ヒルダお誕生日裏設定

lov3ディレクターによる裏エピ
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浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

1.「…どう? 何か見える…?」 少女は、手にした占札に片方が紅色の瞳を向けたまま、木の上の少年におずおずと話しかけました。 「何も…見えないかな」 「…ホントに 来るかな?」 「わからない けど俺たちが来たんだ 安心しな …てか あんたその札 いつも見てるな」 #lovfan

2015-03-03 00:31:08
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

2「…これでね 占いをするの」 「ふぅん 占いでは来るって?」 「うん…でも あなたは戦わないんでしょ?」 「た 戦うさ 俺だって傭兵団の一員だ」 今、村は中央都の報せに大きく揺れていました。南方から溢れだした怪物の群れが、この辺境の村にまで迫っているというのです #lovfan

2015-03-03 00:32:07
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

3「これお夜食 おいとくね」少女が差し出した包みから覗く、この地方独特の料理を見て、少年は一瞬だけ目をしかめ、再び遠くへと目を向けました。 「…それよりさ そろそろ帰らないと また親に叱られるんじゃないか?」 少女は少しだけ困った顔をしました 「…そうだね」#lovfan

2015-03-03 00:33:04
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

4突然二人を照らす明かり。見ると、男が少女達をカンテラで照らしていました。少年は、ほらね、といった顔をし男に挨拶をしました。 「こんばんは ヒースランドさん」 少年を無視し、真直ぐ少女に歩み寄る男 「またかヒルダ 夜食を運ぶのは叔母さんに任せるようにと言ったろう?」#lovfan

2015-03-03 00:34:19
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

5.「お前にもしものことがあれば 私は兄さんに申し訳がたたん」 ――フン、どうかな。 少女の肩がビクンと揺れました。 ――こいつが大事なのは、お前自身じゃない。 少女の頭に響く声。男は木の上の少年にカンテラの明かりを向け、少年の赤い左目をじっと見つめて言いました #lovfan

2015-03-03 00:34:55
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

6「バルドとか言ったな 辺鄙な村だが この子はお前のような流れ者が軽々しく口を聞いていいような人間ではないんだ へルマン団長にも言っておくが くれぐれも勘違いのないようにな」 男に腕を掴まれながら、少女はすまなそうに少年の方を振り返り、居住区へと帰って行きました #lovfan

2015-03-03 00:35:35
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

7.「今日はどう?」 その夜も、少女は少年が見張る木の下にいました。 「変わりないかな あんたの占いは?」 「うん… 変わらない…」 沈黙――月明かりに照らされた森に、静寂のみが流れていきます。 ふと、少女は意を決したように、少年の紅い瞳をじっと見て尋ねました #lovfan

2015-03-03 00:36:24
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

8.「ねぇ あなたも…何か変わったものが見えたり 聞こえたりするの?」 虚をつかれ、目を見開く少年。 「あなたもって あんたは見えるのか?」 「…うん たまに …あなたもわたしと同じ変わった目だから どうかなって」 少年は一度目をつぶり、落ち着いた表情で答えました #lovfan

2015-03-03 00:37:29
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

9「俺の右目は“風”が見えるんだ こう…色がついてるようにさ 空気の変わった動きとかはすぐにわかる だから見張りを任されてるんだ このことは団長と俺だけの秘密なんだけど 赤目仲間ってことで特別にあんたにも教えてやるよ」 そう言って、少年は木の上でニヤリと笑いました #lovfan

2015-03-03 00:38:29
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

10.その夜、二人は、様々な話をしました。少女の両親は事故で亡くなり、叔父夫婦に世話になっていること…少女の高祖父は宮廷占術師であり、叔父はそれをとても誇りに思っていること…少年は孤児であり、傭兵団に拾われ育てられたこと…そんな二人を、夜の闇が優しく包んでいきます #lovfan

2015-03-03 00:39:10
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

11.ふと、遠くにカンテラの明かりが見えました。 「ほら そろそろ時間だ 叔父さんたちが来たぞ…あれ? 」 しかし、少女たちの前に立っていたのは腰に剣を刺した壮年の男でした。 「団長 どうしたんだよ まさか見張りやってくれんの?」 「ケッ そのまさかだよ」 #lovfan

2015-03-03 00:39:55
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

12「ナジが酔い潰れちまってな ほれ交代だ とっとと帰って寝な…それともこの嬢ちゃんとまだ一緒にいてぇのか?」 「ば ばかいうなよ!」 少年は木から飛び降り、顔をそむけ少女に包みを差し出しました 「…全部食べたよ ありがとな」 そう言うと少年は駆け去っていきました #lovfan

2015-03-03 00:40:27
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

13「話が違うな 私はあの少年とヒルダが近づかないようにしてくれと頼んだはずだが?」夜の闇に響く声。少女が振り向くと、叔父が立っていました 「そうだっけか? ヒースランドさん 確かに俺らはあんたにご指名頂いたが 雇い主は村だ そんな細かい注文にまで従う義理は無いね」#lovfan

2015-03-03 00:41:20
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

14.何かを言いかけようとする叔父を、団長が制します。 「心配しなさんな この子はオレが送ってくよ――それとも この子を一人にしておけない何か特別な理由でも?」 「――フン その子にケガでもさせたら承知せんぞ ヒルダ…“アレ”はお前が言った言葉だ――分かっているな」#lovfan

2015-03-03 00:41:52
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

15.そう言って叔父は去りました。 「…ごめんなさい」 「嬢ちゃんも大変だなぁ あんな叔父さんと一緒じゃ息が詰まるだろ 謝るこたねぇよ むしろこっちはバルドの奴と仲良くしてもらって礼を言いてぇぐれぇさ なんせこの傭兵家業だ あいつにゃ同じ年頃の友達がいねぇからよ…」#lovfan

2015-03-03 00:42:29
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

16――コイツに教えてやらないのか?お前の占いじゃ… ピクリとする少女 「嬢ちゃん どうした?」 「ううん なんでもないよ」 ――フン 好きにしろ…しかしあの子供…“本物”か… 少女は“声”に答えることなく、占札を掲げ、月に透かしてみました――占い、外れたらいいな #lovfan

2015-03-03 00:43:24
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

17.しかし数日後、少女の思いも空しく、とうとう村に怪物の群れが現れます。傭兵団の活躍で怪物の第一波は退けたものの、傭兵たちの負傷も著しいものでした。 少女達は、逃げ遅れた村人や、傷ついた傭兵たちと共に村の集会所に集まります。 少女の叔父が、団長を呼び止めました。 #lovfan

2015-03-03 00:46:49
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

18「ヘルマン団長 状況はどうだ?」 「良くないな あんな化け物 相手にしたことねぇ 次はいったいいつ来るか…」 「…なら あの少年を斥候に行かせたらどうだ? 目が いいのだろう?」 「団長 俺行くよ」立ち上がる少年。 「ダメ…絶対にダメ!」突然少女が叫びました #lovfan

2015-03-03 00:47:31
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

19「あんた 何を言って…」 いきり立つ少年をなだめるように、団長が少年の頭に手を置きます 「落ち着け 今偵察は危険だ 村の西側は無事逃げられたと思うが こっちは麓への道を断たれてる 一旦村を明け渡すしかねぇな どこかにこれだけの人数が身を隠せる場所があれば…だが」#lovfan

2015-03-03 00:48:38
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

20「…なら 山の上の洞窟がいい そこには食料の備蓄もある」 「…良し その洞窟に隠れてしのごう そこで怪物共が居なくなるのを待つ」 ――フン なんともまだるっこしいことだな… ――やっぱり占いの通りに…私のせいなの? …怖い…怖いよ――耳を塞ぎ、うずくまる少女 #lovfan

2015-03-03 00:49:15
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

21.洞窟に閉じこもり数日。怪物達は、まるで何かを探しているかのように村に居座り続けました。その間、数度行われた傭兵達の作戦も全て徒労に終わります。そうしている内に、村人も、傭兵たちも、次第に憔悴していきました。 少女は占札を見ました――やっぱり、変わらない… #lovfan

2015-03-03 00:50:04
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

22.「またその札見てるのか? 心配するなよ 俺たちが絶対守ってやる 占いにもそう出てるだろ?」濃い疲労の色を見せつつも、明るく語りかける少年に、少女は困ったような笑顔で答えることしかできませんでした。 ――言えないよ…言ったらきっと本当になる…あの時みたいに… #lovfan

2015-03-03 00:50:52
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

23.さらに数日、食料も尽き、腹をすかし草をはむ者、洞窟から奇声を上げて逃げ出す者、皆限界に達していました。 やつれた表情で占札を見る少女。少女は目を疑いました――そんな…。 「バルドさん 占札に東側から怪物たちが来るって…見てきた方が…いいと思う」  #lovfan

2015-03-03 00:51:39
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

24「…? ならむしろここに居なきゃダメだろ 俺もここで皆を護る」 「……バルド行って来い」割って入る団長 「でもさ…」 「おめぇならすぐ帰れるだろ?ヘルマン傭兵団自慢の斥候バルドさんよ」 「チェ なんだよ団長まで」  少年は、きしむ体に鞭打ち洞窟を後にしました #lovfan

2015-03-03 00:52:07
浅尾祥正@主にLoVなアカ @10sbear

25「…さて 嬢ちゃんは賢いな 全部分かってるってわけか…」 気付くと、二人の後ろに叔父が立っていました 「団長…あのバルドという子はどこだ」 「ヒースランドさん お互い酷い顔色だな うちのバルドに何か用かい?」 「…限界だ あの子を渡せ」 「…どういう意味かな?」#lovfan

2015-03-03 00:52:33