#リプきた単語で三題噺 「ドラゴン」「マッチョ」「徒競走」

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ネッシー @0ZaALZilA

久しぶりの投下。「ドラゴン」「マッチョ」「徒競走」 #リプきた単語で三題噺

2015-03-22 21:29:36
ネッシー @0ZaALZilA

「くっ…殺せ!」 「…」 「辱めを受けるくらいなら死んだ方がマシだ!」 「あの…」 「どうした!ひと思いにやれ!」 「…ドラゴンとそういうことする趣味はないです」

2015-03-22 21:30:01
ネッシー @0ZaALZilA

「えっ」 「妻もいるんで。っていうかそもそも雌だったんだ」 「区別付かないのは仕方ない」 「でもひと思いにやれって言うんならバッサリと」 「ま、待て!」 「まだ何かあるんすか?」 「け、結構固いぞドラゴンは!その細身では首を落とすのは難儀するぞ!」 「そのために魔法取得したんで」

2015-03-22 21:30:58
ネッシー @0ZaALZilA

「うーむ確かに」 「苦労したんですよ、さっき使った煉獄炎火灼鎌(メギドフレイム)なんて扱えるの千人に一人くらいらしいですし」 「それ、結構いそうだな」 「まあ、数えたわけじゃないんで」 「誰が言い出したのだろうな」 「さあ?ところで」 「何だ?」

2015-03-22 21:31:32
ネッシー @0ZaALZilA

「…さっきから全然死ぬ気ないですよね」 「そ、そんなことはないぞ!私を倒さないことには人間の平和は」 「これ、誰かに頼まれたとかじゃないんで。個人の意思なんで」 「マジかー」 「だいたい、ドラゴンって言うほど人襲ってませんよね?」 「…確かにな。今やドラゴンは絶滅危惧種だ。

2015-03-22 21:32:06
ネッシー @0ZaALZilA

1000年単位の寿命故、子孫を残す必要性が薄い。地上の支配者だったのも今は昔――にもかかわらず慢心し、人間に追い詰められる始末」 「…」 「だからこそ思うのだ。例え血が薄れようと、種を存続させねばならないと」 「じゃあここで殺しとこ」 「え?」

2015-03-22 21:32:34
ネッシー @0ZaALZilA

「だって人間の地位脅かす気満々じゃないですか」 「い、いやぁ~もののたとえっすよぉ~っ、現にこうしてメタクソにやられてるんですからぁ。再び地上の支配者になろうだなんて畏れ多くて…思いつきもしなかったなぁ~」 「急に腰低くなった」

2015-03-22 21:33:05
ネッシー @0ZaALZilA

「人間様には逆立ちしたって勝てませんよぉ~テヘペロッ」 「腹立ったからやっぱ切るわ」 「わ~ん待ってってば~」 ザシュッ ☆

2015-03-22 21:33:49
ネッシー @0ZaALZilA

立派な建物の中に人だかり。 視線は、たった一つの円錐に集中する。 「…それでは本日の目玉商品!一角ドラゴンの角!御覧ください、この傷一つない美しさ!」 「おぉ…」 「素晴らしい」 ドラゴンの角は高価だ。インテリアとして優秀で、王家や裕福な商人が、喉から手が出るほど欲しがる。

2015-03-22 21:34:16
ネッシー @0ZaALZilA

「50万Gでどうかね」 「いや、70万Gは固いでしょう」 商人達は大盛況だが、中間搾取が激しく私の取り分は半分にも満たない。調達の苦労に見合うかと言われると首を傾げる。無論、家族を支えるには十二分だ。それでも。 「85万出そう!」

2015-03-22 21:35:11
ネッシー @0ZaALZilA

「90万だ!こんな貴重品、めったに出回るもんじゃあない!」 血眼になる富豪たち。 「では、90万Gで決定です…あっ」 売り手の不注意で、床に商品を落としてしまう。瞬時に、値を吊りあげていた二人が角を掴んで引っ張り合う。 「寄るな!これは私の角だ!私のものだ!」

2015-03-22 21:35:37
ネッシー @0ZaALZilA

「何を!私にだって90万Gを用意する準備はあった!」 「うるさい!先に買うと言ったのは私…だっ!」 強引に引っ張った角が、すっぽ抜けて転がっていく。2、3度跳ねた角は運悪く、カランカランと、階段を下っていった。すると富豪たちが、群衆かき分け、角を確保せんとばかりに競走し始める。

2015-03-22 21:36:15
ネッシー @0ZaALZilA

その姿に気品はない。子供たちが足の速さを競う時でも、肘で互いの妨害はしないはずだ。 醜い…こんなことのために、私は勉学に励んだのか? ☆ 「…ということがあったんだ」 「心中察するけど、それ角を切り落としたドラゴン相手に言うことなの?」 「すまんな」

2015-03-22 21:36:50
ネッシー @0ZaALZilA

「まあいい。しかし哀れだな。欲に溺れる愚かな種族はいずれ滅びを迎えるだろう」 「詠唱するぞ」 「すんませんでした」 「だが真理かもしれない」 「人間に絶望したのなら、いち地域を焼き払うくらいならやってやってもいいぞ」 「そんなことできるようには見えない」

2015-03-22 21:37:18
ネッシー @0ZaALZilA

「ごめんちょっと盛った。炎は苦手なんで実際は家一件焼くのが限界」 「盛り過ぎだろうが」 「いやほんとスンマセン調子乗りました反省してますんでその魔術書しまって」 ザシュッ ☆

2015-03-22 21:37:36
ネッシー @0ZaALZilA

少女の瞼が、ゆっくりと開かれた。 「ママ…」 「レイラ!」 ドラゴンの牙は万能薬の材料になる。 ひとかけら程度を粉末にすれば、それで大概の病気は改善される。 視力が失われる毒でさえ、この通り。 「見ての通り、我が家は貧乏ですが、この御恩は一生掛けてでも」

2015-03-22 21:38:34
ネッシー @0ZaALZilA

「いや、お代は結構。そのお金を娘さんのために使ってあげて下さい」 ひとかけら分なら、売リつける際にも誤魔化しがきく。 いつも通り、商人にケチ付けられて値を下げられるのだろうが…どうにも、私に商売は向かないらしい。 しかし、利害ばかり気にする生活は肩が凝る。

2015-03-22 21:39:09
ネッシー @0ZaALZilA

「お兄さん、ありがとう」 少女が、喜色満面の笑みを溢れさせる。細く開いた瞳は、淀んだ私の心を晴らすように輝いていた。 ああ、このためだ。きっと、私の努力はこのためにあったんだ。 ☆ 「やはり人間は捨てたもんじゃないな」 「だから、それ牙をもいだドラゴン相手に言うことなの?」

2015-03-22 21:40:11
ネッシー @0ZaALZilA

「感謝しているだけだ」 「何が感謝だ、こっちは牙取られて碌に飯食えないんだぞ!」 「牙は他にもあるだろう」 「肉噛み切る上で不便なんだよ!この辺の魔物、繊維固いから!人間基準で考えないで!」 「そうか」 「そうか…じゃねえよ!もう頭来た。今日という今日は叩き潰す!」 「ほぉ」

2015-03-22 21:41:04
ネッシー @0ZaALZilA

「その脆弱な肌を引き裂き、骨を砕き、抉り、擂り潰してくれよう!種族の誇りにかけて、人間なんぞにドラゴンが屈したりしない事を教えてやる!今から放つ『禁断の嵐息(フォビドゥンブレス)』を破ったものは、人間界はおろか魔界においても存在しない!さあ受けよ!」

2015-03-22 21:41:44
ネッシー @0ZaALZilA

ザシュッ ☆ 「うう…角を取られて、牙ももがれて、今度は爪まで…。やっぱり人間の男には勝てなかったよ…」 ☆

2015-03-22 21:42:00
ネッシー @0ZaALZilA

マッチョとは、メキシコのスペイン語 macho(マチョ)「雄の~」という形容詞が変化したもの。machismo(マチスモ、もしくはマチズモ)は「男性優位主義」を指し、男性としての優位性、男性としての魅力、特徴を誇示する、という意味合いがある。(参考:Wikipedia)

2015-03-22 21:42:23