rsbs日誌#40

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　「もう良いぞ！危険だ！」『しかし、此処からじゃ狙いが！』YB35の機長艦娘が叫ぶが、長門は笑ってみせる。「聯合艦隊旗艦長門に、出来ぬ事など然程無い！」あわや直撃弾を貰うかと言うその瞬間…翼面を蹴り、反動で飛び上がると同時にYB35を回避させた長門は…空を舞った。

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#rsbs日誌　両腕に装備した主砲の反動を用いて、彼女は飛び回る。出鱈目で馬鹿馬鹿しく…だが鋭い動きに、飛行空母ヲ級は翻弄され…冬の月を背にして戦女神は微笑んだ。頭部艤装に腕を付きたて、宣言する。「悪いな。眠ってくれ」ドン…！と砲声が一発。爆炎に紛れ再び長門は飛び上がった。

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#rsbs日誌　「残弾は…30もないな。しかし…！」体を捻り、回転させ、時には砲撃の反動で飛び上がり、巧みに弾幕を回避して長門はもう一隻の飛行空母ヲ級へと接近する。恐怖とも絶望とも付かない、しかし覚えた瞳で此方に攻撃を行う姿が見えた。直撃弾が何度も掠る。しかし憶さない。怯まない。

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#rsbs日誌　「その程度の、主砲でぇ！！」両腕の主砲に再装填。艦娘の圧縮主砲に用いられる金属薬莢が排莢され、空に舞いながら月明かりに照らされて鈍い金属色を煌かせる。「長門型の装甲が、破れるものかぁあああ！！」鉄拳と共に、放たれる主砲。轟音と共に爆発する飛行空母ヲ級。

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#rsbs日誌　還るべき空母を失い、右往左往する深海棲艦の艦載機達。ただ静かに自由降下を始める長門が、ぽつりと空の中に居た。「…ああ、これは参ったな。帰る時の事を全く考えていなかった。砲弾も使い切ってしまった事だしどうしたものか…落下傘も、燃え尽きたか」さて如何した物だろう。

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#rsbs日誌　拳で海を突き破るか？いやしかし、無事に海の上に落ちれる保障はない。そもそもこの高度だ。片腕を犠牲にする程度で耐えれるだろうか？嗚呼、小難しい事を考えるのが段々と煩わしく成って来た。参ったものだな。ハッハッハッ。「まさに我侭となってしまったな…許せよ提督」

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#rsbs日誌　だがしかし、こんな状況下においてもまだ死ぬ気は無いのだ。これが。ただ難しい事を考えるのが煩わしいと言うだけで…『ザ…ザザ…長門…！』無線機に、声が走る。何事かと目を開いた。未だ尚、高い空の上で自由落下の旅だ。『艤装を捨てナサイ！HuryyUp!』金剛の声だった。

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#rsbs日誌　「金剛？何処に居る？」『良いから、ハヤク！』言われるが儘に、妖精さんを退避させて、艤装を緊急排除し体を身軽にする。既に半分壊れている様な物だ。惜しむ物ではない。すると、雲の向うから真っ直ぐにやってくる一つの影。それは箒に跨った…金剛の姿であった。「手を！長門！」

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#rsbs日誌　「…っ…ぷははははは！クリスマスの夜に！魔法使いに助けられるか！これは傑作だ！」「笑ってナイで手を伸ばすネー！」「いやぁ、すまんすまん」がっしりと手を掴み、金剛は必死になって力をかけた。見る見るうちに高度は失われていくが…自由落下は緩まり、やがて空に止まった。

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#rsbs日誌　「全くモー…イキナリ飛び出すだナンテ…帝国海軍の超弩級戦艦の姉の一人トシテ驚きましたネー…」「すまんな。だがああでもしなければあいつ等を倒す事は難しかろう？」「確かにそうデスガ…もっと相談してクダサーイ。誰一人として、ワタシは失いたくナイデスヨ？それも、この夜に」

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#rsbs日誌　その時だった。ミシリ…と嫌な音が響く。「「え？」」疑問符をあげた瞬間には、バキリと音が響いた。金剛の箒が重みに耐え切れずに折れたのだ。「Noー！？提督に貰ったワタシのbroomがぁぁぁ！！」「こんな事ってありかぁぁ！？」浮力を失い、再び自由落下を開始する二人。

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#rsbs日誌　先ほどよりも海面はとても近い。落ちても全身骨折に二週間は療養と言う程度で済むかもしれないが、嗚呼最早海面との熱烈なフレンチキッスは回避不可能。長門はゆうるりと過ごす年末年始の時間を諦めたその瞬間だった。シャンシャンシャン…と軽やかな鈴の音が、彼女らの耳を擽った…

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#rsbs日誌　遥か下から、八頭立ての立派な赤いソリがやってくる。それは瞬く間に大きくなって…自由落下をする長門と金剛を見事拾い上げて見せた。柔らかな荷物袋に着地した長門と金剛は突然の出来事にただ呆然とする。高度を上げたソリはまるで辺りを警戒するように一回転の軽やかなロールをした

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#rsbs日誌　「ホーホー。いやぁお嬢さん方、あんな空のど真ん中で何をしておったのかね？」赤いジャケットと揃いのコートを着込んだ、白髭を蓄えたふくよかな体の老人は、ホットチョコレートを片手に飲みながら問いかけた。余りの出来事に、金剛は顔を真っ赤にしてあたふたと驚いていた。

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#rsbs日誌　「私はクリスマスプレゼントを奪おうとする悪い子に眠るよう言い聞かせていたのだ！」えへんとばかりに胸を張る長門に老人は微笑む。「そうかそうか…つまり、お嬢さん方がわしの手伝いをしてくれておる子達なのだね」「ア、アナ…！アナタはSaint Nicholasデスカ！？」

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#rsbs日誌　上ずった声で金剛は問うた。「如何にも。わしはセントニコラス…もといサンタクロースじゃよ。年齢は聞かんでおくれ？何百年も過ごしておるから忘れてしもうた。所で魔女の少女は何処かね？彼女に呼ばれてぶっ飛ばして着たんじゃ。わしのお弁当とプレゼントの補給にのう」

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#rsbs日誌　「アア…！本当の、本物のSaint Nicholasにお会い出来るなんて…私、カンゲキデース！」ほろほろと喜びの涙を流しながら金剛は笑顔を浮かべた。こんな出会い方は想定外の極みであったが、紛う事なき、本物の、それも本家のセントニコラウスと出会えたのだから。

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#rsbs日誌　「む、見えた。あそこの島か！」サンタクロースが喜びの声を上げる。遠く遠く、海の向うに見える小さな島。其処には誘導灯の明かりがチカチカと明滅し、雪が降り積もり、白く輝く島であった。「ではお嬢さんたち、しっかり掴まっておくれ？トナカイ達もお弁当が食いたいと言っておる」

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#rsbs日誌　「無論だとも！サンタクロウスよ、全力で構わん！」長門の声援に彼は頷き、手綱を握った。「さぁ！そうれ行け！風の様に走れ！風よりも早く走れ！ダッシャー、ダンサー、プランサーとヴィクセン！コメット、キューピッド！ドナーとブリッツェン！美味しい干草は目の前だ！」

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#rsbs日誌　彼の掛け声と共に、トナカイは力強く駆け出した。ドンッ！と衝撃波を撒き散らし、瞬く間に加速する。南洋の夜空にシャンシャンと耳に優しい鈴の音と、煌くソリの奇跡を残しながら。「ワーォ…トナカイ達のSpeed…凄いネー…マッハ３０overの噂も納得出来マース…」

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#rsbs日誌　そうして、遠く豆粒の様に小さかった島は瞬く間に近づき…滑らかに減速したソリは雪で出来た滑走路へと着陸した。「ホーホーホー！いい雪じゃな！着陸が気持ちよかった！さぁお嬢さん方、到着じゃよ」満足げにつぶやくサンタクロースに促され、金剛と長門はソリから降りた。

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#rsbs日誌　「貴重な体験、誠に感謝する！中々楽しかったぞ空飛ぶソリは」にこやかに答える長門。そして金剛はもじもじと顔を赤く染めながらはにかんだ。「憧れの…本物のSaint Nicholasに助けて貰った上に会える何て思ってもみませんデシタ。それに、ソリにも乗せて貰って…！」

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#rsbs日誌　「何、その昔困ってる子供を助けた事が何度かあるだけじゃよ。わしは子供が大好きじゃからな。ホホホホ」笑うサンタクロースに、金剛は何度も頭を下げた。「おーぅい。お主ら無事だったかや」サクサクと雪を踏みしめて、魔女の少女…比良坂提督が現れた。「やれ全く、飛び出して」

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#rsbs日誌　「そう言ってやらんでおやり。魔女の少女や。この子達はただ善意で行動したに過ぎんよ」「判って居るが、セントニコラス。この娘らはわしの娘も同義。大怪我でもしたらと気が気でなかったのじゃよ」むぎゅぅ、と小さなその腕で金剛と長門を抱きしめながらに比良坂は呟いた。

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#rsbs日誌　「さておき…ご注文のプレゼントと伝票じゃ。しかと渡したぞ？」比良坂から差し出された分厚い伝票が手渡され、Ju390に積まれた大量のプレゼント箱がサンタクロースの荷物袋に次々に飲み込まれていく。それは大きく膨らんだがしかし、不思議な事にすべてを優しく飲み込んだ。