────… 「 お目覚めの時間だよ、 リリディアナ 」 不確かであった 《夢》の声は いまや明瞭。 拒まれぬならば 其のかんばせに そと 口付けを落としながら、
2015-03-07 23:30:46触れる口付けに応えるように、睫毛が震える。 静かに現れるのは湖畔の色彩。 「初めて、名前を呼ばれた気がするわ?」 ゆるりとまたたく。
2015-03-08 18:02:16- 緩やの仕草 上がる白幕、 湖の深みを覗きて 翠緑が笑む。 「 嗚呼、 初めて 呼んだとも。 人間の名は 僕との契約の意思を確かめた者しか 呼ばない事にしているんだ───たとえば 君の其れが 忌み名だとしてもね 」
2015-03-09 15:13:19「 ───さて、だ。 かれらと話して 君の希いは 定まったかい? 」 巨躯は 寄せて居た 身を起こし、 起床を促すよに 手を差し伸べん。
2015-03-09 15:13:46「悪魔には悪魔なりのルールがあるみたいだから、構わないけれど」 三日。長いようで短い数日、初めて聞いた彼等の話は思ったよりも不自由である様に感じた。 差し伸べられた手に、白く傷一つ無い手が乗せられる。 軽く引かれるそれに助けられるように身を起こし。
2015-03-09 16:02:28「私の希い。──国が欲しいわ」 銀の魔の手を取ったまま、その瞳を見つめる。 「奪われない。奪わせない。あなたの言う通り、きっと私は全てを奪いさった後……喪った後でも、畏れ続ける。だから」
2015-03-09 16:47:55「愛しているものを、不当に奪われない様にしたいの」 言い切った後少し困ったような顔をする。 「そうは言っても、具体的な方法は思い付かないのだけど。それに、あなたの好みからは外れてしまったかしら」
2015-03-09 16:47:58「 そうとも。 個体差は有るだろうけどね、 君たちのような 破れる決まりは そう多くは無い 」 白色を 手引き腕は 土壌の褐色。 壊れ物を触れる力の加減。 「 ふむ───其れには、 君の云うところの不当が 何を差すのかを 知らなければならないかな 」
2015-03-10 17:44:50- 夢で 白い腕に絡みし 銀蛇は 其処には居なかった。 床を 地を 埋め尽くさんばかりの髪が 有るばかり。 虫食み行く証に 銀の産毛を纏いたる葉が 絨毯のよに 地を広ぎ 「 欲するから奪う。 生きる事を容易にする為に奪う。 其れは 生き物ならば 至極当然の欲求だろうとも 」
2015-03-10 17:45:25「 そう云う意味では 君の国に攻め込まんとする者達の行動は "正当"だし───嗚呼、 そうだね。 君の望むこと其のものは、 僕好みとは 云えなくなったかな 」 瞼を伏せ 語る調子は 変わらない。 尤も これまでとて 微かな変化でしか無かったものだが。
2015-03-10 17:45:42「 まあ、 でも 」 瞼を上げ 深めた微笑。 湖水へと 溶け込まんとするが如く、 蕩ける翠が 白く濁る。 「 今の状況が 僕にとって好ましくない、と 云うわけでもない。 ───云ってみておくれ、 君の思う "不当"と "正当"を。 其の希いには 其れが、 不可欠だ 」
2015-03-10 17:46:16「破るにしても、人間にだって個体差はあるけれど」 他愛もない会話を口にして。 「他者の"正当"なんて、求めていないの」 褐色の手、滑る様に白い指を絡める。
2015-03-10 21:17:58「私の国だもの。私から奪って、私のものになった愛しい愛しい私の国。誰にも渡さないわ?」 緩やかに微笑む様は、百合の様に。けれどその言葉は傲慢に。 「好みの願いで無くなってしまったのは申し訳ないと思うけれど――状況は、好ましいのかしら」
2015-03-10 21:18:03「不当。何度でも言うわ。私から、奪う事よ」 浸食する緑が地を覆う中、女王は微笑みを湛える。 「私の許可なく、理不尽に、突然に、奪う事。それだけは許さない。許したくないのよ。反対に……正当なのは、そうね。私が許せると思う事かしら?」 最後の言葉だけは、僅かに首を傾げながら。
2015-03-10 21:18:23「 君は そうだろうとも。 いやさ、 そうでなくては 面白くない 」 くつ くつ 雑音めいた音でなく 笑み声が 空気を震わせる。 「 君は願う側で 悪魔に対して 義理立てなど する必要など無いだろうに。 あまり遠慮して居ると 喰ろうてしまうよ 」 絡められたる指を 握り
2015-03-11 09:44:07「 何事にも イレギュラーが付いて回る方が 楽しいものだ。 願いよりは君の在り様が面白い───然し 」 其れも又 一興だ、と囁きて。 然し、と 今一度 繰り返しては、 一拍。 「 如何しようかな。 許せるか否かの基準は、 僕には解らないからね 」
2015-03-11 09:44:18「 だから───君自身が 手を下す方が早いだろう。 リリディアナ 」 緑の香。 苦く 苦く 空気を 占める。 湖水の世界を、 可憐な色の 居場所を、 徐に─── 「 奪いし者を退ける力を 君が得ると云うのは 御気に召すかい? 」
2015-03-11 09:44:53「あら。食べるのは別に構わないけれど。願いが叶ってからにしてちょうだい?」 言われた言葉をそのままに受け取り、ねだる様に言う。 「遠慮をしているつもりは無いのよ。最初にあなたに声を掛けた理由がそれだったから、申し訳なく思っただけ」
2015-03-11 20:26:54「それは褒められているのかしら。……そう、ね。私が許せるかどうかは私しか解らない事でしょうけど」 立ち込める香り。深い緑。浸みるように、染みるように。 「そう……そうね、それもいいかもしれないわ」
2015-03-11 20:33:19「 おや、 そんな風に 軽軽しく 答えて良いのかな? 願いを叶える前に 其れを成す事は無いから、 其処は安心して貰って構わないけど──── 」 遠慮をしているつもりは無い。 そう 答えを返されば、 そうかい とだけ、 柔く返したりて、
2015-03-11 21:59:42- ───空きたる侭の手が 珊瑚色の 絲へと伸びる。 「 君が力を振るうのと 僕が力を振るうことの 何が 違うと云うんだい? 」 ─── …
2015-03-11 22:00:09「 君は 己が手で成したい事を 成せないから、 僕が力を貸す。 素手で殴るのか、 僕と云う武器を 君が振るうか、 其れだけの違いだ 」 そうは思わないかい? そう、 語尾を上げたりて
2015-03-11 22:00:23- 繋ぎた手を 引き寄せ 其の薬指の爪に 口付けんと。 「 傲慢なる 赤の女王様。 僕と云う武器を 好きな形に変えると良い。 此の手に 最も扱いやすく、 其の目的に 最も即した形に 」 いつしか銀纏いたる緑葉は 風に揺れるよに さわさわと 音立てて
2015-03-11 22:01:03