掌小説語り~自作つぃのべる集16~

自作のつぃのべるのまとめです。 2013年10月分
0
リュカ @ryuka511

ヘッドフォンから溢れる8ビートに身を委ねながら、軽快に絵筆を走らせる。空も風も音さえもキャンバスに写しとる彼の人は、誰からともなく色彩の魔術師と呼ばれる。その絵はキャンバスを越えて具現化し、観る者を惑わし魅了する。 @hmoegi

2013-10-01 23:07:59
リュカ @ryuka511

そこは古い映画館。年代物の映写機がかたかたと鳴り、銀幕にセピア色の映像が映る。初めて観るなのに、懐かしくて切なくなるのは何故だろう。泣き方も笑い方も忘れていた。いつの間にか涙が溢れ微笑が浮かぶ。カタルシスを得た人々を館長は優しく見送る。またいつでもいらっしゃい。 @tlop_23

2013-10-02 21:59:51
リュカ @ryuka511

世界に解決出来ない謎は無いんですよ。青年はカウンター内でグラスを磨き静かに笑む。常連客が持ち込む謎を、僅かな言葉でしかし的確に解決に導く。青年にとって、世界を観察し思考し研究する事は、息をするのと同じくらいに自然な事だった。今宵も彼はカウンターで魅力的な謎を待つ。 @seruvo

2013-10-03 23:25:05
リュカ @ryuka511

ゼンマイ仕掛けのロボットにゴム人形、玩具達は箱を飛び出し行進する。右、左、右、左、たどたどしい歩みを繰り返す。目指すは遥か彼方のベッドにいる小さなご主人様。今日は風邪で寝込んでいるらしい。淋しがってるのではと玩具達は懸命に進む。ベッドを囲む玩具に少年は微笑んだ。 #twnovel

2013-10-04 23:02:02
リュカ @ryuka511

黒ずくめの死神から迎えが来て、黄泉の国へ旅立つ。腕を引く死神の手、後ろ姿、懐かしく感じるのは何故だろう。もしかしたらこの死神は。辿り着いた雲の上の国で、死神は振り返りフードを脱いだ。あぁ、やっぱりあなただったのね。気付かれたかと笑うあなたの顔は、あの頃のまま。 #twnovel

2013-10-05 23:24:15
リュカ @ryuka511

物心ついた頃には生きる為に盗みを働いていた。それがいつしか愉悦へと変わり、盗みに芸術性を演出して世間を騒がせ始めた頃。彼は現れた。刑事達が追い付けない所まで私を追いかけてきた探偵。盗みとは違うスリルに、誰も省みなかった私を的確に追ってくる存在に、私の心は踊った。 #twnovel

2013-10-07 00:14:23
リュカ @ryuka511

曇天模様の空が沈鬱な空気に拍車をかける。主君殺しの大罪。だがあれより他に術なしと判断した末の事、悔いはない。これから世は変わるだろう。それを見届けられない事だけが心残りではある。真っ白な着物に身を包み、目の前の短刀に手を伸ばす。 #twnovel

2013-10-07 22:22:09
リュカ @ryuka511

遠い昔。揺らめく炎を水の呪文で退け、私を助ける為炎の中へ飛び込んできてくれた魔法遣いの青年がいました。名乗る事なく立ち去った彼に胸を打たれ私も魔法遣いを目指したのです。弟子を抱えるまでになった今も彼を忘れた事はありません。叶うならあの時の感謝を伝えたいものです。 #twnovel

2013-10-08 23:14:24
リュカ @ryuka511

恋人を前に彼女の心は狂気と正気の狭間で揺れる。これは確かに愛だと。出会った頃、荒れていた彼は今では優しい。周りはそんなの愛じゃないと言うが今更離れるなんて考えられなかった。こんな愛の形があってもいいと手を取り2人は生きる。 #twnovel かつては犯人と人質。2人の愛は本物か?

2013-10-09 22:10:50
リュカ @ryuka511

雪原に棲む竜は雪の女王に恋心を抱いていた。人間が彼女に近付かないよう、雪原一帯に吹雪を起こす。竜の吹雪は雪の女王の孤立を高め、彼女の憂いを深めた。雪の女王の孤高さを愛する竜は気付かない。 #twnovel

2013-10-10 23:55:36
リュカ @ryuka511

開演のベルと共に辺りは闇に包まれる。幕が上がり上演される演目は滑稽な戯曲、即ち人類の歴史。演者も観客も、終幕を目にする事はないだろう。 #twnovel #twpoem #全滅亡祭

2013-10-11 00:30:52
リュカ @ryuka511

#twnovel 長きに渡り人類は、石油や天然ガスなどのエネルギーを大地から吸い上げ利用してきた。それが地球自身にとってのエネルギーだとも知らずに。やがて地球は、まるで全身の血を抜かれたように全ての力を無くして崩れ、地球上の生命体と共に宇宙の塵と消えた。 #全滅亡祭

2013-10-11 22:23:00
リュカ @ryuka511

「今日はやけにお客さんが多いですね。」すし詰め状態の列車に、車掌は首を傾げながら発車の合図を出した。ゆっくりと列車は動き出しホームを離れていく。車掌が振り返ると、出発したばかりの銀河ステーションは消滅していた。「あぁ、そういう事だったのですね。」 #全滅亡祭 #twnovel

2013-10-11 22:29:12
リュカ @ryuka511

世界の滅びを阻止する為の旅に出るあなたに、純銀の剣を手向ける。ありがとうと微笑むあなた、何も言えず動けない私。本当は、そんな辛く無謀な旅など止めて、一緒にその時を迎えましょうと言いたいのに。 #twnovel

2013-10-12 23:57:39
リュカ @ryuka511

月と語らう深き夜。誰にも邪魔されない不思議で静かな時。しかし、いかに不思議な時間といえど、永久には続かない。東の空に射す光、それはさよならの合図。西へと去る月に手を振る。大丈夫、明るい陽の下でも強くいられると笑う。青い空で白い月が見守る。 #twnovel

2013-10-13 22:35:27
リュカ @ryuka511

ジャンケンに負けて渋々参加した応援団。応援歌作りに皆で悩んだり女子の応援ダンスが可愛いかったり。何か楽しくなってきた。運動会本番、兄貴の学ラン借りて声を枯らす。君が振る赤いポンポンが青空に映えて。団員ハチマチは他の奴より長いけど、君となら交換してもバレないよね。 #twnvday

2013-10-14 21:39:03
リュカ @ryuka511

ひょんな事から警察の捜査に協力し、名探偵と謳われるようになった頃。彼は現れた。黒い外套に身を包み魔術としか思えないやり方で狙った物を奪っていく。悪党でありながら態度は極めて紳士的。刑事と共に彼を追う内に悪党の彼を憎み、また自由快活に生きる彼を秘かに羨ましく思った。#twnovel

2013-10-16 00:20:18
リュカ @ryuka511

チケットを買うと少年はサーカス小屋に入り、ピエロに声をかけた。「申し訳ないけどそんな子は知らないねぇ。」ピエロは首を振る。幼い頃、街に来たサーカス団を一緒に見物した少女はその後姿を消した。行かなきゃと言い残して。あの言葉の意味は何なのか。少年は少女を探し続ける。 #twnovel

2013-10-16 22:27:45
リュカ @ryuka511

魔王の脅威から世界を救うべく賢者達は古文書に従い聖女を召喚した。白き翼の彼女は静かに微笑み賢者達を焼き払う。「古文書を書き換えるなど容易い事。我が王よ、今お側に。」ランプを手に魔王城へ向かう。白翼の聖女の提げるランプの灯火は、彼女に騙された哀れな死人の魂なのだ。 #twnovel

2013-10-17 23:52:48
リュカ @ryuka511

光は強く、見せたくないものまで晒す光に恐怖した。誰も愛すまい、恋すらしないと心に決め闇に身を沈める。ここなら誰もいないと思ったのに、君はそこにいた。私より深い闇を纏い彷徨う君は私を惹き付ける。心の闇、その暗がりで恋をした。手を取り共に堕ちようか、這い上がろうか。 #twnovel

2013-10-18 22:43:06
リュカ @ryuka511

こんな深い闇には誰も来ないと思ったのに、あなたが来た。惹かれ合い、手を取り共に闇を行く。でも共に堕ちる事ではあなたを守れない。だけど私にはそれしか出来ない。光を目指す事だけが正しいの? 闇で生きる事が間違いだと言うなら、正しいことを教えて。 #twnovel

2013-10-19 23:38:20
リュカ @ryuka511

しがない画家の私が、良家の息女に想いを寄せるなど許されなかった。私は断腸の思いで身を引く。せめて彼女の姿を絵に残し傍に置こうと筆をとった。だが、この絵のモデルが彼女だと世間に知られてはならない。 #twnovel 絵画の題名は「幻想的な少女」絵にまつわる悲恋物語は作者の心に眠る。

2013-10-20 21:21:15
リュカ @ryuka511

目が覚めて違和感を覚える。妻の姿が隣に無かった。僕を残して世界は滅びてしまったのだ。噂は真実だったのだと一人ぼっちの寝室で途方に暮れる。 #滅亡お題 @hyuugahikage あいうえお作文との合わせ技です(^^)

2013-10-20 21:56:54
リュカ @ryuka511

「地球は青かった。」有名な宇宙飛行士が残した言葉だが、何故過去形なのか考えた事があるだろうか? 宇宙と地球の時間の流れが異なっているとしたら。彼はもしかしたら未来の地球を見たのかもしれない。そうとは知らず、だが無意識に言葉を発した。滅亡した地球にはただ色彩だけが残る。 #滅亡お題

2013-10-21 21:34:01
リュカ @ryuka511

世界が滅亡するその日、王は自室に籠り臣下に命じた。「儂は滅亡などしたくない!何があっても扉を開けるでないぞ!」祈祷師の真似事をして叫び、恐怖を紛らわそうと壁を殴る。愛する妃の言葉にも耳を貸さなかった王は姫の怯えた声に思わず扉を開けた。だが目の前には闇が広がるばかりで− #滅亡お題

2013-10-21 22:17:05