ラバウル少佐日誌:『艦隊コレクション』α編其ノ後

艦これ二次創作小説です。 一部艦娘のキャラ崩壊・独自設定・過去捏造注意です。
0
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

------鷹の様な目つきをした女が、青い海と空を見つめていた。 (1) #ラバウル少佐日誌

2015-01-12 11:20:52
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

彼女は堅牢なる表情を浮かべていたが、目の色は少しの驚きを帯びていた。 見ているものは、今ここに残った人の営みだ。 かつて彼女の祖父や曽祖父の代に存在し、滅び去ったモノとは違う、 現在だ。 (2) #ラバウル少佐日誌

2015-01-12 11:23:02
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「お前には何が見える?」 彼女を後ろから呼んだのは、 「……これは何なのだろうな、少佐殿」 でっぷりと太った身体を白い詰襟の海軍制服で包み、黒いコートを羽織った男だ。 眼鏡の奥にはやけに眼つきの悪い目が二つ、曇った瞳を宿していた。 (3) #ラバウル少佐日誌

2015-01-12 11:26:04
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「滅びが見えたか?」 おどけた様な、試す様な、不気味な笑みを少佐は浮かべる。 「そっ……それを何故」 「お前と同じ頃に艦娘になった連中は、皆そう言っていたそうだ」 だが、その笑みには何の意味も含まれてはいない。 「『あの方達』には、未来が見えて……」 (4)#ラバウル少佐日誌

2015-01-12 11:32:02
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「見えている者などと、誰の一人もいない」 「では、私が見たアレは、一体……」 「英霊も所詮は人の子。船も所詮は人の子だ。此の世に力の強い者がどれだけいようと、其れ等は神ではない」 何の意味も無い笑みを浮かべたまま、少佐は彼女の一歩前へ進む。 (5)#ラバウル少佐日誌

2015-01-12 11:39:01
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「故に、故にだ長門」 背を向けたまま、少佐は続ける。 「私はわたしが望む限り、戦いを求めたい。私は地獄の鉄火の中に、永劫生き続ける事を諦めるつもりはないのだ」 (6)#ラバウル少佐日誌

2015-01-12 11:42:14
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「その為に、私達を地獄へ道連れにするつもりか。艦娘を、海軍を、日本国民を、……人類を」 「嫌だというのなら、おぞましいと思ったなら、此処で降りるがいい。私の目に適った長門など、お前でなくとも何百でもいる」 ……振り向いた少佐は、下卑た笑みを浮かべていた。 (7)#ラバウル少佐日誌

2015-01-12 11:45:50
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

だが、 「……どういうつもりだ」 長門もまた、不敵な笑みを浮かべていた。 (8)#ラバウル少佐日誌

2015-01-12 11:48:15
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「ならば私は、お前を利用してやろう」 俄かに、少佐の笑みが曇った。 「お前の枯れない野心と蛮勇への欲望の舵を、私がとってやろうと言っているのだ」 「私を都合よく使って、奴等を滅ぼす。そういう事か」 「言い方を変えれば利害の一致だ。悪くないだろう?」 (9)#ラバウル少佐日誌

2015-01-12 11:52:45
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「それがお前の現在から切り開かんとする、明日か」 「ああそうだとも。『長門』が見せた偽りの終の先に、私という人間が見出した人々の営みの続きだ」 強く、決断的な笑みを長門は崩さない。 (10)#ラバウル少佐日誌

2015-01-12 11:58:06
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「面白いな」 暫くの沈黙の後、少佐は薄情な声色でそれだけ答えた。 「どうした?『果たしてそう上手くいくかな』と何時もの提督なら言うところだろう」 「さっき言っただろう。『見えている者などと、誰の一人もいない』と」 珍しく、少佐はその時笑顔を忘れていた。 (11)#ラバウル少佐日誌

2015-01-12 12:04:23
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「お前は元帥閣下の武蔵と違って、つまらない女だな」 「つまらない相手と、ここまでよく喋り続けたものだな」 「今の今までその事実に気付かなかった、私の無能は認めようじゃないか」 先にその場を後にしようと脚を進めたのは、少佐の方だった。 (12)#ラバウル少佐日誌

2015-01-12 12:09:22
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「待て、提督」 「……何だ?」 しかし、長門に呼び止められ、振り向いた少佐は……、 またニタニタ笑いを浮かべていた。 (13) #ラバウル少佐日誌

2015-01-12 12:12:05
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「お前は本当に、戦争が好きなのか?」 「悪いが私は君等とは違うんだ」 少佐はそれだけ言うと、今度こそ彼女の前から去った。 「……少佐、お前は何を考えている」 長門もそれだけ言うと、何事も無かったかのように、また窓の外へと視線を戻した。(終わり)#ラバウル少佐日誌

2015-01-12 12:15:03