S-Shibutani パラレル

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あ阿々。 @rainbow_solara

特にやりたいこともない、普通の高校生だったすばる。 窓の外を見ながら何気なく歌っていたところ、音楽の女教師に声をかけられて、次の日から何となく音楽室に通うようになり、ピアノを習い始める。 そして彼女への淡い恋心と憧れから、安易にも音楽教師を目指すようになる→

2014-11-11 15:50:23
あ阿々。 @rainbow_solara

が、そもそもそんな進路の前例がない普通校。 何とか実技試験のない音楽学科を見つけ、滑り込む。 喜んでくれる先生。 高校卒業したら…って告白しようとするけど、結局出来ない。 後悔を抱えたまま、入学した大学。 合格はしたものの、さすがに基礎のない自分には厳しいカリキュラム。→

2014-11-11 15:50:26
あ阿々。 @rainbow_solara

音楽の教職課程は、他の学科に比べて習得単位が多く、実技科目やソルフェージュ、作曲など、今まで目にしたこともない言葉ばかり。 忙しさに翻弄されて、日々が過ぎていく。 どうにか順調に進級し、教育実習の時期が来た。 基本的には自分の出身校へ打診して、行く。 勿論、彼も。→

2014-11-11 15:50:28
あ阿々。 @rainbow_solara

元々音楽課程に進むのが珍しかった母校。 旧知の先生方にからかわれる。 その中に彼女はいた。 もう生徒と教師じゃない。 でも、彼女の薬指には光るものが。 もう誰かのものになっていた。 自分が自分にかまけている間に。 ようやく会えたはずなのに。 しかも、彼女が指導教官。→

2014-11-11 15:50:30
あ阿々。 @rainbow_solara

期待していたはずなのに。 色んな感情を押し殺したまま、何とか実習を終えた。 褒められても、励まされても、残るのは喪失感。 目標を失ってしまった。 授業も減り、時間を持て余す。 でも、無情に時は過ぎて。 彼は母校の音楽教師の職に就いた。 妊娠退職した、彼女と入れ替わりで。→

2014-11-11 15:50:33
あ阿々。 @rainbow_solara

意外にも、女子生徒が寄ってきた。 大学では自分に必死で周りを見る余裕がなかったから、わからなかった。 だけど、何だか面倒で、適当にあしらっていた。 卒業したらもう会うこともない生徒たち。 自分と一緒だった。 そんな時だった。 自分と同じような生徒がいるという。→

2014-11-11 15:50:35
あ阿々。 @rainbow_solara

音楽課程へ進みたいと。 今まで音楽の経験はあまりないらしい。 経験者だろ?と押し付けられた。 面倒くさいと思った。 一生懸命学校のテストとは関係ない楽典や音楽史を学ぶ彼女。 自分もこうだったんだろうか。 そんなことを思いながら指導する。 少しずつやりがいを見出していく。→

2014-11-11 15:50:40
あ阿々。 @rainbow_solara

特別な生徒に、なった。 でも、彼女ももう1年もしたらここを出ていく。 どうにか合格して、卒業の日。 なにか言いたげな彼女を笑顔で送り出した。 それから数年。 彼は音楽室で女子生徒に絡まれながら、歌や楽器の指導を男子生徒にせがまれながら、あの頃よりは充実した日々を送っていた。 →

2014-11-11 15:50:43
あ阿々。 @rainbow_solara

久々に教育実習生が来るという。 科目は音楽だと。 まさか、と思った。 履歴書には、紛れもない彼女の名前。 当日、旧知の先生に囲まれる彼女を少し離れて見つめる。 こちらを見て、笑顔で頭を下げる。 まじで来たんか…。 もう生徒と教師じゃない。 止まっていた時間が動き出した、気がした。

2014-11-11 15:50:46