ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/12/10

Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 少しだけ昔の話。ある図書館に、女の子の司書がいました。少し、話を聞いてみましょう。「ここには何があるの？」「全部よ！ここにはなぁんでも詰まっているの！」「どういうこと？」「ためしに、『あなたの人生』を読んでみる？」私は遠慮しましたが、あなたなら、どうしますか？

明宏訊 @aliceizer

#twnovel 最後の文字が視界に入った瞬間に、最初の文字に戻ってしまう。こうして、次のページは永遠に開かれることはない。五感は文章を追ってはいるが、一節として理解していいない。いや、理解しようという気概がこの青年には欠けているのだ。あと何時間、これを続けるつもりだろう？

ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

#twnovel 雪割草は名の通り、雪を割って咲く冬の花だ。温もりを知らないで終わる事を不敏に思った子供達は、雪割草を優しく掘り出して植木鉢にいれ、自分達の温かな家に持ち帰った。翌朝、寒さに震える子供達が見たのは、雪景色に変わった部屋と、名の通り雪を割って咲き誇る雪割草だった。

ちゃーち @churchdevil

漫画とアニメが発禁となった未来都市東京では、紙芝居屋さんによる微かな抵抗が行われていた。子供たちは規制人の目を盗んで不定期に現れる紙芝居屋さんの下に集い、優しい絵と暖かい語りを通じて空想の楽しさを学ぶのだった。さあ、今日のお話は。歴史は繰り返す、そんなお話だよ #twnovel

kyo365 @kyo365

【居】 オヤジの親父は戦争で死んだ。一度は戻って来たのに。「もう一度行ってくれる奴は」という上官の言葉に、踏み出したのは親父だけだった。オヤジは親父をモノクロの写真でしか知らない。 「居るだけいいんだ」 俺がオヤジの言葉の意味を知ったのはオヤジの葬儀の日だった。 #twnovel

夢名 七志 @mumei7c

冬らしい寒さ。眼下に夜の川。明りが映る所もあるが、黒くぬめるようだ。この頃には渡り鳥も居ない。猫に似た鳴声で騒ぐ鳥もいた。あの時は明け方に起こされた。盛りがついた猫は赤児のような声を出す。今、冷えた川から聞こえるのは、鳥でも猫でも無い声。川に住む魚は肥えている。 #twnovel

高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕（宝島社文庫）」より発売中 @Takuya11

#twnovel 自動で小説を執筆するプログラムを開発した。キーワードを入力するだけでOK。ネット小説なんてこれで十分だろう。単行本が発売された。売れている証拠にたくさんの感想メールが届いた。読むとみんな同じ文面。返信すると、その返信も同じ文面。しまった！ 読者もプログラムか！

ダ・ヴィンチ・恐山（品田遊） @d_v_osorezan

同僚に「かぐや姫」と陰であだ名されているOLがいる。どんなに美しくわがままな娘なのかと思って会話してみたが、特別美しいわけでも無理難題を押し付けてくるわけでもなく不思議に思っていた。しばらく仕事をして、あだ名の由来がわかった。月のものが来るとすぐ帰るのだ。 #twnovel

@suwazo

#twnovel 人は、私を見ると悲鳴をあげて逃げたり石を投げたりする。でも時々は「やっと会えた」と泣いて喜ぶ人もいる。「何が欲しい？」「足を。地雷でやられたのです」私の体には、腕や足や目や耳や、あらゆるパーツが無数にある。どんどん生えてくるから、乞われたらどれでも分けてやる。

@akihito_i

頭が痛いとウソをついて学校を休んだ。別に嫌いな授業があったわけでもなく、いじめられているわけでもない。ただ……ただ、なんとなくだ。母の胎内にいた時は、こんな感じだったろうかと温かい布団の中で丸くなり、夢と現実の境界線を平均台にして、その上でゆらゆらと揺れていた。 #twnovel

@nyamuru

夕暮れ時、デートを終え、彼女と二人駅への道を歩く。突然、強く手を引かれ、人気の無い路地裏に引き込まれた。「な、何？」驚いて訊ねると「思い出したの」「何を？」「今日、まだキスしてない」そう言うと彼女は猫のような目で僕を見上げる。脳の奥でカチリと何かが外れる音がした。#twnovel

@dorobe56u

#twnovel 十年前に当てた万馬券の余韻にまだ浸っている。それ以来大勝はない。金が無いから競馬を控え目にしている代わりに、一回分の望みが大きくなる。大穴ばかり狙うので当たるはずがない。この一年外してるからそろそろ来るはず、ともはや予想でも何でもない。この十年の思い出が、ない。

@_akausagi_

書けない。全く筆が進まない。いわゆるスランプってやつだ。ネタが浮かんでは消え、文章はまとまらずイライラだけが募る。「スランプをネタに書けばいいじゃない」君は簡単にそう言ったけどさ。なかなか抜け出せないんだぜコレが。その証拠がこの #twnovel さ。

@K_Ichida

#twnovel 長年の夫婦生活の中で妻との関係は冷え切ってしまった。ほとんど会話もない。ある日、家に帰ると珍しく妻の機嫌がいい。にこにこしながら、私に開封済みの封書を手渡してくれた。病院から来た精密検査の結果だった。見なくても内容が予想できて、血の気が引いた。