『NASAが○○』のデマを広める、その前に。(『もう一つの地球』編)
- A_nikaichi
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「もう一つの地球」のニュース、半年前のことなのにバイラルメディア起点で再び盛り上がってるみたい。これに関してはバイラルメディアの利点と言えるだろうなぁ。
2014-12-16 13:07:02キーとなる単語、今回だとグリーゼ832cのような固有名詞がある場合、米Googleでそれで検索すればだいたいちゃんとした記事がヒットする(あるいはしない)ので、ソース確認はまだ楽ではある。怪しげな記事に貼ってあるソースは、もう最初から無視した方が手っ取り早かったり。
2014-12-16 09:27:56「NASAの宇宙飛行士」など誤訳も
Gliese 832c astroarts.co.jp/news/2014/06/3… ×NASAの宇宙飛行士 ○豪大学 ×地球っぽい ○液体の水はある可能性があるが誰も20℃近辺とは言ってねえ ってことらしいが…?
2014-12-16 08:25:44原文によれば、発見したのはNASAの宇宙飛行士ではなくニューサウスウェールズ大学の天文学者、液体の水が存在しうる環境ではあるけれど確認はされていない ref.【衝撃ニュース】NASAが「もう1つの地球」を発見したらしい… tabi-labo.com/67583/gliese83…
2014-12-16 12:20:56ちなみに、このニュースは今年の6月に話題になったもの astroarts.co.jp/news/2014/06/3… 目新しいのは主星に近い岩石惑星というところかな?確かに地球には比較的近いけどあんまり意味はないやね.,.
2014-12-16 12:23:32この他にも「NASAの宇宙飛行士」に言及している方はいらっしゃいましたが、記事へのリンクを増やしてしまうので割愛します。
誤訳の検証もしてみました
「情報源」となったのはこちらのニュージーランド・ヘラルドの「半年前の」記事のようですが、お察しの通り「ニュージーランドのメディア」のみが伝えていたわけではありません。当時全世界的に報じられています。
ただし、このNZヘラルドの記事も英インディペンデント紙の記事が元となっているようで、こちらには"One of the most Earth-like planets in the galaxy"という見出しが踊っています。
これらの記事をもとに、TABILABOでどの部分がどう誤訳され広まったのか引用しつつ調べてみました。
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タイトルの『【衝撃ニュース】NASAが「もう1つの地球」を発見したらしい・・・』は、当時のまとめブログ・まとめサイトにも見られた「もう1つの地球」という謳い文句からかと。
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『NASA』はNZヘラルド紙が「宇宙関連の記事」として紹介されているNASAの写真を勘違いした可能性が高いです。
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『地球と同じ環境の』→"Earth-like planet(地球に似た(地球型のという意味で)惑星)"や"could offer some of the most Earth-like conditions seen to date"からと思われます(どちらも同じだとは言っていません)
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「ニュージーランドのメディアが報じた内容」→半年前の記事です(元記事も別の記事から引用されていますし、別にNASAから情報を得たのではありません)
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『地球とほぼ同じ環境の「星」』→前述の通り「"似ている"かもしれない」というだけです。また後にも述べますが、グリーゼ832cのデータをことごとく無視しています。
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『NASAの宇宙飛行士が発見したそうだ。』→実際はオーストラリアのニューサウスウェールズ大学(原文にもそう書かれています)で、『NASA』は前述の通り。
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『宇宙飛行士』については、"astronomers(astronomyに携わる者=天文学者)"の誤訳に加え、元記事にNASAの宇宙飛行士の写真が(先ほども書いた通りに)使われていたからというのもあるかもしれません。
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元記事ではここでグリーゼ832cについて"super-Earth with a mass 5.4 times"と巨大惑星(スーパーアース)であることや"orbiting a red dwarf star every 36 days"と赤色矮星の周りを回っていることなどが述べられていますが、翻訳はされていないようです。(ここがこの後の文章に関係してくるので重要な事項であるはずなのですが…)
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『「Gliese 832c」と名付けられた星は、周辺の惑星環境から受ける光の影響がほとんど地球と同じであり、地表には高温すぎず、低温すぎない液体の存在が確認されている。』→原文ではここは「ハビタブルゾーン("in the habitable or 'Goldilocks zone' in its solar system")」の解説(= "a sweet spot where it is neither too hot nor too cold for liquid water to exist upon the planet's surface")であり、グリーゼ832cの環境についての文章ではありません。
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『周囲の惑星環境から受ける光の影響』というのは前述の「赤色矮星」の文章と、翻訳の為されていないグリーゼ832の恒星系についての文章を混ぜ合わせたものと思われます(ちなみに、ニューサウスウェールズ大の教授の話です)
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またもや翻訳が為されていないのですが、この文章間で、同教授による「もし地球と同じような大気を持つのであれば…」という話や、グリーゼ832cが「今までに見つかった地球に似ている惑星の指標(AstroArtsさんの記事も参照)」で上位に食い込むことなどの話が述べられています。
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『残念ながら』以下、原文では「地球と似ていない環境の可能性も十分にあり得る」という話で大気や温室効果などに触れています。
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『現時点では大気の厚さが地球と比べ大きく厚いため』→『現時点』とは?また「大きく厚い」は「大気の厚さ」に係っているではありません(原文では"as the large mass of the planet(惑星が大きいがために)" "probably has a thicker atmosphere than ours(地球よりも厚い大気を持っているかもしれない)"となっています)
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『その温室効果により突発的に気温が”沸騰”してしまうようだ。』→『気温が”沸騰”』はどうしたらこんな訳が出来るのか不思議ですが、"boiling temperatures"の誤訳だと思われます。原文では"that(前述の大気の厚さ) has led to a runaway greenhouse effect and boiling~"となっており、「突発的」というのも誤訳です。
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『天文学の世界で「16光年」という距離』『地球の眼と鼻の先に同じような「星」が存在していた』→原文では"16 light years away in a galaxy that is 100,000 light years wide"と銀河系の直径10万光年との比較がされています
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『「石を投げれば当る」ほど近い距離。』→元記事(や、インディペンデント紙)のタイトル"a stone's throw away"から。
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『世界中が大きな関心を寄せているようだ。』→半年後にそれを言いますか
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『宇 宙 と つ な が る 、M O V E す る - T A B I L A B O』→繋がらなくていいです(むしろ調べないのなら離れてください)
ここだけに収まってくれれば大したことは無いのですが、
現時点では
「俺的ゲーム速報」「アルファルファモザイク」その他まとめブログなどが後追いし(TABILABOへのリンクを貼りつつ)この話題を扱っていて、「半年前に同じことを記事でまとめた」のにも関わらず、ということになっているようです。