大学に入って、同じ学校だと知り喜んだのは9ヶ月前。高校時代、その美しさに惹かれて視線を向けた先、垣間見た笑顔がずっと忘れられなかった。そんな淡い想いを捨てきれずにいた矢先の幸運。逃すまいと学部が違うことなどものともせずに、猛烈なアピールを仕掛けた。
2015-01-07 00:30:46会ったら絶対話しかけたし、お昼だって何回も誘ったし、一緒に映画行ったし、お菓子も何回かあげたことあるし。ひたすらガン無視を決め込む姿勢にもめげず頑張った結果、今日、お誕生日というこの特別な日に夕御飯をご一緒するに至ったのだ。
2015-01-07 00:31:09女の子が喜びそうな、でも落ち着いたこの店は、12月中旬に彼女の誕生日を知ってから手を尽くして探したもの。勿論これは奢りだし、目の前の潔子ちゃんが手にした華奢なデザインのアクセサリーも含め、誕生日プレゼントだ。食後のデザートを終えた彼女にそう伝えて渡すと、先程の台詞が返ってきた。
2015-01-07 00:33:37「何で、って?」 「だって、夕御飯代も、これも、そんなに安いものじゃないでしょう?」 「ウン、まあ、」 「だから、びっくりした。」 「そっか。」 「彼女さんには、もっと凄いことするの?」 何とか言葉を返して続いた会話は、またしても俺の閉口で終わる。
2015-01-07 00:34:18及川って雑そうに見えて結構律儀だよね、あ、でも岩泉はもっと祝って貰えそう。黙らせた本人は、落ち着いたトーンで穏やかに言葉を紡いでいる。出会った当初に比べて、俺の前での口数が増えて嬉しい限りだ。…違う違う、じゃなくて。これは、もしかしなくても。 「…清水サン、清水サン。」
2015-01-07 00:35:17「何?」 「俺の好きな人知ってます?」 「彼女さん?」 「違うし!てゆーか、今彼女なんていないから!」 「え、そうなんだ。」 うん、やっぱり、そうだ。俺の今までの努力は、全部、空振りだったみたい。…マジでか、あんなに分かり易くしてたのに。
2015-01-07 00:36:16ていうか、ただの女友達にここまで色々する人いないでしょってくらいには頑張ったんだけど。 「及川、」 発言の意図を図りかねた潔子ちゃんが、怪訝な表情でこちらを伺う。そこには、極微量の心配も混ざっていて。現金にも、潔子ちゃんに心配を向けて貰える身分を喜んだ自分がかなり阿呆らしい。
2015-01-07 00:37:07ああもう、こうなったら。 「俺の好きな相手ね、潔子ちゃんだよ。」 「は?」 ぽかん、と形容詞が付きそうな潔子ちゃんの手を、掴んだアクセサリーごと俺の両手で握り込む。眼鏡越しの長い睫毛が飾る、綺麗な瞳をかっちり捉えて。息を、吸って。 「これから一年、俺、改めて頑張るから。」
2015-01-07 00:38:24「ちょっと、手、」 「そういう意味で、意識して。」 「…えっと、」 「返事は、来年ちょうだい。」 さっきまでの俺を再現したみたいに潔子ちゃんが言葉を呑む。9ヶ月かけて、恋愛感情まではいかなくとも、ガン無視状態から微少な心配を貰える関係に進展出来たんだ。
2015-01-07 00:39:22後一年、今まで以上にもっと分かり易く、積極的にすればきっと。 「…分かった。」 多分、気圧されたのと、未だ状況を把握できてないのと。潔子ちゃんは促されるように頷いた。それを聞いて、ほっと一息。よかった。まず、好きでいる権利は得たみたい。
2015-01-07 00:41:59及川「と、言うわけで、これから意識してもらうべく、頑張ってアピールします!!よろしくね!」清水「よく分からないけど、よろしくお願いします。」
2015-01-07 00:47:04大学に入って、同じ学校だと知り喜んだのは9ヶ月前。高校時代、その美しさに惹かれて視線を向けた先、垣間見た笑顔がずっと忘れられなかった。そんな淡い想いを捨てきれずにいた矢先の幸運。逃すまいと学部が違うことなどものともせずに、猛烈なアピールを仕掛けた。
2015-01-07 00:30:46会ったら絶対話しかけたし、お昼だって何回も誘ったし、一緒に映画行ったし、お菓子も何回かあげたことあるし。ひたすらガン無視を決め込む姿勢にもめげず頑張った結果、今日、お誕生日というこの特別な日に夕御飯をご一緒するに至ったのだ。
2015-01-07 00:31:09女の子が喜びそうな、でも落ち着いたこの店は、12月中旬に彼女の誕生日を知ってから手を尽くして探したもの。勿論これは奢りだし、目の前の潔子ちゃんが手にした華奢なデザインのアクセサリーも含め、誕生日プレゼントだ。食後のデザートを終えた彼女にそう伝えて渡すと、先程の台詞が返ってきた。
2015-01-07 00:33:37「何で、って?」 「だって、夕御飯代も、これも、そんなに安いものじゃないでしょう?」 「ウン、まあ、」 「だから、びっくりした。」 「そっか。」 「彼女さんには、もっと凄いことするの?」 何とか言葉を返して続いた会話は、またしても俺の閉口で終わる。
2015-01-07 00:34:18及川って雑そうに見えて結構律儀だよね、あ、でも岩泉はもっと祝って貰えそう。黙らせた本人は、落ち着いたトーンで穏やかに言葉を紡いでいる。出会った当初に比べて、俺の前での口数が増えて嬉しい限りだ。…違う違う、じゃなくて。これは、もしかしなくても。 「…清水サン、清水サン。」
2015-01-07 00:35:17「何?」 「俺の好きな人知ってます?」 「彼女さん?」 「違うし!てゆーか、今彼女なんていないから!」 「え、そうなんだ。」 うん、やっぱり、そうだ。俺の今までの努力は、全部、空振りだったみたい。…マジでか、あんなに分かり易くしてたのに。
2015-01-07 00:36:16ていうか、ただの女友達にここまで色々する人いないでしょってくらいには頑張ったんだけど。 「及川、」 発言の意図を図りかねた潔子ちゃんが、怪訝な表情でこちらを伺う。そこには、極微量の心配も混ざっていて。現金にも、潔子ちゃんに心配を向けて貰える身分を喜んだ自分がかなり阿呆らしい。
2015-01-07 00:37:07ああもう、こうなったら。 「俺の好きな相手ね、潔子ちゃんだよ。」 「は?」 ぽかん、と形容詞が付きそうな潔子ちゃんの手を、掴んだアクセサリーごと俺の両手で握り込む。眼鏡越しの長い睫毛が飾る、綺麗な瞳をかっちり捉えて。息を、吸って。 「これから一年、俺、改めて頑張るから。」
2015-01-07 00:38:24「ちょっと、手、」 「そういう意味で、意識して。」 「…えっと、」 「返事は、来年ちょうだい。」 さっきまでの俺を再現したみたいに潔子ちゃんが言葉を呑む。9ヶ月かけて、恋愛感情まではいかなくとも、ガン無視状態から微少な心配を貰える関係に進展出来たんだ。
2015-01-07 00:39:22後一年、今まで以上にもっと分かり易く、積極的にすればきっと。 「…分かった。」 多分、気圧されたのと、未だ状況を把握できてないのと。潔子ちゃんは促されるように頷いた。それを聞いて、ほっと一息。よかった。まず、好きでいる権利は得たみたい。
2015-01-07 00:41:59及川「と、言うわけで、これから意識してもらうべく、頑張ってアピールします!!よろしくね!」清水「よく分からないけど、よろしくお願いします。」
2015-01-07 00:47:04