@tricken による「アバター」感想まとめ

アリスインワンダーランドも楽しみですね。
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tricken@暁月6.0済 @tricken

それかー!(笑) RT @orionaveugle: @tricken むしろ『パーンの竜騎士』じゃないかと思いつつ……。

2010-03-03 00:19:18
tricken@暁月6.0済 @tricken

ほんで、映像の話ばっかりもなんなので、巷で色々「うすっぺらい」と評判の『アバター』のストーリーの内容についても、少し話そうかと思います。実は自分、『アバター』の内容が無い、という指摘に対して、多少懐疑的です。というのも、キャメロンはそれなりに構成を考えているところがあるからです。

2010-03-03 00:21:25
tricken@暁月6.0済 @tricken

この『アバター』を中身がない、思想的でない、というなら、そもそも『ダークナイト』だって、同じ視点に立てば中身なんてなかったじゃん、という話になりかねない。そして、『ダークナイト』で思想について語ろうとする人が『アバター』に同じ反応を示さないなら、それは見落としてないか、と思う。

2010-03-03 00:23:17
tricken@暁月6.0済 @tricken

といっても、基本的にキャメロンが映像の快楽を追求するオタクであることは、(庵野秀明が新ヱヴァ破でそうであるように)自明なので、僕が「ちゃんと考えているな」と思ったところを一つ。ビデオログの件です。

2010-03-03 00:25:54
tricken@暁月6.0済 @tricken

先日、6年前の東京電力批判の記事のために、神田敏晶さんが仕事上のアクシデントに遭遇するという話がありましたが、『アバター』中盤でのビデオログの使われ方もまさにそれと類似のモノでした。http://bit.ly/aL5OKw

2010-03-03 00:30:14
tricken@暁月6.0済 @tricken

@orionaveugle 僕は、キャメロンが「クリシェに頼らない」感じでやってるのが、SFファンタジー的なものに浸かってる人間としての責任感みたいなものを感じました。そして、「同じようなイメージでも、表現さえ陳腐でなければ(更新する気概があれば)胸を張っていいんだ、と。

2010-03-03 00:31:50
tricken@暁月6.0済 @tricken

ようするに僕らは、全ての行為をライフログ的に切り取っていくと、「それまでストーリーの都合で割愛してきたような恥ずかしい発現」に満ちあふれたりしているわけですよね。僕がこの1年半書いてきたこのTwitterの諸々の記憶も、いつか僕を致命的に脅かすかもしれないわけで。

2010-03-03 00:33:23
tricken@暁月6.0済 @tricken

発現→発言 /しかし、ここで「世相をよく表してる」みたいな話をしたいわけでもない。そうじゃなくて、「ライフログが他人に使われるようなことが当たり前の状況において、なお英雄的行動をすることは可能か」という懐疑を、そのビデオログの伏線回収できっちり端的に表してるのが巧いわけですよ。

2010-03-03 00:35:14
tricken@暁月6.0済 @tricken

最近鈴木健氏や平野啓一郎氏が「分人(dividual)」という言葉を提言していたりしますが、『アバター』の中では、「英雄的人格」というのが、一度ビデオログの二次利用によって解体されたり、それでもなお後半に統合されたりする。その辺のダイナミズムとプロットがうまく合致してる。

2010-03-03 00:37:03
tricken@暁月6.0済 @tricken

宮崎アニメの影響はどうも濃厚にあるらしいことが周辺の情報ですでに出ているようなので特に言挙げしませんが、僕が宮崎アニメで考えるなら、宮崎アニメの「最初から英雄として完成されている人びと」を『アバター』と直接「似てる」というには、ちょっと溝が大きすぎるようにも感じてます。

2010-03-03 00:41:26
tricken@暁月6.0済 @tricken

また主人公の操る人工ナヴィが、『マトリックス』のような仮想世界に向けたものではなく、あくまで操作者である主人公たちの肉体と地続きであるところに、『マトリックス』の舞台装置ではうまく語れなかった、「自分のものではないが、自分の制御下にあるものにどう責任を取るか」があるように思う。

2010-03-03 00:43:03
tricken@暁月6.0済 @tricken

あと、「結局ナヴィはインディアンだろ?」と言ってしまえる人は、北米大陸におけるネイティヴアメリカンの歴史が『ラストサムライ』における日本の扱いとはまた違うものであることへの想像力が少し足りてないんじゃないか、とも思うんですよね。そこでまたShadowrunの話になるんですが。

2010-03-03 00:44:40
tricken@暁月6.0済 @tricken

僕は(あくまで勝手に)Shadowrunというアナログゲーム(近年FPSでも出ましたが)と『ダークエンジェル』成立の経緯が少し関わってるんじゃないかと思ってるんですが、Shadowrunという近未来世界のテーマは、「魔法が復活して、インディアンが土地を取り戻した」ことなんですよ。

2010-03-03 00:46:06
tricken@暁月6.0済 @tricken

2011年に(マヤ暦の伝説の通り)魔法が復活した後、ネイティヴアメリカンが大いなる精霊の舞い、グレートゴーストダンスを踊ったことで、現アメリカ合衆国の西半分がごっそり大災害(=儀式魔術)で荒らされて、ネイティヴアメリカンがかつての土地を取り戻した、というフィクションです。

2010-03-03 00:47:25
tricken@暁月6.0済 @tricken

1989年には、アナログゲームの一部ではそういう半分政治風刺にもなっている「ネイティヴアメリカンの歴史的復讐」というのは、アメリカの歴史とそこから立ち上が(りう)る思想とを考える際に、重要なものの一つだと思ってます。で、それってたぶん『もののけ姫』と簡単に繋がらない。

2010-03-03 00:49:23
tricken@暁月6.0済 @tricken

もちろん、「これは明らかに『もののけ姫』のアレとアレだなー」っていうところも映像の各所であるんですが。しかし一方で、ナヴィにとっての「第二の尻尾」である三つ編みの先の触手から派生する色々な文化や自然観は、またちょっと違う。

2010-03-03 00:51:26
tricken@暁月6.0済 @tricken

あと、物語構造としても、『もののけ姫』は、色んな思惑によって勢力図が描かれるものの、最終的にはダイダラボッチで一地域がメチャクチャになる。これが宮崎流。ところが『アヴァター』は、アカデミシャンにせよビジネスパースンにせよ、そして軍事バカにせよ、「自分の意志」で事態を招いている。

2010-03-03 00:52:57
tricken@暁月6.0済 @tricken

『アバター』の思想的な部分と、キャメロンのダメオタクぶりがうまく化合してるなと思う部分は、「スカイピープル」たる地球人の三勢力が、「これはステレオタイプだなー」というくらい、(実験)科学/産業/軍事の3キャラの内ゲバで整理されている。これの競り合いに結局残るのが軍事。

2010-03-03 00:55:02
tricken@暁月6.0済 @tricken

(個人的には、「なんでスカイピープルはナヴィの生態系を知るために人文科学と社会科学を招かなかったんじゃい。あ、そうか、それがいかにも「アホでマヌケなアメリカ白人」的な何かなのか、と思った。その三勢力の代表者に一人もアフリカンっぽい人がいないのも、意図的なのかなんなのか。)

2010-03-03 00:57:07
tricken@暁月6.0済 @tricken

(同じ「パンドラ」探検でも、森薫『乙嫁語り』におけるスミス君のようなアプローチでナヴィと渡り合うような発想もなくはないはずなのだが、その辺は言語的な趣味をもつアバター使いのパートナーに回収されてしまっている感じ。まあ、わかりやすいからいいんだけど。以上、余談。)

2010-03-03 00:58:33
tricken@暁月6.0済 @tricken

僕はキャメロンの「結局軍事勢力が政治争いで生き残って、大佐がやったことにほかの地球人がドン引きする」っていう表現が、これ以上なくアメリカ的だなーと思う。宮崎アニメの比喩を引き摺るなら「あー、ダイダラボッチ(=天災)ではなく敢えてムスカ様(=人為)か」みたいな感じですよね。

2010-03-03 01:01:30
tricken@暁月6.0済 @tricken

でまあ、正直大佐軍とナヴィ連合の一騎打ちは、「これはTORGですか」とか「D&DにD20モダン突っ込んだんですか」とか「このマシンは『バトルテック』に『メタルギアソリッド』混ぜただろ!」とか、なんかもうそんな感じ。基本的に全ての戦闘状況がFASAゲーで再現できそう。

2010-03-03 01:04:15
tricken@暁月6.0済 @tricken

でまあ、そんなアナログゲーム脳で観られる映画だったわけですが、僕はふだん、むしろアナログゲームと映像表現は切り分けてみてるんですよね。ゲームデザインという表現はそれ自体が独自な手触りを持っているのであって、映画のマネをしすぎてもダメだと思ってるので。でもねえ……

2010-03-03 01:05:53
tricken@暁月6.0済 @tricken

……繰り返しになりますが、『アバター』は、ここ四半世紀以上、欧米でゲーム文化と共に育ってきた「アメリカン・ファンタジー」的な諸々の表象が、「それらのオタク的な教養を一切知らずとも楽しめるくらいのポップさで提示すべきだ」という決意で作られたような、そんな印象を受けるんです。

2010-03-03 01:08:13
tricken@暁月6.0済 @tricken

僕は、オタク文化に比較的慣れ親しみながら、「アニメ語るならとりあえずガンダムとパトレイバーとエヴァを観ろ」みたいなコミュニケーションがとても苦手なので、それに付随して「いかにもオタク的な表象をベタに褒める」ってのも苦手だったんですね。

2010-03-03 01:09:45