ニンジャ・サルベイション #3

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(これまでのあらすじ: 若いサラリマン、ユダカは、カイシャに三行半を叩きつけ、その足で恋人をフッて、夜の街に繰り出した。そこで彼は偶然ジュニアハイスクール時代の悪友、カシイと出会う。カシイはユダカにキャリバーと名乗る。彼はニンジャとなり、恐るべき身体能力を身につけていた)

2015-03-25 15:06:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(キャリバーとユウジョウを確かめあい、更に、ミカリという名の女と知り合ったユダカ。久しぶりの開放感と心地よい酩酊疲労は、辞めてきたカイシャがその夜のうちに爆発したという驚愕的ニュースによって揺さぶられる。カイシャに何があった?そして襲い来る謎のクローンヤクザ戦士達。逃避行だ……)

2015-03-25 15:09:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウオッ!」ユダカはパイプ椅子から立ち上がりかけた。「来た?」ミカリがユダカを見た。「来た!」「マジかよ」キャリバーは読んでいたスカムコミックを投げ捨てた。「魚、マジで居たのかよ?」「引いてるんだよ!」「スゴイ!」釣り竿と格闘するユダカにミカリが駆け寄り、二人がかりになった。1

2015-03-25 15:15:17
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「でかいぞ!」「ンーッ!」ユダカとミカリは顔を紅潮させ、釣り竿を奪われぬよう必死になった。キャリバーは池に沿ってのろのろと近づく。「大袈裟すぎンだよ、お前ら。魚類だぜ」池の中程が激しく泡立ち、時折、水面から尾が飛び出す。「何やってんだ!」ユダカは叫んだ。「助けろよ!」2

2015-03-25 15:20:17
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彼らが居るのは多少人工的に整えられた池の釣り堀施設で、錆びた看板には「練った餌」「魚が食べ放題!」と太字ミンチョ体で書かれ、夕暮れの色を受けて、侘びしいアトモスフィアを一層寒々しいものにしていた。「しかたねえなァー!」キャリバーは釣り竿を横から無造作にグイと掴んだ。 3

2015-03-25 15:22:48
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SPLAAAAASHHHH!キャリバーのニンジャ膂力は池の中のものを容易に外気の中へ引きずりあげた。それは実際大きい鯉であった!「アイエエエエ!?」ユダカとミカリは後ろへ倒れ込み、寂れ券売所で居眠りしていた老人は目を剥いて悲鳴を上げた。「アイエエエエ!」跳ね回る鯉!実際大きい!4

2015-03-25 15:27:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「針外せよ、ユダカ!」「デケェよ!」「スゴイ!」ユダカは跳ね回る巨大鯉を扱いかねる。「ちょっと……ダメ!それは!」老人が走ってきた。「池に帰せ!これ、池の主は釣られること想定しない娯楽なの!」「アアー?」キャリバーの目が冷たく光った。「詐欺か?老いぼれェ……」「アイエエエエ!」5

2015-03-25 15:32:14
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抜き身ナイフめいた殺気に突然射抜かれ、老人は失禁しながら転がり下がった。キャリバーは容赦せず詰め寄った。「魚が食べ放題ッつったぞテメェ」「アイエエエエ!」「ヤメロ!ヤメロ」ユダカは鯉をどうにか押さえつけ、キャリバーに叫んだ。「食いたくねえよ、こんなの」ミカリが器用に針を外した。6

2015-03-25 15:34:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キャリバーは舌打ちし、拳の骨を鳴らした。「ユダカがそう言うなら仕方ねえけどよォ……テメェ、感謝しろよ?」「アイエエエエ!」悲鳴を上げる老人に、キャリバーは唾を吐きかけた。巨大鯉は跳ねながら池に再び飛び込んだ。SPLAAAASHH!「中、戻るか」ユダカが言った。「寒くなってきた」7

2015-03-25 15:44:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ボウリングでもやるか?」「イイね」「電子のゲーム……」三人は池を離れ、瓦屋根の大きな建物に向かって歩いてゆく。彼らはネオサイタマ市街区を随分遠くに、家々もまばらな郊外の外周部まで車を進めていた。衛星都市に向かって伸びる「コクドウ」を使えば、理論上どこまででも行ける。8

2015-03-25 15:55:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

派手に振り切ってやった事もあり、あの後、スーツの連中の襲撃は無かった。恐怖と興奮がもたらすアッパーな刺激はネオサイタマ市街区からの距離と反比例して薄まり、気だるいアトモスフィアが侵食してきた。「どこまで行くよ」ユダカがキャリバーを見た。キャリバーは首を傾げた。「俺に聞くなよ」 9

2015-03-25 15:59:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「カネも……」ユダカは呟いた。市街区を離れて、預金素子がうまく使えればよいのだが。「そういう心配は要らねえ」キャリバーは言った。「どうにでもなる。俺ならな」「物騒はヤメロって」ユダカは眉をしかめる。「マジにネオサイタマに帰れなくなるぞ」「心配性だな。クールじゃねえ」 10

2015-03-25 16:04:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キャリバーは不満げだ。「出たとこ勝負だろ、人生なんてのはよ」「ある意味そうだが……」ユダカは答えに詰まった。キャリバーは鼻を鳴らした。「テメェでカイシャをファックオフして来た奴がよ。今更だぜ。ネオサイタマに戻る?まだサラリマン気分か?」「いつまでもこんな僻地に居られねえよ」11

2015-03-25 16:08:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユダカは論点をずらした。「ネオサイタマに帰らなきゃ、遊びもクラブもねえし、ここじゃボウリングに鯉だぜ?ずっとそれでいいのか、キャリバー!」「まあ、そうな」キャリバーは頷いた。「だが引き返すわけにもいかねえぞ」「グルッと……こう」手振りを交えてミカリが言った。「周って、戻る」12

2015-03-25 16:12:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……クール」キャリバーはミカリを指差した。「それだぜ、ミカリ=サン。流石だな」「小旅行だね」とミカリ。「戻った後も、何があるってわけでもないけど」「まあな。だが、イイよ。クールだ。楽しいぜ」キャリバーは呟いた。「縦に引き伸ばして……ユダカの敵が来たら、そのつど潰しちまう」13

2015-03-25 16:28:05
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「お前はイチイチ物騒なんだよな……」呟いてから、ユダカは思わず笑った。阿呆な事を言っているのは自分自身だ。物騒も何も、ユダカは死ぬところだったのだ。キャリバーが、それを助けた。「いいか?ユダカ」彼の心境を知ってか、キャリバーが睨んだ。「イクサは始まってるんだぜ、一応よォ」 14

2015-03-25 16:40:46
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「まあそうだな」ユダカはぼんやりと答えた。驚くほどの速さで空が暗くなってゆく。キャリバーは拳を握り、開く。「だがまあ、イクサがあった方が、俺はやりたい放題できるし、お前の役にも立つし、刺激もある。いい事づくめッてわけ……」「待って」ミカリが立ち止まる。前を指差す。「あれ」15

2015-03-25 16:49:34
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「……!」ユダカは息を呑み、キャリバーは眉をしかめた。ミカリが指差すのは駐車場の敷地だった。キャンプファイヤーめいて燃え上がるのは……ナムサン、三人が乗ってきた車である。「ヒー!」「ヒーハー!」雄叫びを上げ、車の周囲を周る……バイカーの群れ!ユダカは言葉を失う! 16

2015-03-25 16:53:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヒー!」「ヒーヒー!」「ルールルルルル!」巨大なバイクに二人ずつ跨がったバイカーの男女集団は、みな袖無しレザージャケットやスタジアムジャンパーに「青年会」や「友人同士」「律儀」などのメッセージを刺繍し、大漁旗を斜めに結びつけて、手に手に燃え盛るトーチを掲げていた。コワイ! 17

2015-03-25 16:58:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

車のボンネットには血塗れのバッファローの生首が飾られ、スプレーで魔法陣めいたものが描かれていた。何たる無惨な光景!彼らは武装カルト集団化したこの土地の若者達だ。「何だ……」ユダカとミカリは絶句し、凍りついたようにその有様を眺めるしかない。三人は余所者として監視されていたのだ!18

2015-03-25 17:02:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハハーッ!」ヨタモノの一人がガソリンを車体に振りかけると、巨大な火柱が天を焦がす!駐車場向かいのドライブインから出てくる警備員の類いは無い。恐れているからだ!「オイ!見ろよ!」「楽しく遊んで、お疲れの連中が戻ってきたぜ!」「ヒヒーッ!」三人をトーチで指し示し、嘲り笑う! 19

2015-03-25 17:22:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だ……」ユダカは唾を飲んだ。「何なんだよ」「怖えなァー!アー怖えェ!」キャリバーが心底愉しそうに言った。ユダカは彼の横顔に確定的な殺意と飢えのような感情を見て取った。「ユダカ。ミカリ=サンしっかり守れよ、わかってんな?」「あ……ああ」ミカリは無言でユダカの手を握り返した。20

2015-03-25 17:34:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヒーヒヒヒヒ!」「ルルルロロロルル!」ヨタモノ達はバイクを次々にターンさせ、三人めがけ走り込んできた。彼らは皆白塗りで、その上から家紋めいたペイントを施していた!集団狂気だ!キャリバーが黒豹じみて地を蹴った!「イヤーッ!」「グワーッ!?」「イヤーッ!」「アバババーッ!」21

2015-03-25 17:40:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それは稲妻めいた飛び蹴りだった。スピンしながら転倒するバイクの車体から、破砕した人体が投げ出され、アスファルトに叩きつけられた。ユダカがその暴力を視認した時には、キャリバーは次の獲物に襲いかかっていた。「イヤーッ!」「グワーッ!?」「イヤーッ!」「アバババーッ!」 22

2015-03-25 17:48:34
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