ペイルホース死す! #4(実況なし)

ダイハードテイルズ出版局・本兌有によるツイッター連載小説"ペイルホース死す!"より @diehardtalesによる#4のまとめ(実況なし) #1 http://togetter.com/li/783878 #2 http://togetter.com/li/785219 #3 http://togetter.com/li/791349 続きを読む
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ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「だが何故、彼らがこのような辺境に?我々に後ろ暗き事などなにひとつ……」夕闇は繰り返した。『自明であろう。<青ざめた馬>だ!』白夜が言った。『会議の内情は知らぬ。だが、会議の犬めいて暴虐の限りを尽くしてきたキャプテン・デスの一味にいよいよ年貢の納め時が参ったという事だろう』 35

2015-03-19 22:21:38
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「よりによもってこの星で!」夕闇は震える手で覚醒シリンジに手を伸ばしながら、歯噛みした。「主権侵害を許すな。決して許してはならぬ。勝手をするなよ、<白夜>」『だが、大言壮語と共に送り出した貴様の巨大白磁兵もあのザマとなった今……』「待て」夕闇が遮った。彼はホロ映像を見やった。36

2015-03-19 22:25:03
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「なんだ。あれは」夕闇は呟いた。『どうした』「あれは。そんな馬鹿な」『どうした』「レーダーが拾っていないなどと……」『どうした!』「電磁波を発しておらぬゆえ……つまり、だが、いや、そうとしか……」『どうしたッ!』ついに映像はそれを肉眼で捉えられる精度で捕捉した。「竜だ!」 37

2015-03-19 22:32:15
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……ザラカは巨大な翼を最大に拡げ、空中で急停止した。「うがッ」キャプテン・デスは衝撃によって気絶しかかったが、ピオのバリアの補助が間に合い、それを免れた。「ザラカ」咎めるピオを無視し、竜はその場で羽ばたきながら、冷たい双眸で、遠く地平にかすかに見える建造物を睨みつけた。38

2015-03-19 22:37:26
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「命令通りだ」ザラカは馬鹿にしたように言った。キャプテン・デスはハーネスにしがみついた。「その通りだ。やってくれザラカ」応えるように、それまで頭部の硬い皮の内側へ収納されていたザラカの二本の角が、後ろにせり出す。「主の安全を確保せよ、ザラカ」ピオが言った。ザラカは無視した。39

2015-03-19 22:42:03
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黒く長く美しい角は竜の象徴のひとつであり、最大の武器の一部でもある。見よ、上空には放電を繰り返す厚い雲がたちこめ、周囲は夜にも等しい暗さとなった。ピオはキャプテン・デスを守る障壁の密度をおそらく最も強いものとし、備えた。ザラカの目が金色の光を放ち、二重の牙の並ぶ口を開いた。40

2015-03-19 22:50:35
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1秒後、ザラカの双角に、厚い雲から落雷した。黒い角は爆発的な雷のエネルギーを余さず捉え、舌骨付近にある放出器官へ流し込んだ。ザラカは遠い地平に見える建造物を狙い、白い輝きを放出した。キャプテン・デスの視界は真っ白く焼け、音も奪われた。彼はその瞬間、気を失っていたかもしれない。41

2015-03-19 22:56:48
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音の失せた世界でキャプテン・デスはスコープを取り、ザラカの攻撃がもたらした結果を見た。双子王の要塞周辺を覆っていた透明の障壁が虹のような輝きを散らして衰滅し、あまつさえ城壁は円く融解して、侵入経路をきわめて強引に作り出していた。「ゆくぞ」ザラカは主の返答を待たず、急加速した。42

2015-03-19 23:03:51
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「ねえさん」少年は呻いた。何と恐るべきしもべたちであろう。だが彼らの力があれば、成し遂げられる。この降ってわいた力が無ければ、こんな望みは持たなかった。ではかつてのキャプテン・デスは何のためにこのような凄まじい者達を使役する人生を選んだのだろう。考えても仕方のない事だろうか。43

2015-03-19 23:16:37
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ザラカが風を切って飛翔し、双子王の城はあっという間に目と鼻の先だ。竜の背でキャプテン・デスはふと横へ首を巡らせ、幾つかの森を挟んだ遠い地を見やった。そこでは他のしもべ達が陽動戦を激しく繰り広げている最中の筈。双子王の戦力をその地に集め、その隙にザラカの突入を成功させる。44

2015-03-19 23:19:29
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ミメエ達は辺境星の軍隊を一手に引き受けて暫く戦い続ける事ができよう。彼らを消費する事で、キャプテン・デスの目的は達成する。(船内の冷凍睡眠者を何体か覚醒する必要が出ます。光芒同盟に敵対する事で、いきおい今後の罪人の供給が断たれる点にもご留意を)ピオはそう説明したものだ。45

2015-03-19 23:23:46
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数分前に垣間見たのは、無機物を集めて巨人と化したボゾが双子王所有の巨人兵器と組み合うさまであった。だが今その影は遠くから視認できない。戦局が動いたか。彼らの命が絶たれれば、ピオが伝えてくる筈。まだ彼らは戦い続けているのだ。「……?」キャプテン・デスは眉根を寄せた。「なにかが」46

2015-03-19 23:32:11
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「突入に備えてください」ピオが言った。キャプテン・デスはピオに尋ねた。「陽動部隊の方角。兆候があるか?」「あります」ピオが認めた。「ブリンクアウト……ブリンクアウト地点は地上ではなく、成層圏付近?さほど質量は無いようです」「調べてくれ」「突入に備えてください」「わかってる」47

2015-03-19 23:37:59
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「大気圏上に一隻、小型船が静止中。所属の割り出しは現在の状況下において私のスペックでは不可能ですが」ピオは発光部を明滅させる。「ブリンクアウト者、そのまま落下を開始。それから、小型船からもう一つなにか、」「よくない」キャプテン・デスはしばし逡巡したのち、言った。「ピオ。行け」48

2015-03-19 23:48:07
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「何と?」「ピオ。君ひとりで全速で飛んだとして、ここからあの場所まで、どれくらいで行ける?」「突入に、」「備えるよ」キャプテン・デスは遮った。「君はあいつらを助けに行けるか」「質問意図がわかりません」ピオは答えた。「城内での戦闘が想定されます。私の護衛が必要」「あいつらもだ」49

2015-03-19 23:51:02
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「発言意図がわかりません」「いやな予感がする」キャプテン・デスは言った。「君がサポートするんだ」「彼らは今回の作戦において、あの地で消費すべきものです」ピオが言った。「作戦の全てが崩れますよ。貴方は全力で目標物を目指すべきだ」「崩れはしない。当然、全力でやる」「では……」50

2015-03-19 23:54:18
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「あいつらを使い捨てるにしても、早すぎる!」キャプテン・デスは言った。「そういう判断だ、ピオ。僕が考える合理的判断だ。ピオ。僕と君、どちらが主でどちらが従だ」「当然、貴方が主です」「ならば口答えするな」言いながら、しかし、少年の脳裏に浮かんでいたのは、あの朝食の光景だった。 51

2015-03-20 00:00:01
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「貴方の服にもクローク発生装置はあります。おわかりですね」ピオが言った。「しかし私の発生させるバリアの100%の代替物にはなりえません。くれぐれも慎重に」「わかった」「向かいます」キュン、と音を発すると、ピオの姿はもう無かった。弾丸めいて、陽動部隊めがけ飛んだのだ。52

2015-03-20 00:03:43
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「飼い犬に感情移入」ザラカがキャプテン・デスを嘲った。「底抜けだな、キャプテン」「合理的判断だ」「さて。ベビーシッター無しの初の散歩か。流れ弾にせいぜい気を付ける事だ。そこまで責任は持たぬ」「無駄口を叩くな」竜は斜めに滑り込み、融解した城壁を超えて、驚くほど滑らかに停止した。53

2015-03-20 00:16:18
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

キャプテン・デスが背から降りると、既に竜の巨体は無く、ザラカは人に似た姿となってキャプテン・デスの横へ進み出た。「私の仕事は終わったようなものだ。<竜の息>はそう何度も吐けるものではない」「ゆくぞ。せいぜい僕を守るといい」「制裁の行使がお前に可能か、試したくなるかもしれん」54

2015-03-20 00:26:19
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

……同刻、ミメエとギャスは垂直落下してきた物体によって生じたクレーターのふちに着地し、中心部の粉塵に用心深く得物を向けた。ボゾは離れた所で白磁とスクラップの巨大な混合物となって伏せていたが、ついにコントロールを完全に掌握すると、大地に手を付き、地響きを立てながら起き上がった。55

2015-03-20 00:33:03
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「何だッてンだ、ア?」ギャスは片手でクロスボウを構え、片手で尻を掻く。落下してきたものが奇襲をかけてくれば、すぐさまミメエを盾にして安全な地点へ動けるよう、注意深く己の位置取りを調整している。「次から次へとよ」「上から来たよね。ずっと上から」ミメエは空を見た。 56

2015-03-20 00:37:03
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星のようなものがキラキラと光った。「あン?」ミメエは顔をしかめた。その2秒後、巨人ボゾは垂直に生じた光の柱によって貫かれていた。起き上がったばかりの巨体が分解しながら倒れ込み、クレーター斜面を瓦礫が転がった。「何だ!オイ!何……」ギャスは泡を食った。「今のは、なン……」57

2015-03-20 00:41:12
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

叫びかけたギャスの顔がゆがんだ。ミメエの飛び蹴りが側頭部に突き刺さったのだ。ギャスは身体をくの字に曲げて吹き飛び、地面をバウンドした。ミメエは蹴りの反動で反対側へ飛び戻り、回転して着地した。その瞬間、ギャスが先ほどまで居た地点が光の柱に呑み込まれた。58

2015-03-20 00:43:57
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「流石は<青ざめた馬>といったところか!」クレーター中心部の粉塵の中で笑い声が聞こえた。ミメエは振り向きながら防御姿勢を取った。「成程、守りも速い!」ミメエの剣に強烈な打ち込み。ミメエは呻いた。刃を挟んで、鏡めいてのっぺりとした顔無き顔があった。「流石<青ざめた馬>!」59

2015-03-20 00:48:29