ニンジャスレイヤー二次創作【クエッション・イン・ザ・クワイエット・ルーム】

Twitterで連載中のサイバーパンクニンジャ活劇、ニンジャスレイヤー( https://twitter.com/NJSLYR )の二次創作作品です。掌編です。
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@rot_alucaje

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2015-02-09 02:28:05
@rot_alucaje

クエッション・イン・ザ・クワイエット・ルーム

2015-02-09 02:28:22
@rot_alucaje

トラッフルホッグの手による報告書がIRC送信されてくると、暗室の中で、ウォーロックは不審げに目を細めた。 その分析内容は、数時間前にサッキョー・ラインの車両上で爆発四散したミニットマンの痕跡である。 1

2015-02-09 02:28:49
@rot_alucaje

ニンジャスレイヤー追跡の任務を負っていた二人は共に返り討ちにあったが、ミニットマンの装備していた発信機により、ダークニンジャが追撃に向かった。 ソウカイヤの中でも最大級の戦力投入により殺害は確実と思われたが、先ほど撃退されたという目撃情報が、ヘルカイトを通じ送信されてきた。 2

2015-02-09 02:29:01
@rot_alucaje

ニンジャスレイヤーは逃走し、ローシ・ニンジャの殺害だけが結果として残った。ダークニンジャは重症を負い、リー・アラキの診断を受けている最中だと言う。 そこへ新たなIRC通知が届いた。ダークニンジャは現在、昏睡状態。また、専用のニンジャソード、ベッピンが破損。修復見込みゼロ。 3

2015-02-09 02:29:17
@rot_alucaje

あれほどのカラテを持つダークニンジャが、万全の状態でこれほどの敗退。信じがたい話である。 ウォーロックがまず疑ったのは、追跡任務を受けた二名であった。彼らが意図的に情報を流し、ダークニンジャを不利な状況へ誘導したのでは? 4

2015-02-09 02:29:57
@rot_alucaje

彼らはかつて、一度組織に裏切られた者である。 今度は逆にソウカイヤを裏切って、キョートやオキナワへ高飛びするために、敢えて組織の混乱を招いたとしたら? 5

2015-02-09 02:30:21
@rot_alucaje

近い将来、自らがソウカイヤを裏切ることを既に決めている彼にとって、今回の件は極めて重点すべきインシデントであった。 本件に対するシックスゲイツ全体の対応、またラオモト・カンの対応を、注意深く観察する必要がある。 6

2015-02-09 02:30:30
@rot_alucaje

いずれにせよ、これは僥倖であった。 ゲイトキーパー級のカラテを持ちながら私意や欲望を全く見せず、人間性の見えないダークニンジャは行動予測が困難であり、危険である。 ソウカイヤという組織の中に彼を疎むものが多い現状、これ以上の殺害チャンスは存在しない。 7

2015-02-09 02:31:34
@rot_alucaje

一方で、ダークニンジャをここまで追い詰めた手法が意図的なものであれば、学ぶべき点は多いにある。 ウォーロックは、イレギュラー要素であるニンジャスレイヤーを利用して、二人がダークニンジャ殺害を目論んだという仮説を立てていた。 8

2015-02-09 02:33:30
@rot_alucaje

仮説の根底には、ミニットマンが組織に対しシニフリ・ジツを隠していたことがあった。これはミニットマンのバイタルサイン観測のデータ異常により発覚したことである。 彼は、これを組織内での上昇志向ではなく、裏切りと結びつけて考えた。 9

2015-02-09 02:36:04
@rot_alucaje

件の二名とローシ・ニンジャとの繋がりを想定した上で、ドラゴン・ドージョーの陣地というフーリンカザン、そしてニンジャスレイヤーの存在が十全に生かされたなら、ダークニンジャのブザマにも納得が行く。 10

2015-02-09 02:38:31
@rot_alucaje

爆発四散の痕跡が偽装であれば、疑念は確信に変わる筈であった。 しかし、報告は彼の仮説を裏切ることとなった。 ニンジャソウル痕跡により、ミニットマンの死亡は確実。シニフリ・ジツを再び用いた可能性も無し。 また、付近にてイクエイションの死亡痕跡も確認。こちらも偽装可能性はゼロ。 11

2015-02-09 02:40:54
@rot_alucaje

(サンシタがリスク回避も考えず、ニンジャスレイヤー殺害報奨に惹かれ先走っただけの、つまらないインシデントだというのですか・・・?) IRCデータをスクロールしていくほどに、ウォーロックの顔には失望の色が濃くなっていった。 その論理タイピングの手が、一瞬止まる。 12

2015-02-09 02:43:04
@rot_alucaje

『ミニットマンの本来の装備に発信機は無し』『使用されたのは、現在オムラの下請けであるスゴミ・エレクトロニクス社の製品』『追跡中に調達したと思われる』 スゴミ社の名前に、彼は覚えがあった。論理タイピングが再開し、イクエイションとミニットマンのリレキショのデータが呼び出された。 13

2015-02-09 02:44:30
@rot_alucaje

ソウカイヤにおいてリレキショは、ただの経歴だけでなく、過去の殺害スコアやケジメ案件などを記録する、最重点データの一つである。 それだけにアクセス権限を持つものは限られているが、当然、ネットワーク監視を業務とするウォーロックは管理者権限を持っている。 14

2015-02-09 02:47:06
@rot_alucaje

彼はイクエイションとミニットマンの、過去の所属組織を呼び出した。 「・・・やはり」 ウォーロックが静かに呟いた。 スゴミ・エレクトロニクス社は、二人がかつて所属していた部隊を所有していた企業であった。 15

2015-02-09 02:48:30
@rot_alucaje

スゴミ社は電子戦争の最中、極めて強力な電波発信装置を製造していたが、競合他社による襲撃を受け、一時は壊滅状態に陥った。 物理と電子の両面からの波状攻撃の中で、人材を使い捨てる形での撤退戦が行われた。 それらは一時マスメディアに批判されたが、やがてオムラにより隠蔽された。 16

2015-02-09 02:51:08
@rot_alucaje

『あのとき、俺たちは・・・トカゲのシッポめいて・・・切り捨てられたんだ』 ジゴクめいて血腥い記憶を、ニューロンから吐き捨てるようなミニットマンの独白が、リレキショの音声記録に残っていた。 17

2015-02-09 02:53:58
@rot_alucaje

ミニットマンにとって、スゴミ社は憎き仇であった筈だ。その製品が、他でもないミニットマンの痕跡から発見された。 おそらくは、アタマ・ストリートの電子部品屋台で手に入れたのであろう。違法な帯域の電波を発するため、現在では生産されていない型番である。 18

2015-02-09 02:56:02
@rot_alucaje

それが何を意味するか思い至り、ウォーロックは眉を顰めた。 パートナーを殺害された怒りが、かつて自らを裏切った企業の品を使わせた。 トカゲのシッポめいて、己の挟持を切り捨て、敵討ちをより確実にすることを選んだのである。 19

2015-02-09 02:56:44
@rot_alucaje

己が死んでもダークニンジャがパートナーの仇を殺してくれると、ミニットマンは無念と安堵を共に抱いて死んだかもしれない。 20

2015-02-09 02:57:23
@rot_alucaje

その結果がこの惨敗である。 己の挟持を捨て、命を捨て、それでも尚、敵を討つことが叶わなかった。 もはやラオモトは彼らの名前も覚えていないだろう。数日もすればリレキショのデータからも、彼らは消去される。 彼らの功績や罪科は、記憶にも記録にも残らない。残るは虚無ばかりである。 21

2015-02-09 02:59:21
@rot_alucaje

それは、己のために組織を切り捨てるウォーロックの意思の行く末を暗示しているように見えた。 22

2015-02-09 03:02:40
@rot_alucaje

「失わぬために、切り捨てること・・・。そうやって、あらゆるものをトカゲめいて切り捨てていったら、最後には、何が残るでしょうね」 細い首が、何らかの感情を示すように、ゆらゆらと揺れる。 「ねぇ、バジリスク=サン」 誰にも聞こえない囁きを、UNIXの動作音がかき消した。 23

2015-02-09 03:04:04