国際条約から眺めた『戦場のメリークリスマス』

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捕虜たちを集合させる。起き上がることも叶わない者たちまで。龍一所長大尉に歩み寄るのは捕虜たちの長。 pic.twitter.com/BOMjOqewAo

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西洋＞東洋（というか日本）というヒエラルキー意識がここではなお働いている。日本軍の捕虜となったのに、なお上位にある。何しろ虜囚となっても何の恥も感じず、堂々と権利を主張する。下位の者から眺めればまさに恥知らず。

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ここと違う場面でも所長と捕虜長は対立する。

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"I am not required under International Law to furnish the enemy with any information." （国際法の下、敵に自軍の情報を提供しろといわれる筋合いではない）

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"This is not North Africa. We are not Germans! There is no Geneva Convention here." （ここは北アフリカではなく我々はドイツ軍でもない。ジュネーヴ条約なぞ関係ないわ）

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非常に奥の深いやり取りです。原作にはなかったはずです。大島とマイヤーズバーグが組み入れたのでしょう。

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ジュネーブ条約についてはここが詳しい。 ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8…

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＞1864年に赤十字国際委員会 (ICRC) が「戦争時の捕虜に対する扱いを人道的にする必要がある」として提唱し、スイスのジュネーヴで「傷病者の状態改善に関する第1回赤十字条約」（1864年8月22日のジュネーヴ条約）が締結された。

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これはヨーロッパ人がヨーロッパ人のために作った条約ですが、1904~5年の日露戦争のとき、日本もこの条約を徹底遵守してロシア兵の捕虜に危害を加えることはなかった。日本も１９世紀のうちに批准していたから。

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ところで『坂の上の雲』でも描かれたように、日清戦争のときに東郷平八郎がイギリス軍艦を「緊急避難」の法解釈で撃沈し、イギリス乗員は救出したものの清国兵は見捨てた事件があります。

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これによるとicrc.org/applic/ihl/ihl…　当時清国はジュネーブ条約も他の捕虜や戦争負傷者を保護する諸々の条約に批准していなかったようです。だから東郷の措置は一応合法だったようです。

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ドラマでも万国公法の本を確認しながら最終判断するシーンがあります。 pic.twitter.com/M80BV3YL5r

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『戦メリ』から。 "This is not North Africa. We are not Germans! There is no Geneva Convention here." （ここは北アフリカではなく我々はドイツ軍でもない。ジュネーヴ条約なぞ関係ないわ）

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この台詞から浮かび上がるのは、あの戦争が日本にとって、西洋人が西洋人のために作った西洋の内輪のrulesを金科玉条になぜ自分たちが崇めなくてはいけないのかという、ある種の怒りがテーマだったということです。

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そこにですね "I am not required under International Law to furnish the enemy with any information." （国際法の下、敵に自軍の情報を提供しろといわれる筋合いではない）

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と胸を張って捕虜長は返答してしまう。「条約そのものが貴様ら西洋人の一方的な正義ではないか」と所長は問うているところに「条約こそが正義なのだから」と返しては会話にならない。

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西洋＞非西洋のヒエラルキーがこんなところに働いている。

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そのうえこの捕虜長、英語ができる日本陸軍大尉の目の前で、連絡将校ローレンスにこう堂々と言い放つ。 "You spend more time with these Japs than you do with your own men."

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（このジャップどもとつるんでる暇があったら仲間の面倒をみてやったらどうだ）

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平然とJapsって口走る。原作小説でも「所長を挑発する才能に長けた男」と軽蔑的に描写されている。

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どうしようもない国際ヒエラルキー構造。龍一所長が捕虜長に天誅を下そうと決断。 pic.twitter.com/rJTolutdPi

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この怒りパワーが、まわりまわってハローキティ人気に昇華される…という仮説を今温め中。

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西洋中心ヒエラルキー構造への怒りの裏返しとして、日本中心の大東亜共栄圏ヒエラルキー構造が理念として称えられた。