胡蝶巡りし希いの淵 三日目の現実

夢は見果てた。
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人間《ディアドラ》 @actSkbz

書面を特に読みもしないのは、今更何が書いてあったところで躊躇う事も無いからだろうか。 かりかりと紙面を引っ掻くような音の後、  ──“ディアドラ・ハベトロット” と、存外綺麗な字で記せば。 「これでいいの?」 と書面を摘まみ、渡した。

2015-03-11 02:28:46
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

「これで」 受け取る。 契約の紙面は燃えつき、薄靄となってあたりを漂う。 「契約は交わされた」 「――我が黄金」

2015-03-12 00:43:22
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

褐色の男は、芝居がかった口調に戻る。 跪いて、胸元に手を当てる。頭を垂れて、 「――お命じください。それが可能と思われるかぎり」 「物語をお聴かせください。貴女の物語を」 「この家は。婚約者は。どこで暮らし、何をみるのか」 「――この、下僕めに」

2015-03-12 00:45:03
人間《ディアドラ》 @actSkbz

薄靄となって消えた紙面に目を細め、小さく頷く。 「そうね、」 思案するように目を伏せる。 「まずはわたしが此処から逃げる。  “可能性”としての話なら、わたしが、向こうに贈られる、その瞬間……とかかしら」 悩ましげに、そう言って。

2015-03-12 17:57:21
人間《ディアドラ》 @actSkbz

壁に掛けられた白いドレス。 陽が昇り始め、そろそろ天辺に辿り着こうかという頃合いだ。 ──きっともうすぐ、外から声が掛かる。 「……ああ、そうね」 何を思い付いたのか、小さく笑い声を立て。 「──噂を聞き付けた怪しい風体の男に、《取り替え児》は攫われ、行方知れずとなりました」

2015-03-12 17:57:23
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「なんて、悪くないと思うのだけれど?」 どう、ファルドル。 名前を呼ばう。楽しげに浮かべる笑みは、小悪魔的に映るだろうか。

2015-03-12 17:57:25
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