【第四部-壱】雲龍のスキンシップ #見つめる時雨

雲龍×時雨
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雲龍視点

とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

先日引っ越してきた寮内を散策する。色んなコが色んな表情で思い思いの時間を過ごしている。今までいた空母寮はいつも静かで、決して嫌な静けさではなかったのだけれど、ここのように賑やかなのも悪くない。むしろ、好き、かな。

2015-03-13 23:00:29
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

談話室を覗く。ここには誰がいるかしら。…あ。 「…あれ、雲龍。どうしたの? そんなところで立ってないで、こっちにおいでよ」 私は部屋の中へと足を踏み入れた。彼女の声に誘われるように。 「こんばんは。時雨」 「こんばんは」

2015-03-13 23:02:44
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「ひとり?」 「さっきまで龍鳳がいたんだけど、提督に呼ばれてね。多分、明日の演習の件だと思う」 私は空いていた時雨の隣に腰を下ろした。時雨の方を見下ろすと、彼女のちょんと跳ねた髪の毛が目に映る。私は指でそれを撫でてみた。サラサラしてとても良い手触り。でも指を離すと、ほら、ふふ。

2015-03-13 23:06:30
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「雲龍…?」 彼女の髪はいくら触っても飽きない。この可愛らしい癖っ毛だけでなく、手入れの行き届いている髪の手触りや、日によって編み方が少しづつ違う三つ編みを楽しんだ。時雨は抵抗しない。たまにくすぐったそうにするくらいで。その時の表情もまた、可愛くてね。

2015-03-13 23:09:43
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…そんなに僕の髪触って楽しい?」 「うん、とても」 時雨の髪から香る、ふんわりした甘い匂いを吸い込む。すんすん。 「ね、ねぇ…そんなにされると、ちょっと恥ずかしいな…」 「こんなにいい匂いなのに?」 「えっと…あ、ありがとう…」

2015-03-13 23:12:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

私は髪から覗く時雨の耳がほんのり赤くなっているのに気づいた。そして、気づいた直後には気持ちの赴くままに行動を起こしていた。美味しそう。そんな気持ちの。 「ふぅぁ…!?ちょ、ちょっと雲龍…!?」 軽く胸を押し返される。息を少し荒くした時雨が耳を抑えながら私を見ていた。

2015-03-13 23:19:35
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…み、耳は駄目だって…」 「どうして?」 「ど、どうしてって…もう、何で雲龍と二人になるとこんな風になるんだろう…。駄目だよ、皆にこういうことしちゃ…」 怒られた。でも、それだと時雨はいいってことなのかしら。私、これでもひとはちゃんと選んでいるから、安心して。

2015-03-13 23:22:11
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「時雨、ぎゅっとしていい?」 顔を赤らめながら手を胸の前に置く時雨を見ていたら、無性に抱きしめたくなった。だけどさっき怒られてしまったから、今度はちゃんと許可を貰わないと。 「え…えっと」 時雨が困ったように目を泳がせる。そして少しして…小さく頷いた。

2015-03-13 23:37:33
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

時雨の両肩に手を置くと時雨は身体を震わせた。私はそのまま背中へと手を滑らせ、胸の中に時雨を抱く。…ああ、私の胸にすっぽりと収まってしまう時雨がたまらなく愛しい。 「う、雲龍…あんまりぎゅってされると苦しいよ」 「ぎゅ」 「逆だってば…」

2015-03-13 23:45:29
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「あー!!」 廊下の方から聞き馴染みのある声が聞こえてきた。 「雲龍!?時雨に何してるんですかぁ!?」 「ぎゅっとしてるの」 「それは見ればわかります!とにかく離れてくださいー!!」 龍鳳がすごい剣幕で言うので、私は名残惜しさを感じながら時雨から離れた。

2015-03-13 23:48:24
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「私が時雨に抱き付けるようになるまでどれだけかかったか…なのに…」 龍鳳がぶつぶつ言いながら時雨を腕に抱えている。…ずるい。 「ねぇ、私にも抱っこさせて」 「あはは…」 時雨が乾いた声で笑う。その時、龍鳳の人指し指が私の口元に向けられた。 「う、雲龍はもう少し遠慮してください!」

2015-03-13 23:51:05
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

龍鳳の指をじっと見る。丁寧に手入れされた爪は、これで引っ掻かれても傷ひとつつかないように思えた。…綺麗な指。 「ひゃああああ!!?」 私の口の中に含まれた指が、勢いよく引き抜かれた。龍鳳が目を丸くしている。…そんなに驚くようなことをしてしまったかしら。

2015-03-13 23:53:46
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「い…いきなりひとの指を舐めるひとがいますか!!」 「…私?」 龍鳳の指、とても細くて綺麗だったから、つい。 「うぅ…暖簾に腕押しです…」 龍鳳が項垂れる。…大丈夫?

2015-03-14 00:01:51
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「雲龍姉様、もう消灯の時間ですよ…あら、龍鳳さん、時雨さんも。お二人も消灯ですから早く戻られた方がいいですよ」 あら、天城。もうそんな時間なのね。時雨と一緒にいると、時間があっという間に過ぎてしまう気がするわ。 「龍鳳、時雨。また明日ね」 ひらひらと、二人に手を振る。

2015-03-14 00:07:06
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「雲龍姉様、お二人と何してたんですか?」 廊下を並んで歩いていると、天城がそう尋ねてきた。 「んー…何かしら。スキンシップ…かしらね」 「スキンシップ、ですか」 「うん」 天城がまだ疑問符がついた表情で歩く。まぁでも、間違ってないわよね。

2015-03-14 00:13:27
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「でも」 天城が、小さく微笑みながら言った。 「姉様が楽しそうで何よりです」 天城の笑顔に、私も口元が緩んだ。ふふ、そうね、楽しかったわ。とても――

2015-03-14 00:20:15