「天に願いを」(2)~真相礫『千歳の真意―邂逅編―』~

タイムライン上で繰り広げられる読者参加型艦これ二次創作ストーリー『千の想いを』のその裏側 解編『天に願いを』(2)~真相礫『千歳の真意―邂逅編―』~ 胸のうちに秘めた艦娘たちの願いをここにまとめます。 千の想いを http://togetter.com/li/635166 前← http://togetter.com/li/782180 続きを読む
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第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

【『千の想いを』解編『天に願いを』】 【真相礫『千歳の真意―邂逅編―』開始】 【介入制限:不可】

2014-09-06 19:40:37
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

 気を付け、の姿勢のまま千歳が目線だけを動かす。相手が両肘を着いている職務机の上に置かれた書類はついぞ行われたばかりの検査や試験の総合結果のものに間違いないと踏む。研修終了時に24時間以上に渡って行われる学科・知識の筆記試験や、身体能力及び総合技術を測られた時間が、自然と浮かぶ。

2014-09-06 19:48:21
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

個別に呼び出される事自体は驚きに値しないが、その呼び出した相手は正直予想外であった。個人の職務室にしては無駄に広い空間の中心で、目につく調度品が厳かに豪華であるのを認識する。 久瀬蒼一郎。名だけなら当然知っている。やたらと長い肩書きは、簡単に言うのなら『鎮守府で最も偉い人』だ。

2014-09-06 19:52:43
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

日本政府の一部であり、軍事施設であるので『最も偉い』という概念に当たる立場の特定は難しいが、艦娘という存在に関わる様々なセクションの総括を執り行っているのはこの男である。決して名義や責任を負うだけの存在ではなく、あらゆる分野に於いて発言と行動を伴っている事も研修で教わっている。

2014-09-06 19:57:52
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

研修生時代に何か問題を起こしたわけではない。いや、その程度の事で鎮守府のトップがまだ着任もしていない研修生の相手をするわけがないだろう。成績もほぼ全てを並以上の結果ではあるが『優秀そのもの』と呼べる程好成績でもない。『そのレベルに調整した』のだから。

2014-09-06 20:04:06
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

つまり、御大に目を付けられる理由が無かった。 …ただ一点だけを除いて。

2014-09-06 20:05:48
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

「…私の背後にある掛け軸だが、何と書いてあるか読めるかね」 前置きを挟まずに男が口を開く。低く、重く、決して声量は大きくもないのによく響く声であった。 千歳はやはり瞳だけを動かして男の背後に掛けられた縦長の書面を眺める。

2014-09-06 20:09:35
第十五支援艦隊 千歳 @titosedesu

@15tennryuu ……。 『20万の感謝だクマ。』…です。

2014-09-06 20:12:01
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

千歳の回答に、男は頷きもしなければ表情を微塵を動かす事もなく。 「…ふむ。『今は』見えている、と」 先の問いの時点で確信はしていたので、男の発言の意図を深く追求する事もない。 やっぱりか、程度にしか思いはしなかった。千歳が抱えている問題は、それしか無いのだから。

2014-09-06 20:15:10
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

視力検査の時点では『見えていた』ので、安心していた面もあるのだが、やはり最先端のシステムでの身体検査に引っ掛かる可能性も考慮していたので、驚愕する程ではない。視力に問題がある者は、艦娘には成り得ない。 それでも疑問は残る。 その程度の事でこの男が呼び出しを行う必然性は、無い。

2014-09-06 20:19:11
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

「何か言う事はあるかね?」 問いに千歳は答えない。否、答えようが無かった。 『問題アリ』の理由で書類なり講師の口からなりで、通達してさようならできる事柄である。わざわざ時間を割いて千歳一人と面談を行う理由が全く見えない以上、何が正しい答えなのか彼女の頭脳でも解が見えない。

2014-09-06 20:24:18
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

「質問を変えよう。艦娘になりたいかね」

2014-09-06 20:25:25
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

数瞬に過ぎないが、間を空けてしまった事を千歳は胸中で悔いる。 『なりたいわけではない』事実が彼女の判断を遅らせた。 それでも艦娘にならなくてはならなかった。そうしなければならない理由が、千歳本人…、いや、姉妹にはあったのだ。

2014-09-06 20:28:14
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

「…だろうな」 久瀬の視線が書類に落ちる。書いてある文字列は千歳の位置からでは見えない。 「父親殺しの罪で捕まりたくはないだろうからな」

2014-09-06 20:30:34
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

千歳は一切の反応を見せなかった。 反論はおろか、動揺した素振りも一切浮かべる事もなく、相手の射貫くような眼光を正面から受け止めるだけだ。 「…想定していたのか、それともカマかけだと察したのか、どちらだ?」

2014-09-06 20:33:12
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

今度は即答できた。その回答は即ちカマかけであった場合に対して罪を認める事とほぼ同義ではあるのだが、相手の本意を感じ取った千歳は最適解をこれだと導いたのだ。 幾つかの符号が重なり合わさり、不明だった部分が彼女の中で明確になっていく。 この男は、つまり。

2014-09-06 20:36:53
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

「…いいだろう、気に入った。君は明日から艦娘だ」 検査結果の一部を書き換える事など、容易い事だろう。 「但し、条件がある」 でしょうね。口は動かさずに、目線を横に向ける。 暗褐色のカーテンで隠された窓の向こうの景色は、何色だろうか。

2014-09-06 20:40:07
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

表向きは失踪した事になってはいるが、父親殺しを疑う可能性が姉妹に向けられた過去は、確かにある。 千代田の能力と千歳の頭脳と手腕、更に警察側も本腰を入れて動いていない事実により2人は逮捕や監察保護を逃れたに過ぎない。 逆に言えば、現代の技術で全力で捜査されれば、どうしようもない。

2014-09-06 20:43:30
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

本音を言ってしまえば、その未来を完全に恐怖しているわけでもなかったが。むしろ、それこそが一番救いのある道ではないかとすら、姉は感じている。罪は事実だが、事情も事情でまた真実である以上、過酷な罰が与えられる事もないだろう。 が、それでは千歳の『悲願』は達成されない。

2014-09-06 20:46:27
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

艦娘になるのも、この場で『合意する』のも、全ては彼女の野望の為に他ならない。 最高責任者が淡々と述べていく『条件』を聞き入れた後に、千歳は絶対に確かめなければならない事案を口にする。

2014-09-06 20:50:53
第十五支援艦隊 千歳 @titosedesu

@15tennryuu 千代田の…、妹の安全は保障して下さいますか?

2014-09-06 20:51:28
第十五支援艦隊 天龍 @15tennryuu

「ああ。お前の望むようにしてやろう」 そう。それでいい。 それさえ確約できさえすれば、他に何も望みはしない。 千歳は『主』の前で口を薄く引き延ばし、冷たい微笑を浮かべて見せた。

2014-09-06 20:54:49