ほっぽちゃんはじめてのおつかい 前編

最近はコンビニかスーパーに行けばなんでも揃うから、この手の企画が成り立たなくなったよね……。
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劉度 @arther456

「通じてますよ。姫さんもほっぽちゃんも、ちゃんとお話できます。毎週日本語も教えてるし。ねー?」港湾棲姫の顔を覗きこんだ提督の額に、港湾棲姫の角が刺さる。「おうふ」「……言い方を変えよう。深海棲艦は全ての人類と言語によるコミュニケーションがとれるのか?」 23

2015-03-21 22:14:50
劉度 @arther456

参謀総長が一番気になっていたのは、それだった。深海棲艦が喋ることは知られている。だがそれが独り言なのか、深海棲艦同士にしか通じないのか、それとも人類とも会話ができるのかはまだ研究途中だった。もしも敵方に言語能力があれば、今後の戦略を見なおさなくてはならない。 24

2015-03-21 22:18:02
劉度 @arther456

「できます」港湾棲姫を抱きかかえて、提督はきっぱりと言い切った。「証拠は?」「……なら、今からお見せしましょう。青葉ー!筑摩ー!ほっぽちゃん連れてきてー!」何故か艦娘を呼ぶ提督を見て、参謀長官は嫌な予感をひしひしと感じていた。 25

2015-03-21 22:21:13
劉度 @arther456

はじめてのおつかい主題歌 ドレミファだいじょーぶ/B.Bクイーンズ (3:46) nico.ms/sm7695190 #sm7695190

2015-03-21 22:24:37
劉度 @arther456

「お財布は持ったか?」「もった!」「メモは持った?」「もった!」「買い物リストは?」「外のポケット!」「知らない人について行っちゃ駄目やで?」「ぽ!」「だからって知らない人に艤装を撃ったりしちゃ駄目やで!」「ぽぽっ!」「よっしゃ、行って来ーい」「いってきまーす!」 27

2015-03-21 22:24:48
劉度 @arther456

龍驤さんに見送られて、勢い良く鎮守府を飛び出していったほっぽちゃん。今日ははじめてのおつかい、鳳翔さんの肉じゃがの材料を買ってきてと頼まれて、大ハリキリです。晩ご飯の時間までに、ちゃんとおつかいを済ませて、無事に帰ってこれるでしょうか? 28

2015-03-21 22:28:59
劉度 @arther456

とてとて歩いて行くほっぽちゃんの後ろを、カメラを持った艦娘・青葉と、鎮守府の海兵隊、ヤクザ、それにショートランド特殊部隊が撮影機材を持ってついていきます。みんなほっぽちゃんが心配です。変な人が近づいてきたら、彼らに囲んで棒で叩かれるでしょう。 29

2015-03-21 22:32:07
劉度 @arther456

「……何だこれは」モニタを見ながら、軍令部総長は困惑していた。応接室にはモニタが設置され、提督と総長はコーヒーを飲みながら北方棲姫のおつかいの様子を観察している。「ですからコミュニケーション実験ですよ」「ただ深海棲艦に買い物させてるだけじゃないか!?」 30

2015-03-21 22:35:29
劉度 @arther456

「たかが買い物、されど買い物、ですよ。おつかいは文化的で高度な行動です」売買や通貨という概念の理解、店員とのコミュニケーション、多くの品物から自分の必要な物を選ぶ行動、店まで迷わず向かう空間把握能力。おつかいの中には文化的生活を営むため必要な多くの技術が含まれている。 31

2015-03-21 22:38:44
劉度 @arther456

「大体、深海棲艦が店に来たら、物を売るどころじゃ……あれ?」そうこうしているうちに、ほっぽちゃんはまずお肉屋さんに着きました。「おや、お嬢ちゃん、いらっしゃい」お肉屋さんのおじさんは、にっこり微笑んでほっぽちゃんに挨拶しました。「こんにちは!」ほっぽちゃんも挨拶です。 32

2015-03-21 22:41:57
劉度 @arther456

「なんで驚かない……?」「いやー、街の人達、変わった格好の女の子はみんな艦娘だって思ってるみたいなんですよ」「だからって、髪が白くて眼が赤い艦娘など……いるな」菊月の事を思い浮かべながら、軍令部総長は頭を抱える。まだまだ艦娘と深海棲艦は、一般市民には未知の存在である。 33

2015-03-21 22:45:10
劉度 @arther456

「お肉、200グラム下さい!」「はいよ、何の肉だい?」「ほぽ……」ほっぽちゃんはカバンからおつかいメモを取り出します。「ぎゅうにく!」「何を作るんだい?」「肉じゃが!」「はいはい」お肉屋さんは、はかりで肉の重さを計ると、ちょっと量をおまけしてビニール袋に入れてくれました。 34

2015-03-21 22:48:23
劉度 @arther456

ほっぽちゃんはお代を出して、お肉屋さんから牛肉を受け取ります。「ありがと!」「毎度ありー」ちゃんとお礼を言って、ほっぽちゃんはお肉屋さんを出て行きました。最初のおつかいは見事、大成功です。「次はにんじん!」ほっぽちゃんは八百屋さんを探して歩き始めました。 35

2015-03-21 22:51:50
劉度 @arther456

「ほら、ちゃんとおつかいできてるでしょう?」「ヌウーッ……」軍令部総長も、これには文句をつけられない。北方棲姫の行動は、一切危険性が見当たらなかった。「だ、だがまだお使いは終わっていないぞ。最後まで終わってから、判断させてもらおう」 36

2015-03-21 22:55:08
劉度 @arther456

そのころほっぽちゃんは、まだ八百屋さんを探していました。「……ぽ?」龍驤ちゃんから地図はもらっていたけれど、地図が上手く読めないみたい。「ぽぉぉ……」あらら、泣いちゃいそうですよ?「ねえねえ安藤さん、知ってます?あっちにできた八百屋さんの話」 37

2015-03-21 22:58:28
劉度 @arther456

「ぽ?」ほっぽちゃんが顔を上げると、買い物帰りのおばさんたちが、立ち話をしていました。「八百屋さん?スーパーがあるのに?」「それがね、スーパーよりも新鮮で美味しい野菜を売ってるのよ」「あら、本当?」「本当よー。戦争でスーパーの野菜も少ないから助かるわー」 38

2015-03-21 23:02:04
劉度 @arther456

「昔に比べたら食べ物も増えてきたけど、まだまだ足りないわよねえ……」「そうよねえ。ウチの子、10歳になるけど、一度はぐらいはご飯をお腹いっぱい食べさせてあげたいわ」泣きそうなほっぽちゃんを無視して、二人のおばさんは話し続けます。冷たい時代になったものです。 39

2015-03-21 23:05:20
劉度 @arther456

「それでその八百屋さん、どこにあるの?」「そっちの角を右に曲がって、ポストを左に曲がったところよ」「じゃあ覚えとこ。ところで、浮田さんのお子さんなんだけど、聞きました?実は……」おばさんの話を聞いたほっぽちゃんは走り出しました。どうやら、そっちの八百屋さんに行くみたいです。 40

2015-03-21 23:08:36
劉度 @arther456

「……うん?」会話を聞いていた提督が、疑問の声を上げた。「どうした?」「いや……そんなところに八百屋さんなんてあったっけって思いまして」「最近出来たんだろう?」「いや、食料品店は全部ウチが許可出してるんですけど、八百屋の許可なんて出したっけなあ……?」 41

2015-03-21 23:11:55
劉度 @arther456

提督が首を傾げている間に、ほっぽちゃんはポストの角を曲がって、野菜がいっぱい並んだお店に着きました。店員らしいお姉さんに声をかけます。「八百屋さん?」「ヲッ」八百屋さん、というよりヤヲヤさんでした。「おいカメラ止めろ」 42

2015-03-21 23:15:09
劉度 @arther456

【ほっぽちゃんはじめてのおつかい】前編終わり 後編へ続く

2015-03-21 23:17:24