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Flying Zebraさんの電力自由化に関する考察~カリフォルニア電力危機など

まとめました。
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Flying Zebra @f_zebra

電力自由化、発送電分離に関してまともな議論がほとんどなく、推進する側も反対する側も印象論だけで議論しがちなのは、まず第一にこの問題が非常に複雑で考慮すべき範囲が広範囲に及び、相当根を詰めて勉強しないとまず議論の土台に立てないということもあるのかも知れない。

2015-02-21 13:13:45
Flying Zebra @f_zebra

また、政策のような社会科学は実験をするわけにもいかず、何が正解なのか本当のところは誰にも分からないという難しさもある。結局はうまくいくかどうかなんてやってみなければ分からないと割り切ってしまえば多少は気も楽になるかもしれないが、それでも最低限のポイントは押さえておきたい。

2015-02-21 13:14:46
Flying Zebra @f_zebra

私自身まだまだ勉強不足なので分かりやすく説明できる自信もないのだが、先行事例としてカリフォルニア電力危機、そして少なくとも今のところ大きな問題は起きていないように見えるアメリカ東海岸のPJMによる容量市場という仕組みについて、少し解説してみよう。

2015-02-21 13:16:00
Flying Zebra @f_zebra

まず、自由市場経済の社会というのはちゃんと機能すれば規制を取り払って自由な取引きに任せることで需要を満たすように供給側が努力し、競争の結果非効率な供給者が淘汰されて全体が最適化されるはずだ。問題は、この仕組みをちゃんと機能させるのがそんなに簡単ではないことだ。

2015-02-21 13:19:10
Flying Zebra @f_zebra

電力という財に関して言えば、貯蔵ができず、ネットワークを利用しないと取り引きができないという極めて特殊な事情がある。このため、競争が機能するためには何を置いても十分な発電設備と送電能力があることが大前提だ。あるいは、それらへの投資に適切なインセンティブが働く必要がある。

2015-02-21 13:20:30
Flying Zebra @f_zebra

また、電力は代替品のない必需品であることから、価格等に対する需要の弾力性が低い。簡単に言えば、価格が高くなったからといって需要を控えることが難しい。こうした状況は、市場支配力の濫用に対して非常に脆弱だ。つまりシェアを押さえた売り手に有利で、価格が急騰する危険が高い。

2015-02-21 13:23:42
Flying Zebra @f_zebra

さらに、発電設備の建設には長い時間が掛かり、短期的な需要の増加に対して弾力的に供給力を増強するのは難しい。そもそも電力の需給をバランスさせる系統運用は高度な技術が必要で、基本要件が独特で厳しいことから市場を適正に機能させるというのはかなり難しい。

2015-02-21 13:25:21
Flying Zebra @f_zebra

1998年から小売を完全に自由化し、大手電力会社には公設の卸電力取引所(PX)からの調達を義務付けたカリフォルニア州では、大手の市場支配力を緩和するため火力発電所の半分を売却することが要請され、結果的に3大電力会社の火力発電所のほとんどが売却された。

2015-02-21 13:26:50
Flying Zebra @f_zebra

2000年の夏に様々な要因から独立系統運用機関(ISO)による電力緊急宣言の発動回数が激増し、卸電力価格は急騰した。小売価格も上昇したが議会による再規制もあって完全に転嫁することはできず、供給業者の業績は悪化した。2001年には状況が更に悪化、卸電力価格は10倍以上に急騰した。

2015-02-21 13:28:29
Flying Zebra @f_zebra

2001年には需要家への供給遮断や輪番停電が頻発した。この年の夏前、カリフォルニア州の電力供給は壊滅寸前まで追い詰められていた。この夏の冷夏によって壊滅を免れたのは、ほとんど奇跡的と言ってもよい。あの程度では済まなかった可能性の方が高かったことは覚えておきたい。

2015-02-21 13:30:41
Flying Zebra @f_zebra

カリフォルニア州の電力危機は多くの教訓を残した。まず、小売業者が自前の発電設備を持たず、発電業者との相対取引も制限されて全てを取引所での取引に依存することの問題性が明らかになった。そして、安定的な電源の確保が必要であることも改めて示された。

2015-02-21 13:33:06
Flying Zebra @f_zebra

なお、構造的な要因の一つとして州の南北間をつなぐ送電ルートの容量が十分でなく、南部と北部の電力融通に支障をきたしているという制約があった。この問題は以前から認識されていたが、改善するための十分な投資は行われなかった。投資にインセンティブを与える、何らかの工夫が必要ということだ。

2015-02-21 13:34:33
Flying Zebra @f_zebra

市場支配力については、その濫用を許せば消費者の負担が増し、かと言って過度に規制を掛ければ事業者の経営が破綻する。(カリフォルニアでは3大電力の1つだったPG&Eが破産した)そして、供給責任を果たすことのできる供給体制も考えなければならない。

2015-02-21 13:35:53
Flying Zebra @f_zebra

アメリカではカリフォルニアの電力危機以降、電力自由化法制定の動きはスローダウンしている。電力市場の競争が有効に機能する条件が整うまでは自由化すべきではないという意見もあるが、果たして本当にそうした条件が整う市場が形成できるのかどうか、答えはまだない。

2015-02-21 13:36:49
Flying Zebra @f_zebra

最近よく話題なっている試みの一つが、以前にも紹介した米国東海岸のISOであるPJMが導入している容量市場という仕組みだ。PJMはペンシルバニア、ニュージャージー、メリーランド、デラウェア、ヴァージニア、ワシントンD.C.の電力系統を制御し、約2,300万人に電力を供給している。

2015-02-21 13:37:44
Flying Zebra @f_zebra

容量市場とは、実際の発電量を取引する卸電力市場とは別に、各事業者に確保が義務づけられている予備率を含んだ発電容量の過不足分を市場で取引する仕組みだ。安定した電力供給には十分な余裕を持った発電容量の確保が不可欠だが、それを市場の仕組みで担保しようという試みだ。

2015-02-21 13:38:35
Flying Zebra @f_zebra

トラブルや需要の急増に備えて火力発電所をアイドリング運転するなどして容量を確保していても、実際に何も起こらず発電の必要がなければ発電事業者には卸電力市場からは1セントも入らない。すると、事業者には積極的に予備率を確保するインセンティブは働かない。

2015-02-21 13:40:05
Flying Zebra @f_zebra

そこで、PJMでは容量確保の義務を満たせなかった事業者にペナルティを課し、徴収したペナルティを義務以上に設備容量を準備した事業者や、予備力として機能を確保しながら供給力確保義務に使われなかった電源に還元するという仕組みを採用している。

2015-02-21 13:40:58
Flying Zebra @f_zebra

ペナルティの額は新設ガスタービンの設備費込みの経費と平均的な事故停止率を元に計算しているが、PJM全体で所定の供給力が確保できない場合は金額が2倍になる仕組みだ。ペナルティの額が、実質的に容量市場の市場価格の指標となっている。

2015-02-21 13:42:04
Flying Zebra @f_zebra

詳しい仕組みについては以前に紹介しているので、興味のある人はログのこの日 twilog.org/f_zebra/date-1… の最初の方のツイートを参照して頂きたい。

2015-02-21 13:42:26
Flying Zebra @f_zebra

よく考えられた仕組みだとは思うが、実際に運用する中では様々な問題も生じ、今も試行錯誤が続いている。例えば、ペナルティは日ごとの計算なのだが、PJM管外で電力価格が高騰した際、電源を登録から外して管外へ売電する行為が横行した。

2015-02-21 13:43:07
Flying Zebra @f_zebra

管外の先物価格が十分に高ければ、ペナルティを払っても十分に元が取れたからだ。この結果、夏の間所定の予備力が確保できない期間が16日間も発生してしまった。現在はルールが変更され、4ヶ月間の1期の間に1日でも不足があれば4ヶ月分のペナルティを課すようになった。

2015-02-21 13:43:17
Flying Zebra @f_zebra

このルール改正の同時に容量市場の取引量は急減し、容量確保のほとんどがスポット取引ではなく中長期の相対取引に移行した。カリフォルニア電力危機の教訓の一つが、取引所の取引に依存するのは危険で、相対取引を重視すべきということだった。

2015-02-21 13:43:44
Flying Zebra @f_zebra

試行錯誤を続けながらも今のところ大きな問題は起きていないように見える容量市場だが、PJMが持つ電力系統の特性に依存するところも大きく、どこででも同じように機能するかどうかは分からない。PJMの電源構成は元々原子力と石炭の比率が高く、新設電源のほとんどはガス火力だった。

2015-02-21 13:44:38
Flying Zebra @f_zebra

ガス火力発電所は建設期間が短く、初期投資も少なくて済む。そしてPJMの地域はガスパイプラインが整備されていて、ガス火力については立地の制約も小さいという特徴がある。つまり、発電容量を増やすのが比較的簡単ということだ。これは非常に大きい。

2015-02-21 13:45:49
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コメント

70kite @70kite 2015年2月22日
「自由化で多様な電源が参入」とか言っても、問答無用で再生可能エネルギーが割り込んでくるので、火力発電所に投資しても、稼働が見通せない。ガス火力は多分採算が取れない。ある程度ましなのが石炭火力だが、環境省がどうでるか読めない。怖くて発電所投資なんてできないことになるだろう。
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tomo @tomo_091519 2015年2月22日
その多様な電源の多くが、品質で言えば汚水レベル。 その電源の品質向上を電力会社とユーザが負担して低品質発電業者に貢ぐおかしな構造から変えないと。 一定品質以下は、産廃同様に発電業者から徴収すべき。
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しかのつかさ @sikano_tu 2015年2月22日
容量市場を導入した東海岸では、ユーザー側の電気料金はどの程度下がっているのでしょうか?
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Flying Zebra @f_zebra 2015年2月22日
sikano_tu 小売料金については自由化直後には業務用、産業用で低下が見られた(家庭用は変化なし)ものの、その後自由化以前の水準まで上昇し、価格低下という面では効果は出ていません。また、自由化後に従来の地元電力会社から新しい小売事業者に乗り換えた需要家のほとんどが、ガス価格の高騰による小売事業者の撤退によって元の電力会社に戻っています。
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Flying Zebra @f_zebra 2015年2月22日
まとめへの補足ですが、容量確保を義務づけることは確かに供給力確保に貢献しているのですが、一方で新規参入者にとっては参入障壁となっています。また、容量確保のほとんどが相対取引となった結果容量市場での取引量は急減しており、容量市場そのものが十分に機能しているわけではありません。
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Flying Zebra @f_zebra 2015年2月22日
もう一つ、送電設備への投資についてですが、電力取引自体は活発化しているため送電線の混雑時間やそこに課される混雑料金の徴収額も増加しています。ところが新規の基幹送電設備の建設はほとんど行われておらず、既存設備の電線張替えなどによる増強のみで対応している状況です。将来を見越した新たな送電設備への投資にインセンティブを与える仕組みはまだありません。
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長月トッケー🇵🇸🍨雛菊葎@アイマス企画やります @picsacu_tokek 2015年2月24日
以前に見たエンロンという不正取引したアメリカの電力会社のドキュメンタリーを思い出す。災害による電力の高騰を喜ぶシーンが印象に残ってる。
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