山本七平botまとめ/【唯一神と血縁/断章取義②】海外思想をバラバラにして表現を取り入れ権威化したに過ぎない「断章取義」が、伝統的な日本の思想受容のやり方

山本七平・岸田秀の対談集『日本人と「日本病」について』/唯一神と血縁/断章取義/24頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

⑫【山本】ええ。たしかに日本は文化的な衝突というものを最も経験していない国です。 それがなぜか、こうも巧みに近代化らしきことができてしまったところが、実に不思議ですね。

2015-01-25 22:09:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬【山本】たとえば、仏教が来たといっても、都合のいいところしか取り入れてない。 儒教にしても、さかんに唱えるわりに本格的儒教体制をつくる気はない。 革命をやって、日本を解体して、ちゃんと科挙の試験をして士大夫を作るという気はないんですね。

2015-01-25 22:39:01
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭【山本】徳川時代の町人学者の行き方は「断章取義」と言われています。 章を断って義を取る、 つまり原典の文脈をバラバラにして自分に必要なものだけを取るんですね。 石田梅巌…などはその典型で、彼は町人で商家の一番頭で権威がありませんから、聖人の教えにこうあるという形で表現する。

2015-01-25 23:08:59
山本七平bot @yamamoto7hei

⑮【山本】いわば自分の体系を聖人の片言隻句の引用で全てつないでしまう。原典は仏教だろうと儒教だろうと構わん訳で、これはつまり思想を取り入れたという事ではなく、表現を採用して権威化したに過ぎないんです。そのため真の思想的対決には決してならない。面白い事に朱子学の受容もそうなんです。

2015-01-25 23:39:02
山本七平bot @yamamoto7hei

⑯【山本】確かに朱子の正統論は日本に大きな影響を与えて、これから天皇の絶対化が生まれてくる。 同時に浅見絅斎…の『靖献遺言』のようなそれに基づく個人の絶対的規範もできる。 しかしその両者を組織的体系的につなぐ事はせず、それに基づく新しい体制に関しては全く考えていない訳です。

2015-01-26 08:08:59
山本七平bot @yamamoto7hei

⑰【山本】明治以降も大体においてそうでしてね、今度は朱子学的天皇絶対と個人の絶対的規範はそのままにして、その中間に西欧の組織を入れてしまう。 いわば和魂洋才と称して、才だけもらっておく。 これが伝統的な手法なんですよ。

2015-01-26 08:38:57