rsbs日誌#43

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　提督のとある日記。ケース：初めてのおつかい

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　「それじゃぁ行ってくるわ」急造仕上げの桟橋から叢雲は海へと降り立った。ちゃぷりちゃぷりと上下に揺れる感覚が心地良い「にしても提督はん。何してるんやろ。初めての出撃言うのに」同僚の、元黒潮だった少女はやれやれとばかりに呟いた「執務に追われてるんじゃないの？きっと」

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　「おーぅぃ」機関出力を上げて、さぁ出撃するかと思った矢先に声が掛かる。ぽてらぽてらと此方にやってくる姿は比良坂提督の物であった「間に合った間に合った。遅れてすまんのう叢雲や」「別に良いわよ。これっくらい…で、それは何なの？」叢雲が気にかけたのは、円柱状の何かだった

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　提督が片手に持っているそれに叢雲は小さく首をかしげる。金属製のミルクボトル…の様にも見えなくは無い「これか？お前さんのお弁当じゃよ。腹が減ったら食べるが良い」召し上がれ。と言う優しい声と共に差し出され、叢雲はやや驚いた「あ、ありがと…不味かったら承知しないわよ？」

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　「口に合えばよいがのう…ともあれ、行ってらっしゃい」「…ふん。艦隊、出撃するわ」機関が唸りを上げて、叢雲を前へと進める。白波をわだつみに刻みながら彼女は1人、出撃していった。提督と、元黒潮の少女が静かに見送る。ひらひらと手を振って。その日が始めての出撃だった。

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　…――――――…「魚雷、撃て！」威勢よく叫び、叢雲は腕に備え付けられた魚雷発射管を構える。３本の魚雷がボンッ、ボンッ、ボンッ、と撃ち出され航走を開始。近接信管が作動し、炸裂。大きな爆炎と共に敵駆逐艦・イ級の横腹を食い破った。一分と掛からずに轟沈。殲滅を終える。

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　「…ふぅ。これで三匹目…ね」やれやれとばかりに本日の成果を妖精さんにメモして貰う。鎮守府正面海域の深海棲艦の殲滅。それが本日の叢雲の任務であった。とは言っても、一度で殲滅出来る訳でもなく、今後数日間ばかりはこの調子で敵駆逐艦を狩り続ける事になるだろうと考えていた。

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　その時、不意にくぅ…とお腹が鳴った。太陽は天高く昇り、時計の短針も十二の数字を指している。昼時であった「お昼にしましょっか」ぽつりと呟き、叢雲は最寄の小島に上陸する。シートを広げて腰を下ろした。そして手渡された弁当の事を思い出す。果たして中に何が入っているのやら？

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　艤装からわらわらと出てきて体を伸ばす妖精さん達もまた、同じ様な小さな弁当箱を持っていた。艦たる自分に持たされた弁当は、妖精さんにも同じ物が行き渡るのかしら？と不思議に思いながらも叢雲は蓋を開けた。中には４つの容器が納まっていた。凝った作りをしているわね…と呟く。

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　一つはおにぎりと卵焼きと梅干が詰まっていた。二つ目は肉じゃが。豆の緑が目に鮮やかだった。三つ目はカットオレンジと胡瓜。四つ目は味噌汁があった。不思議な事に、肉じゃがと味噌汁はまだとても熱かった。暖かいお弁当が食べられるとは思わず、叢雲は少し喜んだ「頂きます」

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　取り合えず、とばかりに味噌汁に口をつける。優しい味で出汁の風味がよく出ていた。柔らかい豆腐が舌の上でとろけて、ネギのシャキりとした感触が心地いい。悔しい事に美味しかった。イチャモンでも付けてやろうかしらと叢雲は考えて居たが、悔しくも考えを改める必要があるらしい。

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　次は何を食べようか？と悩み、取り合えず胡瓜に手を伸ばす。パリッと良い音が響き、歯応えが美味しい。振られたゴマがプチプチとして、また噛み締めると香ばしかった。塩揉みされたらしい薄い味付けがなんとも言えず、瞬く間に全部食べてしまった。サラダを摘んで胃の調子も高まった。

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　卵焼きとおにぎりに手を出す。出汁巻きらしいそれは強い自己主張をせず、だけどもほんのりと甘くて美味しかった。おにぎりは薄い塩水で握られ、そのまま食べても美味しく、噛み締めるとお米の甘みがどんどん口の中いっぱいに広がり、幸せを噛み締めてる気持ちになった。「何これ…」

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　悔しい事に、どれも美味しいではないか。優しい味付けが叢雲の胃を掴んで離さない。肉じゃがに手を出すと、汁気は無いのにしっかりと味があった。甘く炊いてあるがしつこくなく美味しい。馬鈴薯のホロホロとした食感がなんとも堪らないし、蒟蒻の弾力も心地良い。ご飯が進む。

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　そして梅干を摘めば、酸味が今までの味を洗い流してくれる。味噌汁も、口の中を優しく整えてくれる。あれよあれよと言う間に食べ終えていき、最後に残ったカットオレンジに手を出した。とてもあんまいのだ。甘酸っぱくて爽やかであった。デザートまでも申し分ないお弁当であった。

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　彼女自身は食が細い、と言う程ではないが大食漢でもない。だがしかしこのお弁当はするすると胃の中に吸い込まれていった。心地よい満足感と高揚感に叢雲は気分が良かった。不意に妖精さん達を見たが、彼らもまたとても満足げであった。こんなお弁当なら、悪くないわね…と独り思う。

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　その後僅かな休憩を挟み叢雲は出撃した。午後の戦闘も問題なく滑らかに進み、累計五体の駆逐艦の討伐に成功する。帰還を出迎える提督に「弁当はどうだったかの？」と問われ照れながらも叢雲は答えた「悪くは無かったわよ。…ありがと」そう言いながら、彼女は空の弁当缶を差し出した。

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　「ふむん。叢雲や。食べたいリクエストはあるかい？」桟橋から格納庫までの道すがら、提督はそう問いかけた。夕日の中で暫し叢雲は思案する。そして答えた「色々食べてみたいわ。私、殆ど知らないんだもの」嘘偽りの無い、言葉だったと叢雲は思う。珍しく、素直に成れたのだ。

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　提督のとある日記。ケース：夜の海風

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　「あーもー…寒いなぁー…」愚痴が虚しく風に溶けていく。夜の海は寒く、冷たい。赤色の襟巻きがハタハタと風に靡いていた。護衛艦の甲板に立っていた長良は小さくため息をつく。艤装の加護無くてはこの肌寒さも中々に苦しい物であった。しかし今彼女らは常に待機しなくてはならない。