- eighter_rieko83
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1 ☆☆ 自分でも自分のことを世間知らずだと思っていた。 父も母も普通の人だけど、 株で儲けた叔父が私をすごくかわいがってくれて…。 その叔父の薦めでいわゆるお嬢様学校の私立の女子中・高校にを出た。 大学には男子もいたけど、免疫が無さすぎてほとんど接点はなく卒業。
2014-12-11 20:57:572 ☆☆ 叔父は立ち上げた自分の会社に入社させようとしたが、ずっと好きだった本に携わる仕事がしたくて出版社に入社した。 いざ入社してみると、仕事は楽しいが、周りはおじさまばかりで、またも恋愛とかには縁遠い感じで。 何人か友達はいたが、仕事や結婚で遠くへ行き、なんだか孤独。
2014-12-11 20:58:013 ☆☆ それでも、仕事だけは楽しくて、前にも増して本を読んだり、ついた担当の先生の為の資料集めに協力したり…。 テレビもほとんど見ないので、ますます世間知らずになっていった。 そんな時出会ったのが村上さん。 初めてついた女性作家さんは年も近くて、すごくいい人。
2014-12-11 20:58:064 ☆☆ 初めはその先生の彼氏だと思った。 熱で倒れた先生を簡単に抱え上げて、すごく心配してるのに私にも気遣ってくれた。 その逞しさと優しさに、すごく胸がドキドキして。 それは初めての感覚で、自分の気持ちがよく分からないままにも先生が倒れてるのにって、不謹慎だと思った。
2014-12-11 20:58:105 ☆☆ 電話で振られたって笑った彼。 冗談なのかどうかもよく分からなかったけど…嬉しいような悲しいような複雑な気持ちに。 あ、やっぱり好きだったんだなっていう気持ちと、彼女いないんだっていう気持ち。 先生はかわいくてオトナで頭が良くて真面目、性格もすごくいい。
2014-12-11 20:58:146 ☆☆ 彼がそんな女性が好きだと思うと…無理だ。 私なんか、無理だ。 そう落ち込んだけど、なんか頭から全然離れなくて、先生のお見舞に来たのに、つい彼のことを聞こうとした。 その時、彼がどんな仕事をしているのかを知った。 ますます無理だと思った。世界が違うとはこのことだ。
2014-12-11 20:58:207 ☆☆ それなのに、なんだかワケが分からないままに、どんどん彼との距離が近付いていって…。 敬語やめてほしいとか、連絡してほしいとか。 そして抱きしめられた。 抱きしめられて眠った…眠れなかったけど…。 男の人と手をつないだこともないのに、いきなりそんな展開…。
2014-12-11 20:58:248 ☆☆ あんなにドキドキしたことはなかった。 大事にされてるのはさすがに分かったけど、とにかくどうしたらいいのか分からなくて、先生に相談したら、そのまま彼に気持ちをぶつけたらと言われた。 先生の言う通り…、村上さんならきちんと答えてくれそう…緊張するけど伝えようとを決めた。
2014-12-11 20:58:299 ☆☆ いつものお店のいつもの個室。 村上さんよりも早く着いて、緊張しつつ彼を待った。 「ごめんごめーん」と言いながら個室に入ってきた彼。 顔を見たらまた緊張感が増す。 私とは違っていつも通りの彼が、いつものように料理や飲み物を頼んでくれて、私を楽しませようとしてくれる。
2014-12-11 20:58:3310 ☆☆ 村上「なんか、今日また前みたいに 緊張してへんか?」 ふと話が途切れて、そう聞かれた。 緊張はするけど、正直、早く言って、気持ちを落ち着かせたかった。 ☆☆「あの…私、やっぱり む、村上さんのこと… 好きです…。」 村上「え?お、おん…。」
2014-12-11 20:58:3811 ☆☆ ☆☆「でも、その、私、自分に自信 ないし、喋り方もすぐ直せ ないだろうし、きっと村上さん の思うような…その、」 村上「俺の彼女になってくれへん?」 ☆☆「えっ?!」 村上「好きやねん、☆☆のこと。」 ☆☆「……え……。」
2014-12-11 20:58:4212 ☆☆ 彼が優しい目で、じっと見つめてくれていた。 村上「ごめんな?なんか、俺が 色々その…変なことってゆーか ややこしなるようなこと言うて 悩ましてもうたよな?」 頭が真っ白で声が出ない。 村上「俺が早よ言えば良かってん。 好きやって。」
2014-12-11 22:03:5113 ☆☆ シンプルな告白だった。 村上「大事にするから…。」 ☆☆「…敬語…、」 村上「無理せんでえぇよ。 徐々に慣れたらえぇ。」 ☆☆「よ、呼び方とかっ、」 村上「好きに呼んだらえぇねん。」 ☆☆「・・・・・。」 村上「彼女、なってくれるやろ?」
2014-12-11 22:04:0314 ☆☆ ☆☆「は、はい…。」 なんか張ってた気が、一気にほぐれて、体中の力が抜ける。 座っているのに、クラクラして、両手を床に置いた。 村上「なんや、大丈夫か? また酔うた?気持ち悪い?」 ☆☆「い、いえ!力が抜けて…。」 村上「ふは!もぉ手ぇかかるなぁ?」
2014-12-11 22:04:1315 ☆☆ そう笑って、彼が向かい側から隣に移動してくる。 私の頭を彼の手が撫でる。 村上「ホンマはもちょっとマシな 告白したかってんけど、 おまえがあんなん言うから、 焦ってもぉたやんか。」 ☆☆「す、すみません…。」 頭を上げゆっくり彼の顔を見る。
2014-12-11 22:04:3016 ☆☆ 村上「もぉ、そんなかわえぇ目で 見んなよ…これでも 色々ガマンしてんねんでぇ?」 ☆☆「が、がまん…?」 村上「好きな女が隣で寝てんのに キスもでけへんて、そりゃ もっすごガマンしとるやろ?」 あ…、この前何もせーへんからって…。
2014-12-11 22:04:4417 ☆☆ ☆☆「で、でも、あれは村上さんが 何もしないから泊まっ、」 村上「あんな状態のおまえを 帰せるわけないやろ…あほ…。」 こんなにも優しい“あほ”って…あるんだな…。 撫でていた手が頬に添えられた。 村上「…キスしてもえぇ?」 ☆☆「え…。」
2014-12-11 22:04:5818 ☆☆ 顔がすごく熱い。 彼から目を逸らすことができない。 拒否なんてできるわけがない。 黙って彼を見つめていたら、ゆっくりと近付いてくる彼の顔。 すごく優しく唇が重なった。 私のファーストキス。 遅すぎるファーストキス。 キスって、こんな幸せな気持ちになるんだ…。
2014-12-11 22:05:1419 ☆☆ 村上「おまえ… 目ぇつぶれよ…はは!」 ☆☆「ご、ごめんなさい…!」 初めてのキスが30過ぎてからとか、遅すぎなんだと思うけど、こんな気持ちになれるのなら、待ってて良かったなと思えた。 彼で良かったと思えた…。 彼でしか…なかったんだと、思えた。
2014-12-11 22:05:2920 ☆☆ 彼の腕がそっと私の体を包んだ。 村上「今日から、おまえは 俺の彼女やからな?」 そう確かめるように言って、ちょっとだけ力が入った彼の腕。 自然にそんな彼の背中に手を伸ばした。 そしたらもっとぎゅっとされて…。 耳元で「好きや」って声が聞こえた………………。
2014-12-11 22:05:42