ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/12/12

今日読んだついのべの中から独断と偏見で味のある作品をセレクトしてみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短い物語です。
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すわぞ @suwazo

#twnovel 勇者「今日こそお前を倒す!」魔王「まあ待て。私はお前を気に入っている。世界の半分を与えても良い程に」勇者「馬鹿を言え」魔王「本気だ。既に世界の半分をお前の名で侵略しかつ支配している」勇者「えっ」魔王「そこではお前の名は既に魔王として鳴り響いている」勇者「えっ」

2010-12-12 00:11:57
添嶋譲 @literaryace

原稿を落とす寸前、早朝のレストランのすみで必死でキーボードをたたく。やっとつかんだ連載。切られてたまるか。気がつくと頼んでもないのにコーヒーが。「○○先生ですよね。大好きなんです。夢中で読んでたらこの前も遅刻しちゃって」その瞬間、魔法のように話が降りて来た。 #twnovel

2010-12-12 00:24:31
伊久新之助(いくしんのすけ)@GooglePlusRefugee @nattosansai

夜の散歩の途中に長い階段を見つけ、上りつめる。神社。私は奇妙に落ち着き、軒先で眠りこけた。気がつくと既に昼。私はいつか埋めた菓子の空き缶を思い出した。掘り返すと、当時付き合っていた二人の署名と「一緒に開ける」との封印が。私にはその魔法を解くことはできなかった。 #twnovel

2010-12-12 00:32:56
秋月蓮華 @akirenge

夜中の音楽室からピアノの音色が聞こえる。「幽霊が弾いてるって、本当?」他校の校舎の前で相方が聞いた。「そうだ」「凄いね」それは、人間では奏でられない複雑な音の重なり。霊感少年は素っ気なく言う。「だから演奏者は死んで幽霊になったんだろう。人間だと弾けないからな」 #twnovel

2010-12-12 02:45:16
layback @laybacks

改札の近くで女の子は泣き出しそうな顔をしていた。その正面で男の子は所在なさげに立っていた。別れ話だな。すぐに思った。自分たちもあんな風に見えていたのだろうか。神様。今夜大切な人を失うのは一人だけでいいよ。人のまばらなホームで僕は、携帯のメモリーをひとつ、消した。 #twnovel

2010-12-12 03:18:27
あまたす @amatasu

昔、物書きが万年筆を好んで使ったのは、万年筆が彼らの「書き続ける」という宿命そのものだったからだ。万年筆は、書き続けるのが最良の手入れ。怠れば、インクはすぐに固まる。まるで想像力みたいにね。だから彼らは、高価な軸とペン先で、自分の想像力を他人から守っていたのさ。 #twnovel

2010-12-12 04:07:52
泥辺五郎 @dorobe56u

#twnovel 見覚えのある雪が降る。同じ場所で同じ人と、結晶の美しさも寸分違わぬ雪を見る。生まれなかった僕達の子供が、積もった雪の上を駈けている。かつて妻であった女が子供に笑いかけている。その光景が現実でない事に僕だけが気付いている。やがて雪は豪雪となり、僕の方がかき消える。

2010-12-12 07:22:35
伊久新之助(いくしんのすけ)@GooglePlusRefugee @nattosansai

#twnovel 冬の間、平日の朝に毎日シフトに入っていたあなたは、学校を卒業されたのですね。僕が毎朝、このカフェに通っていたのは、いつか、僕に忘れものの手袋を届けてくれた、あなたに会うためだったのですよ。3月の日差し。エスプレッソに溺れる。

2010-12-12 07:47:50
tokoya @tokoya

#twnovel アナログTV放送の終了を間近に控え、人々が次々と地デジTVに買い換えても、男は何もしようとはしなかった。そしてついにその日がやって来た。男は晴れ晴れとした表情で、こう呟いた「やっとこれで溜まった録画を消化できるぞ」。男の家には、残り一生分の番組ストックがあった。

2010-12-12 08:17:32
ジュン @jun50r

#twnovel 火災で滅んだ都市から男の遺灰をみつけた。傍らの石板には恋人への求婚の言葉が刻まれている。考古学者として許されざる事だが、私は男の恋人を見つけ出し、男と引き合わせた。二つの灰は混じり合い、もうどちらとも分からない。石板の文字を読みあげる。「灰となっても君と共に」

2010-12-12 11:40:41
@K_Ichida

#twnovel 生命を持たない物体にも意識と記憶があることがわかった。意識といっても好き嫌いくらいの単純なものだ。石や土から記憶を取り出せれば宇宙の起源に迫れる。研究者は色めきたった。しかし研究の結果、不可能だとわかった。「石や土は人間を嫌いだから協力したくないそうです」

2010-12-12 12:34:40
ショートショート @shortxshort

#twnovel 結婚が決まった私は、母に料理を習うことにした。「ママ、これ塩多すぎない? それに油でギトギトだし・・・。毎日こんなのじゃ彼が早死にしちゃうよ」「あら、ごめんなさい。でも覚えておいて損はないわよ」

2010-12-12 12:49:21
layback @laybacks

アンドロイドフォンは彼の声だけでなく、体温や息遣い、心拍まで伝えてくれる。常に彼の端末と同期し続けていてくれるのだ。今夜も私は愛する人の温もりを頬に感じながら眠りにつく。忘年会に参加している彼がどうか飲み過ぎませんように。朝目が覚めるとほんのりゲロの香りがした。 #twnovel

2010-12-12 13:06:00
キヨシロウ @kiyoshiro_aoi

#twnovel 風の冷たさに思わず身体が縮こまる。背後から抱きつき両手を俺のコートのポケットに入れる彼女。自分の手を彼女の小さい手に重ねる俺。 「手、暖かいね」 じゃ少しこのままでいようか。 「ねえ」 どうした。やっぱ寒い? 「……好きだよ」 身体中が暖かくなった。

2010-12-12 13:08:43
夢名 七志 @mumei7c

また、今年も冬が到来しても街で目撃者が多発している。冬ごもりの支度もせずに出ているのは危険な状態だ。来年まで続くならば、早急に対策を講じる必要があるかもしれない。まずは、地域で連絡を密にして状況の把握からだ。冬眠用の電気コタツとミカンすら家に無い奴らが多すぎる。 #twnovel

2010-12-12 13:15:48
hua @hua_shancha

#twnovel 学生時代はラブレターをよく貰った。一つ白紙の便箋も貰ったが差出人も判らず当時は気にもとめなかった。8年ぶりに見返すと炙り出しのように彼女の字が浮かび上がっていた。「あなたの隣に私はいる」彼女は確かに隣にいた。予言者は緻密な策士でもあった。

2010-12-12 14:45:33
タイルネン @tairunen

いつも脇役だと嘆くレモンを尻目に、華やかに着飾るメロン。しかしレモンはその後幸せな結婚をし楽しい一生を送った。一方メロンは生涯孤独でひっそりと亡くなった。この話を聞いたドリアンは僕はドリアンで良かったと微笑んだ #twnovel

2010-12-12 14:54:11
土曜日 @doyoubi

#twnovel 二十年一緒に暮らした亭主と別れた。突然に別れ話を切り出したのだが理由を訊かれて「飽きたから」とだけ答えた。子供は大学生、母親責任は果たした。自分の人生を生きたいというのが本当の理由だが亭主は理解出来ないだろうから言わなかった。俗物になってしまった男に未練はない。

2010-12-12 17:10:08
N.T.Works/凪司工房@介護生活中 @nagi_tter

#twnovel それは線香の匂いのする栞だった。おそらく祖母のもの。自分の本棚でそれを見つけ、驚きながら僕はその本を抜き出す。「サバイバル・ハンドブック」これを祖母が。開いたペイジは山中での生き延び方。慌てて僕は帰ってきた両親に言った。「ばあちゃん生きてるって。姥捨て山で!」

2010-12-12 17:11:50
八本正幸 @nekogamihakase

人間豹は飢えていた。街はクリスマスの電飾に輝いている。年々その輝きはまばゆくなるばかりだ。光の洪水の中を、闇を探して歩き回る。闇の領域は少なくなりつつある。だけど人間豹は知っている。光が強ければ強いほど、闇はより濃く深くなってゆくことを……。 #twnovel

2010-12-12 18:18:32
のおの @noz_on_tw

「えいっ☆」少女がタクトを一振りすると、そこらに散らばっていた紙たちが宙に舞い上がった。記されていた文字たちは煌めきながら、次々にディスプレイの中へおさまっていく。やがて青白く光る画面には、整然と並ぶ文字たちの得意げな顔が残った。最後に少女が打ち込む。「終わり」 #twnovel

2010-12-12 18:37:11
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 「許可を取り忘れた?」すみません、と担当者が頭を下げる。「仕方ないな」幹部の決定に座がどよめいた。「社会規範は遵守せねば」。無許可の飛行行為が禁じられている都市。その境界で次つぎ空を降り、赤い一団のソリは地上を走る。子ども達だけに見えた出来事は、聖なる夜の秘密。

2010-12-12 18:39:54
ショートショート @shortxshort

飛び込み自殺が相次ぎ、鉄道会社の人事部は苦悩した。バラバラの体を復元する人を求人誌で募集するも、誰も来ないのだ。そこで人事部は宣伝部に相談した。すると志望者が殺到した。「何をしたんだい?」宣伝部は事も無げに答えた。「同じ広告をジグソーパズルの愛好誌に出したのさ」 #twnovel

2010-12-12 19:18:36
すわぞ @suwazo

#twnovel 「天秤屋でござーい」声を上げながら歩くとすぐにどこかのお屋敷から声がかかる。邸内に招かれ、そこの主人に対面する。天秤屋の仕事は魂の重さを計ること。地位の高い人間ほど自分の魂は他人より重いと信じている。重く計れば計るほど駄賃が弾むから、勿論、天秤は細工済である。

2010-12-12 19:19:56
兎田 @usagida2150

僕が知っているのは、僕がそれを見ると死ぬらしい、ということだ。それはただの空間なのに、青、赤、黒と時間によって様々な色に変わるとも聞いた。水が落ちてくることがあって、時には氷が落ちてくることもあるんだという。「空」って一体なんだろう。もぐらの僕にはわからない。 #twnovel

2010-12-12 20:28:19