ミイラレ!:幼馴染と蛇神のこと♯1(原文のみ)

やたらと怪異に好かれる少年と退魔師の少女が久しぶりに再会とかする話。の、原文のみ版です。 実況付きはこちら→ http://togetter.com/li/795874
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「まあ、聞きたいことはいろいろあると思うけどさ」戸惑いを隠せない四季に、怜が言う。「ここで立ち話ってのもなんだし、移動しながら聞くよ」そして彼女は頭上に片手を掲げる。つられて四季も視線を上げた。空から、ひらひらとした何かが降りてくる。16 #4215tk

2015-03-17 18:32:17
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

呆然と見守る四季の目の前に、それは落ちてきた。白色の布……反物、というべきか?とにかくそうとしか形容できないものが、怜との間に舞い落ちてくる。彼女の腰あたりで反物は静止。地面に落ちることなくたなびく。怜は躊躇もなくそれに飛び乗った。17 #4215tk

2015-03-17 18:34:14
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

彼女が乗っても、反物はびくともしない。「さ、乗って」面食らう四季に、怜は再び手を差し出した。四季は呆然とそれを見つめ……意を決したように落としていた荷物を拾い上げてから、その手を取る。手を借りて乗った途端、反物はゆっくりと上昇し始めた。18 #4215tk

2015-03-17 18:35:25
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季と怜を乗せた反物は、螺旋を描くように天を登っていく。怜が前方に左手を差し伸べる。巻き付いた赤い帯がひとりでに解け、彼女の腕を離れていく。赤帯は螺旋の行く先に飛んでいき、大きな円を作り出した。反物が加速し、その中をくぐり抜ける。19 #4215tk

2015-03-17 18:40:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

途端に景色が一変した。目に飛び込む夕焼けの色に四季は眼を細める。肌に触れる空気が微妙に異質なものとなる。彼にとっては、今まで何度も味わった感覚。「……異界?」「そう。さすがに四季は知ってるか」怜が答える。真横に伸ばされた彼女の左腕に、再び赤帯が巻き付いた。20 #4215tk

2015-03-17 18:45:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季は周囲を、そして反物から身を乗り出し下を見た。さっきまで自分達のいた道路を車が往く。しかし、自分達に気づく様子はない。いわゆる霊感のない人間には、異界を、そしてその中に潜む『住人』を見ることはできない。四季は短い人生経験からそれを知っている。21 #4215tk

2015-03-17 18:50:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「じゃ、行こうか」怜の声に、四季は視線を戻した。こちらに向き直っていた彼女と対面する。「行くって……どこへ?」「四季の新居。高校に通うために引っ越すんでしょ」目を丸くした四季に、怜はバツが悪そうに笑みを浮かべた。「調べてたんだ、いろいろと」22 #4215tk

2015-03-17 18:55:13
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「調べたって……何を?どうやって?」「まず『何を』から答えるよ。まず四季が通うことになる高校と、引越し先」四季はまじまじと怜を見つめた。彼女は事も無げに言う。「私も同じところ選ばせてもらったから」「同じって」「学校と下宿先。四月からは一緒だね」23 #4215tk

2015-03-17 19:00:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「本当に?」四季は思わず言葉を漏らす。「そこで嘘ついてもどうにもならないでしょ」「いや、そうかもしれないけど!なんでそこまで」「うん。四季の『友達』に備えるためだね」友達、という一言に四季は硬直する。怜の表情は至極真面目だ。24 #4215tk

2015-03-17 19:05:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「そう、学校や下宿先なんかはついでなんだよ。もともと調べてたのは四季の交友関係」そこで言葉を止め、怜は少しだけ首を傾げた。「って言っていいのかな、あれは?ともかく、四季のところに来てる『怪異』のこと。……よくあれだけの怪異の前で平然としてられるよね」25 #4215tk

2015-03-17 19:10:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

呆れたような彼女の言葉に、四季はなんとも言えない表情を浮かべる。怪異。それこそ子どもの頃から付き合いのある存在。だが、彼らについて四季が知ることは少ない。『妖怪』や『都市伝説』という括りで語られるもの。異界の住人。そのくらいのものだ。26 #4215tk

2015-03-17 19:15:16
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季の周囲には、常に怪異の影が付き纏っていると言っても過言ではない。手を引かれて異界に連れて行かれたことも幾度となくある。そのために小中学では寂しい学生生活を送ってきた。特に怜が引越してしまった後は。怪異たちに悪気はないとはいえ、居た堪れなかった。27 #4215tk

2015-03-17 19:20:35
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「けど、その」唾を飲み込みながら、四季はゆっくりと口を開く。「確かに……えーと、怪異は怪異だけどさ。そこまで悪い奴らじゃあ」「四季の前だけならそうかもね」一言の元に切って捨てられ、彼は口を噤んだ。怜は肩を竦める。「他の人間に悪さしないとも限らない」28 #4215tk

2015-03-17 19:25:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「まあ、報告の限りそこまで悪質な怪異はいないみたいだけど」「ああ、良かった……待って、報告?誰から?」「そうか。まだ『どうやって』を説明してなかったね」思い出したように怜が手を叩いた。その首元に、白く細長い何かが滲み出るように姿を表す。29 #4215tk

2015-03-17 19:30:02
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

薄ぼんやりとしていたそれは徐々に輪郭を濃くしていき、最終的に一匹の白蛇の姿を取った。蛇は鎌首をもたげ、四季を見据えて笑う。『久しぶりじゃの小童。元気にしとったか?』四季は眼を瞬き、怜と白蛇を交互に見つめた。どう答えればいいものか、考えあぐねながら。30 #4215tk

2015-03-17 19:35:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

【ミイラレ!:幼馴染と蛇神のこと】♯1終わり。♯2へ続く #4215tk

2015-03-17 19:36:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

◇客電◇以上で本日の投下は終了です。ミイラレ!はだいたい1セクション30ツイートくらいでまとめられればいいなと思っています。四季の高校生活はどうなるのか。ごきたいください。実況してくださった皆様ありがとうございます!まとめは早めにやります◇客電◇ #4215tk

2015-03-17 19:37:48

つづきのおはなし:
http://togetter.com/li/797428 (原文のみ)
http://togetter.com/li/797423 (実況付き)