ヴァレンタイン無軌道小話~9.75インチ自走迫撃砲・日本式防御陣地に対する陸空統合試験・黎明期の対迫レーダー
ヴァレンタイン/プリースト9.75インチ自走迫撃砲
ヴァレンタインといえば、こいつ(とプリースト)には9.75インチ(248mm)自走火炎迫撃砲ってのが試作されてるんですが、これは何だったんでしょうね。43年からの開発で、射程が2kmくらいと短いんで、例によって要塞焼き殺し装置かしら pic.twitter.com/5vMaTqiGxK
2015-02-14 21:04:24この9.75インチ迫撃砲が一体何だったのか、今一つよくわからない。英wikipediaには25ポンドの焼夷榴弾を使うような事が書いてあるものの、ちと口径の割に軽すぎる気もする。内容物が25ポンド分で弾自体はもっと重かったりするんじゃないかしら
2015-02-14 21:17:00でも弾薬を詰み込んでる時の写真を見るに、どうも一人で両手で抱えられる程度の重さではあるらしく。第一次大戦で英軍が使った9.45インチトレンチモーターは69kgもある弾を使うけど、どうもそういう系ではなさそう。破片効果を期待しない焼夷榴弾のようなんで、弾殻が薄くて軽いのかも
2015-02-14 21:20:19ただ、薄くて軽い焼夷榴弾で要塞殺し……? という疑問がないでもない。連合軍の対要塞装備には確かに焼夷系のものが多いけど、それは大抵、徹甲弾とか成形炸薬とかの硬いもの貫く系のものとセットで、「穴あけてから焼く」が基本になってる。一方こいつは焼くには良くても穴開けられないのでは
2015-02-14 21:26:44あるいは、こいつでも成形炸薬使ったりしちゃうのかしら。多連装ロケットで成形炸薬弾頭と焼夷弾頭を混載して、これをバラ撒いてトーチカに穴あけて焼くってコンセプトはあった訳だし。ロケットでやれるなら、重迫でやったっていいかもで
2015-02-14 21:29:409.75インチ迫撃砲搭載プリーストのほうもちょっと面白い。これは英軍が供与プリーストをもとに改造したんだけど、45年に米軍装備としてフランスで実地試験してるんですと。ただ、そこでどういう結果を見せたかはよくわからず、結局米軍にも採用されなかったようではあるけども
2015-02-14 21:31:15日本式防御陣地に対する陸空統合試験(スフィンクスプロジェクト)
でも9.75インチ迫撃砲搭載プリーストの不採用決定は欧州での終戦より幾分後みたい。というのも、45年7月に米軍がテキサスで実施した「日本式防御陣地に対する陸空統合試験(スフィンクスプロジェクト)」で、このプリーストも英軍から参加してるようで。ここでは反斜面陣地に極めて有効との評価
2015-02-14 21:38:29っと、もうちょっと詳細がでてきた。この9.75インチ迫撃砲はしばしば火炎迫撃砲だのとも呼ばれるけども、実際には榴弾や化学弾もある大口径短射程な迫撃砲であると。弾頭重量はわからないものの、榴弾では炸薬量56ポンドとあるので、どうも25ポンド云々てのは間違いくさい
2015-02-14 21:44:31おっと間違い。所謂普通の化学弾は無い。弾種は榴弾、発煙弾、そしてマグネシウム・何らかの炭化水素・硝酸ナトリウムを混合したもの53ポンドを用いた特殊焼夷弾であると。元々は市街地での建物に対する焼夷効果を狙った弾種だけど、低木の茂みを焼き払う用途にも使えるんじゃないかと考えられたと
2015-02-14 22:04:46弾頭部の厚さは0.75インチ(19mm)と言うんで、もとようりコンクリートを貫けるような徹甲榴弾めいた物ではなさそう。どうもこの9.75インチ自走迫撃砲は対要塞というより、要塞化された市街地だの永久築城でない陣地を吹き飛ばしたり焼き払ったりする用途のように思えるですね
2015-02-14 22:09:31どうでもいいのだけど、「日本式防御陣地に対する陸空統合試験(スフィンクスプロジェクト)」ってのが無駄に格好いい
2015-02-14 22:11:14もしかすると、オリンピック、コロネット両作戦では9.75インチ迫撃砲を積んだプリーストでの近接支援って光景が生じたかも知れない?
2015-02-14 22:13:12スフィンクスプロジェクト、もうちょっと読み込んでいくとダウンフォール作戦でのミクロなレベルでの米軍の戦い方が見えてきたりして
2015-02-14 22:23:26スフィンクスプロジェクトの報告が面白い。4.2インチ(107mm)無反動迫撃砲について、「57mm, 75mm無反動砲があるなら4.2インチは要らない。発煙弾使う時でもないと75mmに比べて特に利点がないし、それも重量増大のデメリットを考慮すると割に合わない」とかいう話が出てくる
2015-02-14 23:01:514.2インチ無反動迫撃砲ってのは実際平射火器で、ただの低初速大弾量な無反動砲です。太平洋の米軍はしばしば下のレベルで直射火器が不足していて日本軍の掩体潰しに苦労し、時には4.2インチ迫撃砲の床板を木の幹に縛りつけての直射までしていたのですが、この無反動砲はその教訓から生まれたもの
2015-02-14 23:06:014.2インチ迫撃砲での直射は土と木で出来た火点を叩き潰すには具合が良かったそうなんですが、57mm,や75mmの無反動砲は精度良好で良く当たるようなんで、まるごとグシャっとやらずとも、うまいこと中に弾を放り込めたりするのかも知れません。そして軽いことは歩兵にとって正義ですし
2015-02-14 23:10:59黎明期の対迫レーダー
スフィンクスプロジェクト、レーダーと音響を併用した迫撃砲陣地特定実験もされてるとな。使われたレーダーは対空砲用のSCR584の改造型、航空機用であるAN/APS-3の改造、そして対迫専用レーダーAN/TPQ-3と。そも1945年に既に対迫レーダーがあったと知らなかったので驚いた
2015-02-15 00:24:48実験では迫撃砲5門が計120発を発射。改造SCR584は4門のみ特定し平均誤差39ヤード。AN/TPQ-3は全て特定し平均135、最良60ヤード。改造AN/APS-3は十分なデータが得られず結果なし。参考として音響測定装置AN/PNS-1では平均200、最良90ヤードであったと
2015-02-15 00:38:31これが対迫レーダーとして良いのか悪いのかは私にゃサッパリわからんのですが、少なくとも音響よりはうまく行ってるのかな
2015-02-15 00:40:39対空砲用のSCR584レーダーが対迫レーダーの実験で使われてるのは妙に聞こえるかもですが、実はそんなにおかしな話でもないようで。そもこの手のレーダーは、前線に出た軽対空砲部隊で、偶然にも彼らの装備で迫撃砲弾も拾える事を発見した事から来てるんだとか。pheee...
2015-02-15 00:46:59当時のレーダーでは小さく速くそして丸っこい砲弾を拾うのは難しかったようなんですが、これまた偶然にも、迫撃砲弾の場合は安定翼が生えてるのが探知の役に立ったらしいと。安定翼がコーナーキューブリフレクタに似たような働きをするんだとか
2015-02-15 00:51:03