ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/06/24

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
2
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 王様はバカには見えない服を着ていました。実は詐欺なのですが、バカ認定されるのをおそれて誰も指摘できません。そこへ全裸中年男性が現れました。「王様はどうしてパンツを履いているんじゃ?」王様はこの言葉にひどく感銘を受けました。こうして全裸中年男性が二人になりました。

2012-06-24 00:03:13
くさがみ•R•シン @kusagamirin

#twnovel 路地裏の片隅で、空の牛乳瓶を前に少女が膝を抱えて座っている。ジッとこちらを見つめる瞳。家で牛乳を温めて空の牛乳瓶に入れてあげた。「ありがとう。これで帰れる」笑顔と共に少女は眩い光となった。「私は牛乳の精。お礼にあなたの生涯の健康を保証します。さあ私を飲み干して」

2012-06-24 00:45:39
かなりひこくま @kanarihikokuma

裏切ってしまった恋人へ、彼女は手紙を書いた。謝罪の手紙だったが、相手は封を切らなかった。それは彼女にも分かっていたが。やっぱり手紙を書いた。毎日、書いた。千通、書いた。30年おくり続けた。読まれない手紙は恋文に近づき、日記になった。コピーはとっておいたのだ。 #twnovel

2012-06-24 09:40:04
七歩 @naholograph

雨が続くとなんだか心が錆び付いたみたい。感じない心は体を動かすこともない。だるい。もしかしてこれが鬱なのかな。#twnovel この時期多いんです。錆び付いたのは心じゃなくて体なんですが気づかないんですね。最近のロボットは高性能ですから。梅雨時期の心療内科には錆取りが欠かせない。

2012-06-24 10:05:08
二月大笑 @unpeu_G

人類最後の一人になった。私が死んだその時が人類の滅亡になるわけだがもはや延命は望まない。「樹の種を埋めこんでくれ。私が死んだところにいつか大きな木陰ができるように。」「いいですね。素敵な考えです。私にはそれも叶いませんが。」医療用アンドロイドが笑う。 #twnovel

2012-06-24 12:08:00
tokoya @tokoya

#twnovel 男は悪魔に不死を願った。もちろん悪魔は拒否した。魂が手に入らなくなるからだ。だが男の願いは違った。他の男を不死にして欲しいというのだ。悪魔は了承した。男は歪んだ笑みを浮かべて銃を手に取った。男は満足だった。妻の命を奪った男に、何度でも復讐する事ができるのだから。

2012-06-24 14:30:50
あかね @akane2003

日曜の午後、ほたるちゃんが「おやつよ。カロリー控えめにしておいたわ」って器に入ったアイスをくれた。さすが万能お手伝いロボット。一口食べて「おいしい」って言ったら、「べ、べつにマスターに喜んでもらおうなんて思ってないんだからね」って照れた。口の悪さもいつも通り。 #twnovel

2012-06-24 14:31:53
@tofuhamburg

一面青く塗りつぶしたキャンバスの前で得意顔の彼。何の絵かと聞くと、空と海らしい。彼の言う芸術に私が首をひねっていると、通りがかった長老が一言。「確かに空も海も青かったが、境目くらいは分ったぞ?」本物の空と海を見たことがあるのは、シェルターの中ではもう長老だけだ。 #twnovel

2012-06-24 14:42:51
layback @laybacks

幽霊を集めていた。袋が一杯になると役場に売りにいく。おびきよせるもなにもない。ただ見つけて話を聞いてやるだけだ。最後まで話し終えた幽霊は自ら袋の中に入ってくれる。大人しいものさ。一袋の対価は銀貨二枚。それでおれは安酒を買う。幽霊から聞いた悲しい話を忘れるために。 #twnovel

2012-06-24 14:44:20
tokoya @tokoya

#twnovel 日本のフリーズドライ技術は世界一と聞いていたが、こんなものまで作れるとは驚きだ。熱湯を注ぐだけで簡単に元通りになるのだ。親戚一同が集まる中、私は説明書通りにカップを開け、熱湯を注いだ。3分待つと、懐かしい祖父の声が聞こえてきた。私はカップゴーストのフタを開けた。

2012-06-24 15:00:58
山岡希代美またの名をいがらし玖 @novel_yamaokaya

あらあらあの子はずぶ濡れだ。柳の根元で泣いている。ぼくはその子に自分の傘を差しだした。ぼくは母さんの傘に入れてもらうから。傘を渡して背を向けた時、後ろで「ありがとう」と小さな声がした。振り返ると、そこには雨に濡れた柳の木だけが佇んでいた。 #twnovel

2012-06-24 15:57:16
帆月 @hozuki_1173s

「退屈だから電話した」と告げると、彼は受話器の向こうで笑った。「俺は暇潰し相手か」と、少し困ったような、だけど優しい声で言う。違うよ、と言ったらどうなるだろう。声が聞きたくて、と言えたら。その先が何だか怖くて、私は言えない言葉をしまい込み、彼の言葉を肯定した。 #twnovel

2012-06-24 16:15:04
装飾機関 意匠企画創作室 @nontosh

雨降りに僕は街に出掛けた。車を走らせていると、目に飛び込んでくる風景に違和感を感じた。渋滞ばかりに気を取られ過ぎていた。みんな傘を差していないんだ。どうして誰も。大人も子供も。皆、空を仰いで微笑んでいた。視線の先には八機の飛行船が八角形の巨大な傘を運んでたんだ。#twnovel

2012-06-24 18:09:51
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 日曜の小学校。こだまの子が廊下でかけっこしている。女の子は職員室で友達に電話をする。「~ちゃん、いますか?」「私だけど」母親の声が応える。「電話で悪戯しちゃダメよ」だから日曜日は嫌いだ。女の子はトイレに戻って月曜を待ちわびることにする。#日曜日の花子さん

2012-06-24 19:28:50
birdboiled @birdboiled

#twnovel 日曜日の宵の口。高速バス「月曜日のない街ゆき」乗り場には、長い人の列が出来ている。期待に目を輝かせた子ども、遠くを見つめている少女、やたら煙草を喫う男。そういえば「月曜日のある街ゆき」バスが到着する場所をわたしは知らない。彼らはこの街に、戻ってこないのだろうか。

2012-06-24 20:32:41
しぃとろん @seatoron

段ボールの中にへそくりを隠したつもりだが…箱を開けても、次々に現れる箱また箱。最後に、赤い服の小人が出てきた。「僕の一万円札を知らないかい?」小人はささやくような声で言った。「僕の家に穴が開いて寒かったから、小さく切って穴埋めに使ったよ。とても便利なものだね!」 #twnovel

2012-06-24 20:48:43
@K20M

窓際で思索に耽るKの視線を追うと、古い教会の門前から、長い葬列の続くのが見えた。その葬列の中から、不意に全裸の青年が走り出る。けれど誰も気に留める様子はない。青年は幾度もハレルヤと叫び、恍惚の表情を浮かべながら、大通りを渡って国立公園の深い森の中へ姿を消した。 #twnovel

2012-06-24 21:58:41
内藤みか(作家) @micanaitoh

日曜の夕方、昔の恋人と同じ電車に乗り合わせた。あの人は私を見つめていた。私は行楽帰りで両隣の子ども達は私にもたれて眠ってる。ねえ離婚したこと噂で聞いてるでしょ。ひとりで子どもを育ててるの。私はうつむく。彼もうつむく。お互いに何も言えないまま、次はもう、降りる駅。 #twnovel

2012-06-24 22:20:53
Affair Story @affair_story_s

#twnovel 俺は息を吐いて部屋を見回す。整理整頓がなされ、ゴミも落ちていない綺麗な部屋。一日かけて掃除した甲斐があったというものだと俺は満足する。肩を解しながらソファに腰掛けると、横には『匂い』。俺は鼻を近づけ、「……ファブリーズ吹くか」『匂い』もこくりと頷いた。

2012-06-24 22:24:56
いでゆのまち @ideimachi

「もう、会えないわ」別れの言葉は突然だった。毎夜、夢に現れる彼女。いく月も続いた、不思議で楽しい逢瀬だったのに。理由を聞いても答えず、笑って彼女は消えた。 #twnovel 予感の通り私は目覚めた。病院で、長い眠りから。涙の両親に抱かれながらひとり微笑む。もし彼に、現で会えたら。

2012-06-24 23:14:25
Gabb-- @itisnot

彼女は毎日手紙を書く。「死ね」から始まり「一緒に死にましょう」で終わるラブレターだ。彼女はいつも「死ね」と書くときに緊張している。怖がられないかしら。そう思いながら数百数千の「死ね」を連ねて、最後の一言でようやくほっとする。これはラブレターだと実感して、投函する #twnovel

2012-06-24 23:47:53
ショウ @SHO_Y

他人の心の声が聞こえる俺はある女性に恋をした。理由は心の声が聞こえない唯一の女性だから。付き合い始めてしばらくした時、俺は何気ない疑問を口にした。「どうして俺と付き合おうと思ったの?」彼女は僕の目を見つめ返す。「だって私の心の声が聞こえない人はあなただけだから」 #twnovel

2012-06-24 23:51:46
橘 颯 @so__w

犬矢来に紫陽花の造花。格子戸に掛かる紺染の暖簾。確かな印を確かめ潜った戸口で、話通りに傘を一本渡される。手に良く馴染む、節の滑らかに削れた竹の握り。開けた布地が雫を受け、ほろほろ音を立てる。此処は雨屋。屋内に降り頻く清しい雨音が、乾いた心身へ染みるが儘に任せた。 #twnovel

2012-06-24 23:52:57