はでぺるまつり2015

ギリシア神話に登場する冥王・ハデスとその妻・ペルセポネを、二人が一緒にいる冬の間、盛大にいちゃつかせてしまえというまつり。 特設ページ:http://studioregulus.nobody.jp/hpfes.html 企画/運営:スタジオレグルス・呉(@kle_can) 続きを読む
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みみこ @mimiko34

「今夜か」 「はい、夜明け前に迎えにくると」 言葉少なに語る夫の顔をペルセポネは見つめた。 その頬にハデスはそっと手を添えしばし見つめ合った後口を開いた。 「…あなたも準備をなさい。私も場を整えよう」 それだけを言うとハデスはペルセポネに背を向けて歩み去った。 #はでぺるまつり

2015-03-03 19:04:09
みみこ @mimiko34

ハデスは冥府の奥のある場所に立っていた。 足元はぼんやりと薄く紫の光が発光している。歩けばまるで煙のようにそれがふわふわと立ち昇った。 「ハデス様」 声のした方を振り返ればペルセポネが立っていた。 「出来たのか?」 「はい。後はこの子たちだけです」 #はでぺるまつり

2015-03-03 19:08:13
みみこ @mimiko34

地上へ帰る日夫はいつも言葉少なだ。だからいつも、言えないでいる言葉を探そうとくみ取ろうと自分は深い黒曜石の様な瞳をじっと見つめる。普段と変わらない瞳の奥に寂しさを見つけられるようになったのはいつからか。何度繰り返そうとその瞳から寂しさが拭い去られることはない。#はでぺるまつり

2015-03-03 19:06:37
みみこ @mimiko34

そう言って彼女はハデスの隣に立つ。 「さあおいでなさい。地下の子どもたちよ」 ペルセポネが腕をひろげ歌い始めると足元にわだかまっていた煙のようなものが立ち上り浮き上がった。浮き上がる光は次第に赤みを帯び足元に残る光は青みを帯びていく。混ざり合う部分は紫色だ。 #はでぺるまつり

2015-03-03 19:10:01
みみこ @mimiko34

赤く輝く光は次第にペルセポネの周りに集まると彼女の髪に吸い込まれていった。赤茶色の髪は次第に赤みを増し燐光のように輝きだす。光を受け止める彼女の横顔はとても気高く凛として美しかった。 「ハデス様?ハデス様!」 「あっ」「どうなさいました。」「いや、なんでもない」 #はでぺるまつり

2015-03-03 19:11:16
みみこ @mimiko34

見惚れていた事を隠すためにハデスはわざとらしく咳払いをするもその事を彼女が気にする事は無かった。 「ハデス様、それではこの子たちを預からせて頂きます。ハデス様は残された子たちをお願いします」 赤く輝く髪の一房を手に取り見つめると、足元の青い光にも目を向ける。 #はでぺるまつり

2015-03-03 19:12:10
みみこ @mimiko34

ペルセポネがハデスから預かったものそれは冥府を揺り籠に冬の間力を蓄え目覚めの時を待つ種子の魂だった。ペルセポネは種子を司る女神である。彼女は冥府から地上への帰還時にこれら種子の魂を地上へ運ぶ任を持っていた。 しかしすべての魂が地上へ行けるわけではない。#はでぺるまつり

2015-03-03 19:13:06
みみこ @mimiko34

女神の唄に呼応し自らの力で浮き上がらねばならない。力ないものは冥府に留まるしかない。それが冥府から地上へ上がる為の厳粛なる差であった。頷いたハデスはペルセポネの髪の一房を手のひらに乗せたかと思うと次の瞬間には彼女を抱きしめていた。#はでぺるまつり

2015-03-03 19:14:35
みみこ @mimiko34

力強く抱きしめてくる腕に抗わず彼女もまた彼の胸に身を任せた。普段体温の低い彼の胸に頬を寄せていると自分の体温が移るようで暖かくなってくる。それが心地よかった。 ハデスもまた彼女の髪に手を添えると輝きと共に暖かさを感じていた。 #はでぺるまつり

2015-03-03 19:15:36
みみこ @mimiko34

ようやく腕の力を緩めたハデスとペルセポネは正面から向かい合った。お互いの目を見つめ額を触れ合わせる。 「また帰ってきます。またここへ帰ってきます。だからそれまで待っていてね。あなた」 「ああ」 #はでぺるまつり

2015-03-03 19:16:13
みみこ @mimiko34

涙はない。けれど今にも泣きだしてしまいそうな夫の頬をペルセポネはその白い両手で包んだ。自分よりずっと大人で冥王で尊い方なのに、ペルセポネはその姿がまるで寂しがり屋の少年のように思えて愛しくてたまらなかった。 夜明けが近づく頃地上からヘルメスがやってきた。#はでぺるまつり

2015-03-03 19:16:59
みみこ @mimiko34

「お迎えにあがりました。」 「ご苦労伝令神よ。なればその天かける足にて我が妃を無事に母の元へ導き、送り届ける任託してもよいか」 「はい。このヘルメス、ステュクスの河に誓い送り届ける事を約束いたします」 ヘルメスは恭しく礼をとった 「わかった。ペルセポネよこちらへ」#はでぺるまつり

2015-03-03 19:17:45
みみこ @mimiko34

ハデスに促されペルセポネは一歩前に進みでる。その手には白水仙の花冠があった。 「冥王よ、時が来たことを告げる地上の花です。どうぞお受け取りください」 「受け取ろう」 そういうとハデスは膝を折りペルセポネの手から花冠をその頭上に戴いた。 #はでぺるまつり

2015-03-03 19:18:24
みみこ @mimiko34

冥王の頭上に戴かれた白水仙は瞬く間にその色を白から黄色へと変化させた。 地上の物を冥府は受け取った。その代わりに冥府もまた地上へ大切な物を送らねばならない。 「さあ行きなさい」 ハデスはペルセポネの手をとりヘルメスの元へ促した。#はでぺるまつり

2015-03-03 19:19:44
みみこ @mimiko34

別れるのを切なく思いながらもまた帰ってくるその日までの辛抱だ。ペルセポネは漆黒のローブを脱ぎハデスに渡す。冥府では自分の光は眩しすぎるから冥府に居る間は光を抑える為に漆黒の衣類を身に纏う事になっていた。手が離れる瞬間声に出さずに『また』と唇を動かした。#はでぺるまつり

2015-03-03 19:20:27
みみこ @mimiko34

きっと彼に伝わったはずだ。 あとはもう前だけを見て上へ上へと昇るのだ。 ヘルメスの先導で地上へと上がる。その途中地上の風を感じてもう間もなく出られると思った時それまで口を開かなかったヘルメスが話しかけてきた。 「毎度のことながら本当に仲がいいんだなって思います」 #はでぺるまつり

2015-03-03 19:21:28
みみこ @mimiko34

「いつもあなたには迷惑をかけるわね」 「いいんですよ。苦になってませんから。だから気にしないでください。その代わり毎回毎回思ってた疑問に答えてくれます?その髪なんでいつも帰る時はそんなに輝いてるんです?」 #はでぺるまつり

2015-03-03 19:22:01
みみこ @mimiko34

ヘルメスはコレーの髪を不思議そうに見つめた。コレーは少し考えて答えた。 「この輝きは冥府の宝なの。私は私の女神としての使命に従い地上へこれを持って行くのよ。あの人から預かった大切な宝、私の私たち夫婦の子どものようなものよ」 #はでぺるまつり

2015-03-03 19:22:38
みみこ @mimiko34

そして地上を光で満たして暖かくするだろう。コレーは胸いっぱいに地上の空気を吸い込んだ。そしてその輝く髪をかきあげ流れるように波立たせると赤い燐光がまるで花粉のように散らばり、瞬く間に風によって運ばれていった。 #はでぺるまつり

2015-03-03 19:24:35
みみこ @mimiko34

光が消えたコレーの髪はデメテルによく似た赤茶色の髪に戻っていた。 さあ子どもたちよ、お生きなさい。 それは女神が歌う祝福と息吹の歌 #はでぺるまつり

2015-03-03 19:25:58

映子(はゆこ) @hayucoo

#はでぺるまつり でハデスが可哀想な影で、デメテル母さんは娘の帰省のためにおうちをピカピカに掃除して美味しいごはんもたくさん作ってるんだろうなあ それはそれでまた可愛い

2015-03-03 20:25:55
映子(はゆこ) @hayucoo

母の何気ない仕草や会話で目ざとく耳ざとく夫との共通点を見つけて「お母さん、ハデス様とおんなじ!流石姉弟ね!」とツッコむ罪深いペルセポネください #はでぺるまつり

2015-03-03 20:34:31
映子(はゆこ) @hayucoo

「ねえデメテル母さん、いい加減ハデス様と仲直りしたらどうかしら。すごく時間も経ったことですし、大好きなお母さんと旦那様が仲違いしたままって寂しいわ。私、お母さんとハデス様と一緒にやりたいことがあるの」「何をしたいと言うの、ペルセポネ?」「鍋パ」「何故」 #はでぺるまつり

2015-03-03 20:53:54
映子(はゆこ) @hayucoo

「だってハデス様おかしいの。鍋用牡蠣を半生で食べて、当たっちゃって。もう本当に、死の国の王が死ぬんじゃないかってくらい嘔吐してねぇ。ヘルメスに貴方の親友を連れてきて頂戴って頼みかけたくらい。面白かったのよぉ、お母さんにも見てほしいなって」「結構よペルセポネ」 #はでぺるまつり

2015-03-03 20:58:12
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