ほっぽちゃんはじめてのおつかい 前編

最近はコンビニかスーパーに行けばなんでも揃うから、この手の企画が成り立たなくなったよね……。
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劉度 @arther456

◇◇◇◇◇◇◇ ←九十一式徹甲弾

2015-03-21 21:00:37
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。投下中はTLを余り見ないので、感想・実況などを #ryudo_ss に書いて頂けると、後でチェックして小躍りします。では、宜しければ暫くの間お付き合い下さいませ)

2015-03-21 21:01:13
劉度 @arther456

「ほっぽっぽー♪ほっぽっぽー♪ぽぽっぽほっぽー、ほっぽっぽー♪」頭のてっぺんから爪先まで真っ白な幼女が、舌足らずな歌を歌いながら歩いていた。北方棲姫。人類と敵対する高知能生命体・深海棲艦の中でも戦略級の力を持つ者に与えられる、『姫』の名を冠した個体である。 1

2015-03-21 21:02:25
劉度 @arther456

ここは横須賀鎮守府第33地区。日本を深海棲艦その他の脅威から守るための施設であるが、半分は自動車工場になり、北方棲姫のような深海棲艦が3体も暮らし、SCPや妖怪がその辺りで暇を潰す奇妙な区域であった。得てして、カオスというものは同じカオスを引き寄せるものである。 2

2015-03-21 21:06:38
劉度 @arther456

「ほぽ?」ふと、お散歩中のほっぽちゃんが立ち止まった。向こうの地面に何かが落ちている。それは、古い飛行機のプラモデルであった。途端にほっぽの顔がキラキラと輝き始める。彼女は、自動車や飛行機が大好きな、工業系幼女なのだ。プラモデルに駆け寄って、しげしげと見つめる。 3

2015-03-21 21:09:53
劉度 @arther456

「ぽ!」更に別のところに、今度は戦車のプラモデルがあった。ほっぽは飛行機のプラモを片手に、今度はそれを拾い上げる。飛行機、戦車とくれば次は船だ。やはり少し離れたところに、潜水艦のプラモを発見。「ほぽーっ……ほぽぁ!?」駆け寄ろうとしたら、地面が崩れた。落とし穴だ! 4

2015-03-21 21:13:06
劉度 @arther456

「確保ーッ!」更に穴の上から網が投げ入れられ、ほっぽは水揚げされた魚めいて捕らえられた。落とし穴の周りの物陰から、軍服姿の人間たちが続々と姿を現す。「目標C確保!」「よし、次は執務室に向かうぞ!」「マテッコラー!」北方棲姫を持ち去ろうとした兵士たちを、怒声が取り囲む! 5

2015-03-21 21:16:24
劉度 @arther456

「ザッケンナコラー!」「スッゾコラー!」遠方から巡回ヤクザが。「Freeeze!!」「Hold up!」反対側から海兵隊が。「憲兵隊だ!」「そこを動くな!」更に周囲の建物から憲兵隊が湧いてきた。「見つかったか!」「目標Cは手放すな!」兵士たちも銃を構え、壁を背にして陣を組む。 6

2015-03-21 21:19:37
劉度 @arther456

「不法侵入、未成年略取、軍事機密漏洩未遂!貴様ら一体何者だ!」憲兵が銃を構えながら誰何する。すると所属不明兵士の一人が前に進み出た。「元・ショートランド泊地所属、ショートランド警備隊だ!」「元?」気になる単語に、憲兵は顔をしかめる。「なら今は何だというのだ!」 7

2015-03-21 21:22:46
劉度 @arther456

「教えてやろう」隊員の一人がマスクを脱ぐ。現れたのは、日焼けしたいかつい男の顔だった。「あなたは……!」彼を、憲兵は知っていた。連合艦隊長官、海軍大臣に並ぶ海軍三長官の一人。「海軍軍令部総長直属、軍令部特別警備隊。そして私が海軍軍令部総長だ」 8

2015-03-21 21:25:59
劉度 @arther456

【ほっぽちゃんはじめてのおつかい】前編

2015-03-21 21:26:21
劉度 @arther456

「……で、軍令部総長殿が直々に参られるとは、一体何用なんですか?」幼女誘拐未遂事件から一時間後、軍令部総長は33地区の執務室に通されていた。相対するのはこの地区の提督である。「横須賀鎮守府に潜む敵性勢力の確保、及び無力化だ」「敵性勢力とは?」「深海棲艦だ」 9

2015-03-21 21:29:49
劉度 @arther456

「えーと、姫さん、じゃなかった、装甲空母姫と港湾棲姫と北方棲姫のことですか?」「そうだ」提督は首を傾げた。彼女たちは、提督が勝手に飼っているわけではない。ここにいるのはちゃんとした理由がある。まず装甲空母姫は亡命者だ。深海棲艦側で出番が無くなったので、亡命してきた。 10

2015-03-21 21:32:56
劉度 @arther456

そして港湾棲姫と北方棲姫。この2人は現代の技術では倒せない存在であるため、提督がなだめすかして飼い慣らしている。幸い二匹とも鳳翔さんによく懐いており、危険は小さい。「前の軍令部総長の許可を頂いた上で預かっているのですが……?」「それは承知の上だ」「なら、なぜ?」 11

2015-03-21 21:36:11
劉度 @arther456

「貴官が提出した深海棲艦所見報告書が、著しく信頼性に欠けたものであったからだ」またしても提督は首を傾げた。「あれが……?」提督は毎月、港湾棲姫たちについてのレポートを送っている。一度も欠かしたことは無いのだが、信頼性にかけるとはどういう意味だろうか。 12

2015-03-21 21:39:22
劉度 @arther456

「先月提出した分、そこのPCで出してみなさい」総長に言われ、提督はタブレットを操作する。レポートのデータは全て控えている。その中から、以前提出したレポートのファイルを呼び出す。そこにはこう書かれていた。 13

2015-03-21 21:42:37
劉度 @arther456

『北方棲姫にお正月の文化を教えた所、港湾棲姫の肩に乗って頭にみかんを乗せ、かがみもちなる一発ネタをやってくれた。深海棲艦にもユーモアを解する精神はあるようだ。節分のことも教えておいたので、来月の一発ネタがどうなるか楽しみである』 14

2015-03-21 21:45:49
劉度 @arther456

「何か問題でも?」「問題しかない!」バシン、と総長が机を叩く。「貴様に深海棲艦を預けているのは、育児日記を書かせるためではない!奴らの弱点を研究するためだぞ!分かっているのか!」「そう思うなら予算を下さい。研究するのにどれだけ金がかかると思ってるんですか?」 15

2015-03-21 21:49:07
劉度 @arther456

すると総長は考える素振りを見せた。「……どれだけかかるんだ?」「最初の三ヶ月で、これぐらい」タブレットに支出総額が表示される。総長の目が見開かれた。「一桁間違っていないか?」「あってますよ。次の三ヶ月でもう一桁増えますけど」「そんなに?」「そんなに」 16

2015-03-21 21:52:18
劉度 @arther456

「大体話が通じて戦わなくて済むなら、それでいいじゃないですか。今から港湾ちゃんとほっぽちゃんと戦うとなったら、ここは勿論、隣3つの鎮守府まで焼け野原になりますよ。下手したら松代にも爆撃機が飛んで行くかもしれません」二匹は強大な航空運用能力を持っている。 17

2015-03-21 21:55:31
劉度 @arther456

「それでも、そんな爆弾を懐に抱えていることが危険なのだ。暴発したらどうする?」「そこは上手くやっているから、大丈夫ですよ」提督がそう答えると、総長は懐からビニールパックを取り出した。中身はサツマイモを細長く切って砂糖を絡めた菓子、芋けんぴである。 18

2015-03-21 21:58:42
劉度 @arther456

「芋!」執務室の隅に積んであったペンギンの山が崩れ、中から港湾棲姫が姿を現した。「いもー。髪についてる芋けんぴー」いつにない元気さでスキップしながら総長に迫る。「ほら……ほら、上手くやって止めてみろ!」すると提督は、総長の手から芋けんぴの袋をひったくった。 19

2015-03-21 22:01:52
劉度 @arther456

「ほい。一気に食べるとお腹壊すから、少しずつね?」「むえー」提督の差し出した芋けんぴを、港湾棲姫が咥えた。提督の膝に頬ずりしながら、もしゃもしゃと咀嚼する。「止めましたよ」「止まってない!言われるままに差し出しただけだろうが!」「これ以上どう上手く止めろと!?」 20

2015-03-21 22:05:02
劉度 @arther456

「芋を渡さずに止めろと言ったんだ!」「無理ですよそんなの!殴られて袋ごと奪われるのがオチです!」「もぎゅもぎゅ」「それでは止めていることにならん!」「いいじゃないですか別に。こうなったら姫ちゃん、何を言っても聞きませんもの」「ぎゃおーん。いもまじん」 21

2015-03-21 22:08:12
劉度 @arther456

ここで参謀総長の顔に困惑の色が浮かんだ。「……なあ、ちょっといいか」「何か?」「くぇすちょん」「貴様、本気で深海棲艦たちと話が通じていると思っているのか?」参謀総長は、提督が港湾棲姫の妙な鳴き声に、適当な相槌を打っているようにしか見えなかった。 22

2015-03-21 22:11:27