渡邊芳之先生ynabe39の「オーディオは生演奏の再現ではないしそんなこと目指していない,というのも基本的に理解されないことだ。自分はホールで聴く生演奏よりレコードの音の方がずっと好きである。」

「音がいい」とは何か、を考えるのがオーディオ趣味。 「科学が排除しようとするものの方を楽しむ」から「趣味」なの。 by 渡邊芳之
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渡邊芳之 @ynabe39

もともと視覚と聴覚,味覚,触覚,嗅覚などは相互に影響を与え合っているので「同時に見えているのが何かによって音の聴こえが変わる」ようなことのほうが自然なのだと思う。音を聴かせながら匂いを嗅がせたら音の聴こえも変わるだろう。

2014-12-18 04:38:18
渡邊芳之 @ynabe39

それを「視覚の研究なのだから聴覚や触覚や運動の変数は実験室で厳格に統制して視覚だけを研究しよう」と考えたのが心理学の視覚研究で,それに異議を唱えたのがギブソン。

2014-12-18 04:40:10
渡邊芳之 @ynabe39

ギブソンは視覚の実験ではアゴ台などで固定されていた(誤差として統制されていた)頭部や身体の動きも「視覚システム」の重要な構成要素だと考えた。体の動きや眼以外の受容器からの情報もコミコミで「世界が見えている」のが「視覚」だということ。

2014-12-18 04:42:33
渡邊芳之 @ynabe39

味覚と視覚,嗅覚の関係などもっとわかりやすいだろう。病気などで匂いがわからなくなると食べ物はずいぶん味気なくなるそうだし,食べ物を目で見ることなく全て闇鍋みたいになったらおいしくないだろう。

2014-12-18 04:44:29
渡邊芳之 @ynabe39

それを「味覚以外は誤差だから考える必要はないし,味覚が視覚や嗅覚に影響されるのはプラセボ」だというのは学者は(研究のスタンスや目的により)言ってもいいと思うが料理人は言わないと思う。

2014-12-18 04:46:19
渡邊芳之 @ynabe39

ギブソンは視覚は目の機能,聴覚は耳の機能,味覚は舌の機能,というように知覚と感覚受容器を一対一対応で考えること自体を批判したとも言える。

2014-12-18 04:47:53
渡邊芳之 @ynabe39

「料理の味は料理の香りや姿に大きく左右される」ということをわれわれはよく知っているが,それを知ったからといって香りや姿に影響されずに味だけを評価できるようになるわけではないし,味さえよければ香りや姿はどうでもよいとも思わない。

2014-12-18 04:55:05
渡邊芳之 @ynabe39

「人の知覚は測定器より劣っているのではなくて,人の知覚はもともと測定器がとらえるのとは別のものを捉えている」というのがギブソニアンの考え方。

2014-12-18 04:56:14
渡邊芳之 @ynabe39

セレッションSL-6などで「空間の再現」がオーディオのテーマになった時期から世界的なオーディオ趣味の潮流は大きく変わっている。

2014-12-18 05:02:06
渡邊芳之 @ynabe39

まあ「その趣味を共有している人以外からは高い金を出してゴミを買っているようにしか見えない」というのは基本的にあらゆる趣味に共通なので,それは何を言ってもどうにもならないと思う。

2014-12-18 05:06:57
渡邊芳之 @ynabe39

「物理的に原音と比較して再現性の高い音」以外にも「いい音」はさまざまにあるのだ,ということは五味康祐をはじめあらゆるオーディオ評論がオーディオ草創の時代から言ってきたことだが,それが理解できたらすでにその人はオーディオマニアなのだ。

2014-12-18 05:10:37
渡邊芳之 @ynabe39

ただオーディオ趣味を嗤う人の多くも「音楽はいい音で聴いたほうがいい」という価値は多くの場合共有しているように見えるのは面白い。そもそもいい音で聴かなくてもいいのではないか。

2014-12-18 05:14:12
渡邊芳之 @ynabe39

私は以前,オーディオの音をわざわざ1960年代の小さなポータブルテープレコーダー(モノラルのオープンリール)のマイク入力に入れて,そのレコーダーのスピーカーから音を出して「いい音だ」と喜んで聴いていたことがある。

2014-12-18 05:15:55
渡邊芳之 @ynabe39

あるいは小さなトランジスタラジオで聴いたほうが楽しめる音楽もある。そのときにはそのラジオの音が「いい音」なのだ。

2014-12-18 05:19:44
渡邊芳之 @ynabe39

オーディオ趣味とは違うところに「客観的で科学的なよい音」みたいなものがあるという考えの方が幻想ではないかとも思う。

2014-12-18 05:22:37
渡邊芳之 @ynabe39

あと,無駄な金を趣味的に使ってもその品物が持っている見かけ上の実用性でそれがカバーされやすいものとそうでないものがあると思う。前者の典型が住宅や自動車で,後者の典型がオーディオなのだろう。

2014-12-18 05:25:33
渡邊芳之 @ynabe39

私はデジタル音源のビットレートなんかどうでもいいほうで,128KHz以上だったら音源より再生機器の音の方が「聴こえ」には影響が大きいと思う。

2014-12-18 05:28:15
渡邊芳之 @ynabe39

ハイレゾ音源もここのところけっこう聴いているが,たしかによいのだがもともとの録音のよしあしの方が影響がもっと大きいと思う。よい録音を128KHzで聴く方がそうでない録音をハイレゾで聴くよりよい音である。

2014-12-18 05:29:40
渡邊芳之 @ynabe39

それもそうだし私のオーディオのテーマは「どんな音源でも同じような音で鳴らす」ことで,SPでもモノラルでもステレオでもCDでもハイレゾでもメディアや録音方式の差を感じないように追い込んできて今の装置になっている。

2014-12-18 05:31:09
渡邊芳之 @ynabe39

ある意味「何を聴いても音のよいSP盤のように鳴るオーディオ」が自分の理想で,それはかなり実現していると思う。そこではビットレートの違いとかも「感じ取れないようにすべき変数」である。

2014-12-18 05:33:15
渡邊芳之 @ynabe39

ビットレートの違いを敏感に聴き取れるオーディオを目指す人と私のようになんでも同じに聴こえるオーディオを目指す人とでは同じオーディオマニアでも見える世界はまったく違う。

2014-12-18 05:34:25
渡邊芳之 @ynabe39

まあ自分はオーディオマニアというよりレコードマニアなので「あらゆるレコードが一定の水準で鳴る」ことが大事なのである。

2014-12-18 05:35:51
渡邊芳之 @ynabe39

オーディオは生演奏の再現ではないしそんなこと目指していない,というのも基本的に理解されないことだ。自分はホールで聴く生演奏よりレコードの音の方がずっと好きである。

2014-12-18 05:58:24