ジョンお姉さんの「笠地蔵」物語

ジョンお姉さんの「笠地蔵」物語
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ジョンお姉さん @jpn1_rok0

お爺さんはゆっくりと用心深く廃坑の奥に進んでいきました。すると、木で出来た古ぼけた大きな扉がありました。その先が外に繋がっているようで、扉の隙間から弱く風が吹き込んできていました。おじいさんはおばあさんに言いました。「ここから外に出られそうだ!ハンマーを持って来てくれ!」

2015-03-01 19:53:24
ジョンお姉さん @jpn1_rok0

おばあさんはおじいさんにハンマーを渡しました。お爺さんはえっこらせ、やっこらせと扉を打ち毀しはじめました。何度も叩くうちに、扉のかんぬきが壊れて、扉がきしみながら開きました。すると、驚いたことに、そこに見覚えがある村のお寺の和尚さんが立っていました。「和尚さん、何故ここに?」

2015-03-01 19:57:48
ジョンお姉さん @jpn1_rok0

和尚さんは言いました。「おじいさん、よくここまで来た。古寺の和尚と思っていたようだが、冥土の土産に聞かせてやろう。私はこの大統領から派遣されたCIAのエージェント・・・」「何?お前が・・・!」和尚さんは言いました。「村で作られる笠は国家の最高機密。お前はそれを持ちだそうとした」

2015-03-01 20:02:15
ジョンお姉さん @jpn1_rok0

「笠のどこにそんな秘密があるんだ!」「お前も知らないはずはない。雪の日に笠を被れば顔に雪が付かない。夏に笠を被れば日射病にならない。この笠が国外に流出したならば、冬のロシア軍、夏のベトナム軍の戦力は倍増し、我々の優位が失われるのだよ・・・」「そんな陰謀が・・・!」

2015-03-01 20:05:42
ジョンお姉さん @jpn1_rok0

和尚さんは「さあ、秘密を聞いた以上、生かしておく訳にはいかない。」と言いながら、壁にある石を押しました。和尚さんの後ろにある岩盤が開き、無数の地蔵を引き連れた千手観音が現れました。それを見たおばあさんは手を合わせて拝みました。「なんとまあ、ありがたい・・・」

2015-03-01 20:08:57
ジョンお姉さん @jpn1_rok0

おじいさんはおばあさんに言いました。「何をしている!早く逃げるんだ!」おじいさんはおばあさんの腕をつかんでもと来た廃坑を走りました。後ろからは千手観音と地蔵達が迫っています。おばあさんは言いました。「もうダメだわ!」おじいさんは言いました。「炭俵を積んでバリケードを作るんだ!」

2015-03-01 20:11:18
ジョンお姉さん @jpn1_rok0

おじいさんとおばあさんは廃坑の中にあった炭俵を積んでバリケードを作っては逃げ、作っては逃げしました。しかし、ずしん、ずしんという音とともに、千手観音と地蔵はそれを粉々に踏みつぶしながら迫ってきます。おじいさんとおばあさんは、とうとう縦坑の出口近くまで追い詰められました。

2015-03-01 20:14:45
ジョンお姉さん @jpn1_rok0

あたりは千手観音と地蔵が踏みつぶした炭の粉が舞って夜のように真っ暗です。和尚さんの高笑いが聞こえてきました。「そこがお前達の墓場だ。手厚く菩提を弔ってやろう。ふふふあはは・・・」おじいさんはおばあさんに言いました。「君は隠れキリシタンだったな。でうす如来に祈っておけ。」

2015-03-01 20:18:16
ジョンお姉さん @jpn1_rok0

お爺さんはおばあさんが持っていたマッチを奪い取ると、千手観音の方に走って行きました。「何をする気なの!」「君はそこにいろ!」お爺さんは懐から炭を取り出してマッチで火を付けました。そして千手観音と地蔵の上げる音がするほうに思い切り火のついた炭を投げました。

2015-03-01 20:20:56
ジョンお姉さん @jpn1_rok0

「おばあさん伏せろ!」おじいさんは一目散におばあさんの方に走ってきました。その時、お爺さんの後ろで大爆発が起きました。お爺さんは、間一髪の所でおばあさんを抱き上げると縦坑に飛び込み、壁にしがみつきました。ものすごい風圧がかかり、地蔵の破片や千手観音の腕がばらばらと降ってきました。

2015-03-01 20:23:36
ジョンお姉さん @jpn1_rok0

おばあさんはおじいさんにたずねました。「あなたいったい何をしたの?」おじいさんは答えました。「炭塵爆発でやつらを吹き飛ばしてやったのさ」おじいさんとおばあさんが縦坑から出ると、廃坑はすっかり落盤して、空が見えていました。崩れた岩の下には和尚さんが下敷きになってうめいていました。

2015-03-01 20:28:12
ジョンお姉さん @jpn1_rok0

おじいさんは和尚さんに言いました。「暫くそうしているんだな。FBIと新聞記者が迎えにくる。」和尚さんは悔しそうに「がっでむ」と言いました。おじいさんはおばあさんを抱き上げると廃坑から出て腰を下ろしました。そして懐からマルボロを出すと、おばあさんから貰ったマッチで火を付けました。

2015-03-01 20:31:38