ひみつ

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すみれ♡ @magic88word

1 『亮ちゃん!りょーおーちゃん!』 "おい亮、おまえのことじゃね?" 俺のこと亮ちゃんなんて呼ぶんは オカンぐらいなもんや あと… 『りょーちゃん、って!』 「え?おねえさん⁉︎」 あとこの人… 兄貴の奥さん

2015-03-09 01:57:41
すみれ♡ @magic88word

2 会社の先輩に連れられてきた イタリアンを食べさせるって 最近人気の居酒屋 その個室から顔をのぞかせて 俺を呼んでる 『偶然〜亮ちゃんも来てたの?』 「うん、もう帰るとこやけど」 『一緒に飲もうよ〜 ほら、この子たち知ってるでしよ』 兄貴の結婚式にも来てた彼女の友達

2015-03-09 01:57:54
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3 もうだいぶできあがってんな… 結局先輩を見送って店に戻る 『亮ちゃん、なに飲む? 私ハイボールジンジャーね』 「ちょっとピッチ早ない?」 『今日は亮ちゃんいるから 心おきなく飲めるー!』 「亮ちゃん亮ちゃんて恥ずいから…」 女子会って凄まじいな 飲んで食べて喋って…

2015-03-09 01:58:14
すみれ♡ @magic88word

4 その後もワイン開けて 焼酎のロックいって どんなけ飲むねんこの人ら… 俺は彼女を連れて帰らなって 全然酔えんかった 兄貴は俺と違ってエリートで 海外出張が多い 今も確かヨーロッパに行ってるはず 「さ、もう帰るで タクシー呼んで来るから、ちょっと 待っとってくださいね」

2015-03-09 01:58:29
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5 彼女の友達をそれぞれ タクシーに乗せて 店に待たせた彼女のとこへ 「歩ける?飲み過ぎやでー 兄貴おらんからってハメ外し過ぎや」 『ぜーんぜん大丈夫〜たのしー』 こんな酔うたとこ見たことない タクシーに乗り込むとすぐ 寄りかかって来る 「寝たらあかんぞー頼むわ、もう…」

2015-03-09 01:58:42
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6 「寝たらあかん言うてんのに」 そう言いながら 俺も急激に眠なってくる タクシーの適度な揺れと 肩にかかる重み ええ匂い…あのときとおんなじや… 兄貴と彼女は大学の頃からの付き合い そんときまだ俺は高校生やった 見た目も中身も幼かったから 2人にはいつも子ども扱いされてた

2015-03-09 01:58:56
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7 彼女が家に遊びに来ると "亮、ジュース買うてこい" …て千円渡されんねん 小一時間ウロウロしてから 帰らなあかんねんけど それでも彼女が来ると嬉しかった 亮ちゃん亮ちゃん…て 子ども扱いする彼女に勝手に恋してた …今でも俺、あのときのままやで

2015-03-09 01:59:07
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8 まだ俺が大学生の頃 スキー旅行に行った 兄貴と彼女 兄貴の同僚とその彼女 ほんで俺 完全、運転要員やけど嬉しかった 子ども扱いでもよかった 兄貴が運転してる間は 彼女の肩に持たれて眠った 兄貴はスキーも上手くて 俺と彼女は置いてかれる… それも嬉しかったな

2015-03-09 01:59:23
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9 ナイターも行こって言うてたのに 夕食に日本酒飲んで兄貴が潰れた 同僚カップルも部屋で休むって 「まだ滑りたい」 駄々をこねる俺 『しょうがないな〜」 保護者気取りの彼女 『降って来たね…思ったより寒いな』 夜のゲレンデで並んで乗るリフト 彼女が背中を丸めた

2015-03-09 01:59:39
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10 「あっためたる」 手回したら 『危ないよ』 また子ども扱い カチンときて言うた 「キスしてもいい?」 『は⁈』 「キスしたい」 『なに言って… 「してくれへんかったら こっから飛び降りる!」 ぐいって引き寄せたら 『はいはい、チュッ♡』 ほっぺたにされた

2015-03-09 01:59:50
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11 「そんなんちゃうねん!」 思わず怒鳴って…飛び降りた… 『亮ちゃん‼︎』 なだらかな高原のリフトは 低くていけると思た でも板をはいたままでは コントロールできず 新雪に思いっきし突っ込んだ 上から慌てて滑り降りてきた彼女に 引っ張り起こされる 『亮ちゃん!』

2015-03-09 02:00:01
すみれ♡ @magic88word

12 『亮ちゃん!大丈夫⁈』 「っ…立たれへん」 『無茶するから… どこか痛いとこは?』 膝ついて 俺の頭を両手でわしゃわしゃして 髪についた雪を払ってくれる 「い…たい…」 『ん?』 「痛い…ここ』 彼女の両手首をつかんで胸に引き寄せる 「ここが痛い…苦しい…」

2015-03-09 02:00:17
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13 『…え?』 困惑した彼女の手首を更に引っ張って 唇を覆った しんしんと降る雪の中 冷え切って震える身体 体温を求めて互いの唇を貪り合った pic.twitter.com/UKJSVHT3r0

2015-03-09 02:00:34
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14 「戻ろ」 それだけ言うてホテルへ帰る 乾燥室の奥にある 小さい工具室に連れ込んだ ドアに身体を押し付けて またキスする もう部屋は暖かいのに 歯がガチガチなるほど唇が震えた お互いなんも言わへん 吐息と微かな喘ぎ声だけ 彼女は拒まんかった… 俺は積年の想いを遂げた

2015-03-09 02:00:45
すみれ♡ @magic88word

15 お風呂から戻ったら 彼が目を覚ましてた 「ナイター行ってたん?」 『うん…吹雪いて寒かった…』 「そうか…俺、寝てもうてゴメン…」 彼がそっと私を抱き寄せてキスをする 優しいキス…いつもそう 亮ちゃんのぶつかるように 激しいキスが蘇って頭が痺れる

2015-03-09 02:00:52
すみれ♡ @magic88word

16 長い指が頬から胸におりてくる 深くなるキス… 『ごめん…スキーで身体中痛くて…』 胸を押し返す 「そ…か…朝早かったし疲れてんな もう寝よか」 優しく腕枕してくれる ごめんなさい…ごめんなさい pic.twitter.com/a5LEfboHtG

2015-03-09 02:01:06
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17 彼女との事バレてもええと思った でも…何事もなかったように その後すぐふたりは婚約した 小さいときから 兄貴の後ろばっかりついてった 兄貴の物をなんでも欲しがって 優しい兄貴は全部譲ってくれた 彼女だけは…無理やった

2015-03-09 02:01:16
すみれ♡ @magic88word

18 「もう降りるで、起きて」 『うん…』 肩にもたれて寝てると思てたら 彼女は起きてた… 起こそうとして握った手が気まずい そのまま握ってたら タクシーを降りる時 キュッと握り返してくる 「俺…帰らな…」 『もうちょっと飲み直したいな』 そう言われて胸が高鳴ってまう

2015-03-09 02:01:25
すみれ♡ @magic88word

19 手つないだまま エレベーターに乗って 潤んだ瞳を見つめる いつも俺が甘えるばっかりやけど 今日はわがまま言うてくれる… それも嬉しい 『こっちみないで…』 「なんで…ええやん」 手に力こめる 「さっきタクシーの中で… 思い出しててん…あんときのこと」

2015-03-09 02:01:35
すみれ♡ @magic88word

20 部屋に入って 玄関のドアに押し付ける 覚えてる…? あんときもこうやったやろ おでこひっつけて囁いたら もうとろんと開く唇に舌をねじ込む 毎晩ひとりで寂しいん? 俺…兄貴のかわり? ええで、それでも… pic.twitter.com/NOMX3STi6c

2015-03-09 02:01:47
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