝食用の紅茶のブレンドを所望した。アキトが背中を向けてブレンドを始めると、ハルナはほころぶ花のつぼみのような笑みを老女に向けた。#春夏秋冬紅茶店 #空想の街

2014-12-13 10:02:41
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老女がほくほくと笑いながら帰っていくのを見届けると、今度は郵便が届いた。アキトが中身を確認すると、封筒が一通。葉の印が押されていた。見覚えのある印。アキトの息が詰まった。#春夏秋冬紅茶店 #空想の街

2014-12-13 10:03:39
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

ハルナに背を向けて封を切る。やはり手紙の主は「教授」だ。以前の街でアキトとともに研究をした人だ。一瞬その思い出がフラッシュバックした。アキトが研究を諦めた時の心底悲しそうな目を思い出した。#春夏秋冬紅茶店 #空想の街

2014-12-13 10:04:07
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