ペイルホース死す! #4(実況なし)

ダイハードテイルズ出版局・本兌有によるツイッター連載小説"ペイルホース死す!"より @diehardtalesによる#4のまとめ(実況なし) #1 http://togetter.com/li/783878 #2 http://togetter.com/li/785219 #3 http://togetter.com/li/791349 続きを読む
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ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「そんなルールは無い」ギロチンめいて断頭された鼠頭の首から血が溢れ出す様を見ながら、ミメエが冷たく言った。分離した彼女のもう一方の手は、飛びかかって来た小男を空中で貫いたまま静止している。「アタシらの命、等しく価値が無い」「たいした事ねえ連中だぜ」ギャスは素早く起き上がった。16

2015-03-18 00:10:15
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「働きな」ミメエが鼠頭の剣を蹴ってよこした。「引き続き盾になるんだよ」「アマ!クズ傭兵のカタをつけたんだから、後はボゾにやらせりゃいい……」空を裂く音が接近してくる方向に、ギャスは怪訝な目を向けた。ボゾの歪な金属巨人はゆっくりと防御姿勢を取ろうとする。音の主はそこに衝突した。17

2015-03-18 00:14:28
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KRAAAAASH!分解しながら仰向けに倒れる巨人の破片を逃れ、ギャスとミメエは全力で走った。「何だありゃあ?」ギャスが走りながら振り返った。「物事ややこしくなりやがって!」飛来したもの……ボゾに体当たりを食らわせた白磁の巨人が、背部ブースターを切り捨てながら流麗に着地した。18

2015-03-18 00:21:34
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「ありゃあ手に余る。休憩、休憩」ミメエは遮蔽物の陰に座り込み、飲料水のチューブを咥えた。「サボるンじゃねえ、ボゾ!」ギャスが叫んだ。その視線の先、バラバラの堆積物がふたたびワイヤーに引きずられて集まり、ザワザワと隆起を始めた。ボゾが巨人を再構築している。先程よりイビツな体を。19

2015-03-18 00:25:06
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「タロスとも違う?あの悪趣味な貴族趣味ときたら」ミメエが遮蔽物の陰から顔をのぞかせ、顔をしかめた。「ロボットに奢っちゃって……」白磁の巨人は蠢くボゾの奇襲を警戒し、中腰姿勢を取って、拳を高く振り上げた。渾身の一撃をもってトドメをさそうというのだ。 20

2015-03-18 00:31:25
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「ときに、ウンブダの恍惚野郎!」ギャスが舌打ちした。「あの神がかり野郎はどこで油を売ってやがンだ?どいつもこいつもロクに働きやがらねえ……」拳を振り下ろそうとした白磁巨人の人工エメラルドの単眼が、緑の火花を放って爆ぜた。遠距離からの狙撃だ。ギャスは頷いた。「要はそういう事よ」21

2015-03-18 00:39:31
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白磁巨人が怯んだ隙に、ボゾはゆっくりと起き上がった。そして襲い掛かった。白磁巨人は目から煙を噴いたが、その機能にさほど影響は無いと見え、いびつな巨人の手と手をぶつけ合って、せり合いはじめた。ギャスはクロスボウを拾い上げ、矢を装填する。包囲兵の生き残りが向かってきたのだ。22

2015-03-18 00:54:42
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……「まったくもって!くだらぬ悪あがきよ!」<西の夕闇>は敵を嘲った。彼は城内に設けられた遠隔操作コクピットに己の身体を固定し、額に充てられた金属の輪からは脈打つチューブが伸びて、諸機械と接続されている。24

2015-03-18 00:56:29
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その左目には黒い眼帯が嵌められている。裸眼の右目でモニタ類を確認、城内で繰り広げられている重大な競り合いの趨勢を監視するとともに、左目の眼帯装置を通して、白磁の巨人の目から敵を見据えているのだ。遠隔狙撃のダメージは致命的とまではいかない。彼は巨人のバランスを立て直しにかかる。25

2015-03-18 00:56:43
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

押し合いは容易だ。白磁の巨人が力を込めると、不恰好な屑鉄の集積物は後ろへ押し出される。鉄屑を寄せ集め身体を形成する原理は不明で奇怪だが、この白磁巨人の工芸品としての美しさの極み、流線型の機能美、美の力が後れを取ることは決してない。<夕闇>は塵の巨人を引きずり倒しにかかった。26

2015-03-18 01:00:38
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「ぐむう」彼は怯んだ。耳と鼻から血が流れた。「なにが」左目に入ってくる視覚情報にささくれたノイズが混じり始め、動作の伝達にぎこちなさが生じ始める。「これは」白磁巨人と同調した彼の両手は、皮膚の下を虫に這われる間隔を伝えてくる。彼は事態を推察した。塵の巨人の血管じみたチューブ。27

2015-03-18 01:03:54
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『何をしておる。倒せ!』「良いところなのだ!」<夕闇>は<白夜>に言い返す。<白夜>が取引として差し出した奪還作戦の情報が功を奏し、裏手からイルダの寝所に向かっていた一団を撃破する事に成功していた。『倒すのだ!』「だから今やっている……」『我々に留まる事態を超えて来たのだ!』28

2015-03-18 01:09:27
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何を言っている?<夕闇>は訝しんだ。その瞬間、腕の違和感は彼の脊髄近くまで這い登り、視界が真っ白に吹き飛びかけた。「嗚呼!」<夕闇>はやむを得ず白磁巨人との同調を解除した。これは彼にとって幸いだった。未練から切断を遅らせれば、彼は発狂していたかもしれない。ボゾの浸食によって。29

2015-03-18 01:12:12
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「ゲホッ!」<夕闇>は咳き込み、使い物にならなくなった眼帯を引きちぎった。状況モニタの向こうで、白磁の巨人にはワイヤーが茨じみて這い狂い、無残な有様をさらしつつある。「貴様のせいで私の巨人はみすみす勝ちを逃したぞ!」『光芒会議の使者だ。<夕闇>よ』<白夜>の声は深刻だった。30

2015-03-18 01:15:45
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「使者?何だというのだ。何の用だ」『状況への介入を申し出てきているのだ』「バカな!左様な治外法権を認められるものか。我らは貴族!光芒騎士に何たる……」<夕闇>は予想外の方向から飛んできた憤怒になかば失神しかけた。「許せんぞ!神聖なる戦さの最中だ。貴様は何を弱腰になっておるか」31

2015-03-18 01:20:48
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

だが<白夜>の諭すような声は沈痛ですらあった。『戦士(チャンピオン)が来ている』「戦士だと」<夕闇>は息を呑んだ。『三名だ』「三名だと?」<夕闇>は叫んだ。「三名……何故そんな……」『鳥人ミリリイオーキ、顔無きクルワル、そして』<白夜>は深く呼吸したのち、『<火の諍い女>だ』32

2015-03-18 01:27:55
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

<夕闇>は恐怖のあまり身体を痙攣的に震わせた。「<火の諍い女>……何故……」『三名だ』<白夜>は繰り返した。「引き延ばせ。到着を」<夕闇>は呻くように言った。「とにかく時間を稼ぎ、考える……」『奴らの船は現在』<白夜>は言った。『この星の大気圏上に静止しているのだ』33

2015-03-18 01:33:47

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(【ペイルホース死す!】 #4 続き)

2015-03-19 22:01:57
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寿命をとうに迎えた太陽を延命する技術の秘密が<光芒>であり、この秘密を握る光芒会議を頂点とする光芒同盟が、現在の太陽系とその周辺を掌握する秩序の形態だ。戦士は光芒会議に直属する。領地を持たぬが、実際の権力は諸貴族よりも余程強く、一人一人の存在そのものが法と言ってもよい。 34

2015-03-19 22:14:51