【ツイ鎮】#ボクの考えた艦これ最終回　まとめ

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

【注意】このツイ鎮は十割妄想です。後半艦娘出ません。苦手な方、気分を害した方はブロック、リムーブ、ミュート等お願いします。27ツイートあります（ツイ鎮の分量じゃない） #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

いつもの波止場で、俺は彼女が夕日を背に佇むのを認めた。 白銀の髪は夕日を反射して煌めき、服のあちこちが焼け焦げているのもまた、彼女の果たした大願の勲章と思うと愛おしさを覚える。 どんな話をしようか……などと考えながら、俺は彼女の元に歩み寄った。 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

「おかえり、翔鶴」 「ただいま……あなた」 差し伸べた手を取ろうと伸ばした彼女の手は、しかし。 俺の手に重なることなく、すり抜けた。 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

「は……？」 一瞬、何が起きたか理解できなかった。 瞼をこすり、改めて見据えた彼女の姿は……朧気な光に包まれ、微かに霞んでいるようにも見える。 「この時が、来てしまったのですね」 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

口を開けたままの俺に向かって、彼女は小さく笑みを浮かべる。 ……どうして、そんなに悲しい笑顔をしているんだ。 「この時……そんな、まさか」 翔鶴の口にしたその言葉に、俺は心当たりがあった。 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

それは、俺が切り出した話だった。 『全ての戦いが終わって、静かな海を取り戻したら、翔鶴たちは消えてしまうんじゃないかって――』 はっとした俺に、翔鶴は小さく頷いて。 「どうやら、そのようですね」 　膝が、崩れるかと思った。 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

「い、いや、ちょっと待ってくれ……」 声が、震える。 「やっと、やっと終わったんだ。深海棲艦は全滅、海域は全て解放され、やっと静かな海を取り戻したんだぞ……！」 「はい。最後の作戦指揮、お見事でした」 「ふざけるな！」 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

「俺は、俺は……！　この海で、翔鶴と、皆と、やりたいことが山ほどあるんだ！　これまで忙しかったぶん内地でゆったりとした時間を過ごしたいと……！」 「常に先々のことを考え、目先にとらわれない……そんなあなただからこそ、私は、皆は信じてここまで来れました」 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

「それでも、そこに翔鶴が……皆がいなければ意味がないじゃないか！」 どろりとした黒いものが、熱を奪って沈んでいく。 「こんなことなら、深海棲艦を全滅させなければよかった！　平和な海なんて、戻ってこなければ――」 「提督！」 「っ!?」 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

霞んでもなお凛としたその声が、胸の底に沈みかけた熱を呼び覚ます。 「どうか、どうかそれだけは言わないで……最後まで、私たちの想いは一つでした。それを嘘にしたまま、私を眠らせないでください」 「翔鶴……すまない」 こんな時に鼻水がひどい。空気読め。 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

「そう、だ。俺たちはただこの時を夢見て戦いに明け暮れ、それは今、確かに成った。俺はそれを心から嬉しく思うし、君と……皆と、それを達したことを誇りに思う」 「私も、最後まであなたのお役に立てて、本当に嬉しかったです」 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

もう、翔鶴の姿はほとんど見えない。それでもなぜか、彼女の満面の笑みと、そこに伝う一筋がはっきりと脳裏に浮かんでくる。 「なあ、翔鶴。俺はこれからどうすればいい？　翔鶴たちがいなくなって、深海棲艦がいなくなったら、俺は、どうすれば……」 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

「あなたにしかできないことはたくさんあります。あなたはあなたの道を……他の誰も歩むことのできない、あなただけの道を歩んでください」 少し、間を置いて。 「……その隣を、共に歩むことができないのは残念ですが……」 もう、限界だった。 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

「嫌だ、翔鶴……俺はこれからの道をずっと、君と共に歩きたかった。それなのに、こんな……嫌だ、悲しい、寂しい」 「ふふっ、あなたの弱音、久しぶりに聞きました」 本当におかしそうに、最後まで笑顔を絶やさずに。ただ彼女の頬を伝う滴が、零れ落ちては消えていく。 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

「そうですね。もし、叶うなら……」 消えゆく光の中、彼女は小さく瞳を閉じて。 「また、会いましょう。あなたが守ったこの海で、私は……翔鶴は、静かにその時をお待ちしています」 「……ああ、約束する。きっとまた、会おう。君が守ったこの海で」 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

最後の輝きが爆ぜ、そして―― ――そこにはただ、波の音だけが残った。 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

瑞鶴も、由良も、朧も、霧島も、陸奥も、摩耶も、秋雲も……きっともういないのだろう。 話したいことは山ほどあった。これからやっと、彼女たちと楽しい時間を過ごすことができると、信じていたのに。 最後の最後で、俺は無力で。 最後の最後まで、俺は提督だった。 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

「ぐっ、ううっ……」 伝えきれなかった感謝の言葉と、言えなかった別れの言葉と。あらゆる想いがごちゃまぜになって……必死で支えてきた膝が、涙腺が、一気に崩れた。 「うあっ……あああっ……！」 こぼれ落ちる涙と共に、彼女たちと過ごした記憶が脳裏を駆け巡る。 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

右も左も分からなかった着任当初から、大規模作戦を組織的にこなすようになった今まで……彼女たちと支えあいながら、今を迎えるまでの、ありとあらゆる記憶が。 「っく……あり、がとう……っ！」 声にならない声を震わせて、絞り出した言葉に、また胸が熱くなって。 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

その日、俺はその場で一晩中泣き明かした。 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

◎　　　　◎　　　　◎ 艦娘によって全制海権が奪還されてから時は流れ。深海棲艦による直接的、間接的な被害を受けていた国々はほぼ復興の一途を辿りつつあった。 鎮守府跡はそのままの形を残し、異例の早さで世界遺産として登録されている。 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

艦娘たちが国益のためでなく、世界の平和を目指して戦っていたこと。それが、世界中で認められたからに他ならない。 そして、そんな艦娘たちを指揮し、完全勝利に導いた提督は今……今日初の出航を迎える海底調査艦「べっぷ」のデッキで静かに水平線の先を見つめていた。 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

艦娘が消えたのち、海自は海洋調査艦を更に海底探索に特化した海底調査艦を導入。他の艦種から改装し、世界中の海を――特にあの大戦で日本側の艦艇が沈んだと思われる場所を、徹底的に調査していた。 この国を二度救った彼女たちに敬意を払い、感謝を伝えるために。 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

そしてこの年。改装艦ではない、最初から海底探索に特化して設計された海底調査艦が就役した。それがこの「べっぷ」である。 提督はその初代艦長として乗艦し、遠洋の海底探査に参加することとなっていた。初任務の目的地は……マリアナ沖周辺海域。 #ボクの考えた艦これ最終回

鞍馬子竜 @shiryu_tcg

「ついに、ここまで来たぞ……」 万感の想いで、その男は海に向かって語りかける。 提督が提督としての役目を終え、艦長としてここに立っている。今日に至るまでには文庫本一冊程度では到底収まらないほどの長い道のりがあった。 #ボクの考えた艦これ最終回