ストレイトロード：ルート140（10周目）
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Rista_Bakeya
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Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
私達は夜半に辿り着いた集落の片隅で暴風雨をやり過ごした。翌朝、停まった車が地元民に見つかるや、身に覚えのない罵声と石を浴びせられた。集落同士の争いか謎の怪物の猛威か、余所者への嫌悪がそんな記憶に根差すなら私達に打てる策はない。私は車を集落の外へ出し、藍は感情を封じた顔で沈黙した。
2015-01-21 18:45:29
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
式典が始まっても、壇上に並ぶ来賓の椅子は一つ空いたまま。ホールの最後列からでも一人分の空白が目立って見えた。「あなたもああいう席に座ったことあるの」藍が市長の長いスピーチに隠れるように囁いた。私は首を小さく振った。「貴女こそ今後次第では招かれるかと」何故か気に食わない顔をされた。
2015-01-22 19:08:00
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
先日私達を襲った強盗一味と警察との間で乱闘が始まった。斜向かいのアパートの廊下から高見の見物を楽しむ藍こそ彼ら悪人を誘き出した噂の出所だと誰が思うだろう。「この結果を見越してわざわざ煽ったんですか」「借りって利子つけて返すものでしょ？」それは今の状況に当てはめていい表現ではない。
2015-01-23 19:28:36
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
かつて新天地を目指す流民の一団が列を成して荒野を歩いた。彼らが去った後に道が残った。後に大勢の人がそこを往復し、馬車が土を踏み固め、自動車のために舗装が施された。「そしてあの子たちが全部壊した」藍がフロントガラス越しの空を指した。通行を阻む舗装の残骸の上を巨大な翼が旋回している。
2015-01-24 22:15:52
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
「チャンピオンってこんなにいるの？」「長い間行われた競技でしたから」歴戦の猛者たちの肖像が廊下の片側を埋め尽くしていた。藍の背後にある扉を開いた先に、彼らが火花を散らした闘いの舞台がある。しかし肉体のぶつかり合う姿は今や写真でしか見ることができない。「見たかったですか？」「別に」
2015-01-25 22:17:16
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
村で集めた話を整理していた藍が、突然メモを放り投げた。「全然面白くない。嘘つくにしてももうちょっと…」瞬く間に世界を制圧したあの怪物は何者か。政府の公式見解は存在するが、お上の発言を信じない人々は独自研究や憶測を元に論争を続けているという。この村の議論は正解とは程遠かったようだ。
2015-01-26 19:29:30
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
ハイウェイを下りた先で車を停めて休憩していると、藍が無言で後部座席へ移動した。助手席裏に積んだ荷物に用があったらしい。だが彼女は運転席の裏へ移ると、取り出した傘の先端で急に私の脇腹をつついてきた。「どうしました」「反応薄い。つまんない」鏡越しに全部見ていたのが良くなかったようだ。
2015-01-27 19:43:24
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
あの岩山に登ると藍が言い出した時、私は不安を抱いた。だが行かせてみると文句一つ言わずに挑み、驚くことに頂上へ到達した。「早く来て」倍の時間を費やし何とか追いついた先に更なる驚きがあった。山頂らしき岩にひどく錆びついた短剣が突き刺さっていたのだ。「これを一度自分の目で見たかったの」
2015-01-28 19:33:31
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
灯りを消して程なく、窓の外から不気味なさえずりが聞こえてきた。ホテル周辺で噂される得体の知れない声に違いない。昔の人が真夜中の鳴き声から鵺や人狼を怖れたように、今の住民も夜毎震えているという。「例の怪物でしょうか」「ううん、裏の家の小鳥」藍は哀しげに目を閉じた。「助けを求めてる」
2015-01-29 19:14:16
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
140文字で描く練習、496。鵺(ぬえ)。 未知と正体不明を怖れすぎて余計なことを考えてしまうのが人のさが。 みどさん(@middlechronica)からスタートします、いつもありがとうございます。 世界観の問題もあってあまり生かせてない気もしますが、何とか頑張りました。
2015-01-29 19:14:22
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
私達は森の中で出口を探していた。日没を追うように進む途中、木の幹に刻まれた深い傷を見つけた。獣の爪と明らかに違う一本筋は人間の道具による印だろう。「誰かが通った道を記録していったようですね」「そう思わせて誘い込む罠だったりして」藍が指差した先。目立つ印の列が森の奥へと続いている。
2015-01-30 19:10:04
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
140文字で描く練習、497。印。 何を残すか。それは誰に見せるために遺すのか。 夢亜さん(@SakuraKirayami)からのリクエストでした。
2015-01-30 19:10:47
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
車を載せたエレベーターは停止している。積んだ荷物を下ろさない限りは上昇させられないという。しかし藍は後部のドアを開けることを頑なに拒否した。「これを運ばないと意味がないのよ」「申し訳ありません。積載量のリミットが決められているもので」頭を下げた係員に私ができることは何もなかった。
2015-01-31 20:46:50
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
140文字で描く練習、498。リミット。 分割できないお荷物の重量オーバーは、気まずい。 シノサキさん(@shino_666)からいただきました。ありがとうございます。
2015-01-31 20:46:55
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
宿を発つ前夜。旅支度をする私の横で藍はベッドに寝転がり、テレビの中で女の嫉妬が衝突する様子を眺めていた。しばらくしてガラスを割る音と絶叫が聞こえた。「派手な展開ですね」「何の話？」藍が不思議そうに聞き返した。再び見た画面の中には抱き合う男女しかいなかった。「今の音なら隣の部屋よ」
2015-02-01 22:17:56